更新日: 2024.02.20 キャリア
「転職で給料が増えた」過去最高を更新。転職するならタイミングは今?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
前職と比較して、賃金が1割以上上がった人の割合が過去最高に
株式会社リクルートの調査によれば、2023年7月期から9月期において「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者数の割合」は、過去最高の35.3%となったようです。
賃金の増加が1割以上というと、年収400万円の方であれば、転職によって440万円以上に収入が殖えるということになります。そう考えるとデータ上は、転職によって収入を殖やすことが相当程度期待でき、転職に適している時期だといえます。
あくまでも7月期から9月期のデータではありますが、2010年以降は、2012年と2020年を除き、転職によって1割以上賃金が上昇した人の割合が上昇傾向にあります。その点を考えると、今転職を考えていて、賃金を1割といわず少しでも上げたいと思うのであれば、転職には適している時期だといえそうです。
転職によって後悔することもある
全体的に賃金は上昇傾向とはいえ、必ずしも自分も転職したら賃金が上がるとは限りません。あくまでも、35%程度の方のみにおいて、賃金が1割上がっているにすぎません。残りの65%程度については、賃金がほぼ横ばい、または下がっていることになります。そのため統計的に見ると、賃金が横ばいまたは下がる可能性の方が高いのです。それを踏まえて転職を検討する必要があります。
また、転職をして賃金が上がっても、就業環境が変わってしまうと、転職を後悔する可能性もあります。例えば、残業時間があります。毎月の収入が4万円上がって、月収40万円から44万円になったとしましょう。しかし同時に残業時間が20時間増えてしまったとき、人によっては給料が大きく殖えたと実感できず、残業が増えただけで割に合わない、と感じてしまうかもしれません。
場合によっては、人間関係が変わったために、収入が殖えても働きづらいと感じることもあるでしょう。
実質的な給料の額は低下していることにも留意
リクルート社の調査において「賃金が殖えた」という方の割合は上昇傾向にあるものの、それはあくまでもリクルート社が保有するデータ内での話です。人材紹介サービスを利用しないで行われた求人は、おそらく集計対象外となっています。その点を踏まえると、転職で給料が殖えているのはある程度規模の大きい会社が中心であり、人材紹介サービスを利用していない大多数の中小企業では、そうではない可能性が高いです。
そして厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果速報」によると、2022年4月から2023年11月時点まで、実質賃金は20ヶ月連続で減少しています。物価高の上昇が続いているとはいえ、実質賃金が減少していることを考えると、転職で多少給料が殖えても、思ったほど生活は楽にならない可能性があります。
なお参考までに、令和5年11月分の同統計速報データでは、現金給与総額は就業形態計で28万8741円(全ての産業を集計対象とする)であり、その実質賃金は前年比で3%減となっています。その点も踏まえると、世間でいわれるほど簡単には、転職で給与は上がらないとも考えられます。
まとめ
転職で賃金が1割以上殖えたという方が35%程度いるものの、必ずしも誰でも転職で給与が上がるとは限りません。
また、実質賃金が低下していることを踏まえると、人によっては賃金が殖えなかったり、就業環境が変わり後悔したりする可能性もあります。
もし、世間や周囲において「転職で賃金が上がった」という声があっても、安易にそれに流されず、冷静に転職について考えていくようにしてください。
出典
株式会社リクルート 2023年7-9月期 転職時の賃金変動状況
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果速報
執筆者:柘植輝
行政書士