資産形成の入口は、「生涯労働」によって確保する

配信日: 2024.03.17

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資産形成の入口は、「生涯労働」によって確保する
老後の生活や長生きリスクを気にする人は、「20歳以上の人なら多くの人が」という時代です。最近では、「年金」「将来の生活」を口にする学生も多いです。30代や40代ならばなおさらです。かつてのように年金と退職金での生活基盤があまり当てにできないのならば、どのような心構えが必要でしょうか。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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20代:収入の多寡は二の次、まず働く

20代の若年世代は、とにかく不安。
 
「自分はここでやっていけるだろうか」
「パワハラに遭わないだろうか」
「思っていたことと仕事内容や職場環境が違っていたら、なじめるだろうか」
など、不安材料を挙げ出したらきりがありません。
 
学生時代の教職員と学生の関係は、いってしまえば「学生=クライアント」です。
 
教職員は、学生がつつがなく学生生活を過ごし、さまざまな知識や教養を身につけ学位を取得して卒業するように、学業面、生活面、資金面からのサポートや助言をするのです。
 
それに対して、学生や保護者は学校に対して入学金や授業料を納付する。こう考えると、顧客の『ために』企画を提案し、実施しサービスを提供するという経験は、社会人になってからが本格的にスタートします。
 
もちろん、学生時代に飲食店などでのアルバイトを通じて、顧客が満足できるようなサービスを提供する経験をしている人にとっては、「知っている」と言う方もいるかもしれません。ですが、アルバイトとフルタイム職員・社員は責任の重さ、期間の長さが違います。
 
アルバイトの身分であれば、「嫌なら辞める」という選択肢を採ることに社会も勤務先も本人も抵抗はありませんが、フルタイム勤務になれば、躊躇(ちゅうちょ)する力が大きくなります。
 
「退職の自由」「職業選択の自由」は従業員に保証されていますので、やろうと思えばやれます。ただ安易に退職すると、職業選択の自由の幅は狭まる可能性が高くなります。
 
次の応募先の採用担当者は、応募者の書類(履歴書)で判断しますから、「忍耐力がないのでは」といった烙印(らくいん)を押されてしまう恐れがあり、書類選考通過が厳しくなるかもしれません。
 
そういったケースが何度か続いて、応募そのものをあきらめてしまえば、老後の生活基盤を作ることが難しくなります。
 
将来を見据えたキャリア形成が必須の時代ですから、スタート世代こそ「コツコツ積み上げていくことができるか」「目先の心地よさを優先しすぎて30代、40代になって、後悔先に断たず、にならないか」を考えて、踏みとどまる選択も時には求められます。
 

30代・40代:踏ん張り時

30代・40代と中堅層になれば、生活のリズムや自分の特性(こういった仕事ならば頑張れるけど、こんな仕事は合わない)がはっきりしてきます。社会人になったばかりの時であれば、150%の時間を使わなければ終わらなかった業務も80%程度でこなせるようになり、家計運営の要領もつかめてきます。
 
この世代では、家庭を持つ人とそうでない人で、家計運営の仕方も変わってきますが、老後の準備にあたり「時間を味方につけることができる絶好の年代」であることを意識しつつ、就労に励むことが大切です。
 

50代・60代:年齢で割り切らない

50代・60代となると、老後のやりくりまで残された時間はぐっと短くなります。それまでコツコツ積み上げてきた場合は最終的に、資産価値を落とさないようにギアを調整しつつ、公的年金との合算で繰上げ請求をすべきか、繰下げで頑張るべきかの判断を慎重に行いましょう。
 
日本年金機構のホームページでは、さまざまな条件を入力してどのくらいの受給額になるかの目安をシミュレーションできるようになっていますので、時間を見つけて確認してみましょう。
 
今の貯金額では厳しいと思った場合、そこで落胆してもはじまりません。
 
「どれくらい不足するか」の見当をつけた上で、再雇用制度がある場合には応募を検討する、ない場合には、これまでの経験が生かせる可能性がある再就職先を検討してはどうでしょうか。55歳以上向けの再就職を後押しするサイトを設置している自治体も増えてきましたので、検索してみるといいでしょう。
 
年代によってできること、できないことがあるだけでなく、経験や知識をその時々で生かしていくように模索して、1日のゴールデンタイムを「労務を提供して、社会と接しながら」過ごしていくことが必須の時代となるでしょう。
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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