更新日: 2020.08.09 キャリア

不安定な時代だからこそ! 空いた時間にスキルアップできる「教育訓練給付制度」って?

不安定な時代だからこそ! 空いた時間にスキルアップできる「教育訓練給付制度」って?
新型コロナウイルス感染症の影響によって、テレワークなどの新しい働き方に取り組む企業が増加するなど、自宅で過ごすことが多くなることもあるでしょう。
 
自宅で過ごす時間は、家族とのコミュニケーションや趣味の時間、休息の時間に充てることが考えられますが、ご自身のスキルアップに使いたいという方もいるのではないでしょうか。
 
個人がスキルアップするための取り組みを後押しする国の制度として、以前から「教育訓練給付制度」があります。雇用保険の一般被保険者等である方・あった方で一定の要件を満たす場合に利用することができる制度ですが、この制度を使って国家資格を取得するなど、ステップアップへとつなげることも可能です。
 
本稿では、この教育訓練給付制度について簡単にご紹介します。
星田直太

執筆者:星田直太(ほしだ なおた)

税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))

一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。

税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。

中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。

教育訓練給付制度とは

教育訓練給付制度は1998年に創設されました。この制度の目的は、「働く方の主体的な能力開発の取り組みまたはキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ること」とされています(厚生労働省ウェブサイトより)。
 
教育訓練給付制度には、基本的な「一般教育訓練給付」、2019年に新設された「特定一般教育訓練給付」、より専門的な内容の訓練を受けるための「専門実践教育訓練給付」といった3つの種類があります。
 
以下、それぞれについてどのような教育訓練(講座)が対象になるか、給付金額はいくらなのかといった点について見ていきましょう。
 

一般教育訓練給付

(1) 対象となる教育訓練の内容

多岐にわたる講座が対象となっています。以下に掲げるものは、ごく一部です。ただし、どの学校で学んでもよいというわけではなく、以下のような厚生労働大臣の指定を受けた講座であるという必要があります。
 
Microsoft Office Specialist/ウェブデザイナー検定/TOEIC/日商簿記検定試験/中国語検定試験/FP技能検定試験/調理師/大学院科目等履修生/医療事務検定試験 など
 
厚生労働省では、「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」というウェブサイトがあります(※1)。こちらに対象講座が網羅的に掲載されていますので、ご確認ください。また、厚生労働省では女性受給者の割合が高い指定講座の一覧も公表していますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

(2) 給付金額

支払った教育訓練経費の20%相当額が、ハローワークから支給されます。訓練期間にかかわらず、給付回数は1回です。
 
・支給額:支払った教育訓練経費の20%相当額
 (20%相当額が4000円以下の場合は支給対象外になります)
・支給額の上限:10万円
 

特定一般教育訓練給付

(1) 対象となる教育訓練の内容

「速やかな再就職と早期のキャリア形成に資する講座」が対象となります。以下のような講座が対象とされています。
 
税理士/社会保険労務士/宅地建物取引士/介護福祉士/行政書士/保育士/介護職員初任者研修/介護支援専門員/中型自動車第一種免許/大型自動車(第一種・第二種・特殊)免許 など
 
対象となる講座や学校等が指定されていますので、厚生労働省のウェブサイト等で確認をしてみてください(※2)。

(2) 給付金額

一般教育訓練給付よりも大きい給付率が特徴です。訓練期間にかかわらず、給付回数は1回です。
 
・支給額:支払った教育訓練経費の40%相当額
(40%相当額が4000円以下の場合は支給対象外になります)
・支給額の上限:20万円
 

専門実践教育訓練給付

(1) 対象となる教育訓練の内容

中長期的なキャリア形成を支援する目的で、2014年10月から拡充された制度です。
 
この制度を利用するためには、受講開始前に訓練対応キャリアコンサルタントによるコンサルティングを受け、就業目標や職業能力の開発・向上に関する記載がある「ジョブ・カード」を作成するといった特別な手続きが必要になります。
 
また、給付金の支給を受けるための申請手続きについても、受講開始日以降6ヶ月ごとに行う必要があるとされています。対象となる講座の例は、以下のとおりです。
 
介護福祉士/看護師/美容師・理容師/保育士/歯科衛生士/職業実践専門課程/専門職学位課程/第四次産業革命スキル習得講座(AI、データサイエンス等)
など
 
こちらも対象となる講座や学校等が指定されていますので、厚生労働省のウェブサイト等で確認をしてみてください(※3)。

(2) 給付金額

専門的・実践的な訓練が対象となるため、特定一般教育訓練給付よりもさらに高い給付率となります。しかも、原則2年(最大3年)まで給付を受けることができる点が特徴です。
 
・支給額:支払った教育訓練経費の50%相当額(1年当たり)
(50%相当額が4000円以下の場合は支給対象外になります)
・支給額の上限:40万円(1年当たり)
 
さらに、修了後に資格取得等をして、修了日の翌日から1年以内に正職員等に雇用された場合には、次に掲げるように給付率が引き上げられます。
 
・支給額:支払った教育訓練経費の70%相当額(1年当たり)
(70%相当額が4000円以下の場合は支給対象外になります)
・支給額の上限:56万円(1年当たり)

(3) 「教育訓練支援給付金」制度

専門実践教育訓練給付を受ける方が、昼間通学制の講座を受講している等、一定の要件を満たす場合であって、その方が失業状態にあるときは、「教育訓練支援給付金」として、雇用保険の基本手当日額の80%相当額(平成29年12月31日以前に受講開始した講座に係るものについては50%相当額)の支給を受けることができます。
 
ただし、45歳未満という年齢制限があることと、受講開始日は令和4年3月31日以前とされる暫定措置である点に注意が必要です。
 

支給要件照会をしてみましょう

受給資格があるかどうかという点や、受講しようとしている講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうかといった点について、ハローワークに前もって確認できます。これを「支給要件照会」といいます。
 
定められた照会票(教育訓練給付金支給要件照会票)に必要事項を記入し、本人確認書類を添えて郵送または持参で提出することによって行います。電話による照会は受け付けていませんので、ご注意ください。
 
新型コロナウイルス感染症の影響が今後どのように変化するか予見できず、不安定な経済情勢が続く可能性があります。そんな時代を乗り越えていくためにも、個人としてスキルを得ておくことは有益でしょう。スキルアップのための取り組みについて経済的負担を軽減してくれる教育訓練給付制度を、活用してみてはいかがでしょうか。
 
参考
(※1)厚生労働省「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」
(※2)厚生労働省「教育訓練給付の講座指定について」
(※3)厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました」
 
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))


 

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