更新日: 2020.09.09 その他暮らし

高校卒業後の進路、進学?就職?その中間の施設があるのをご存知ですか?

執筆者 : 新美昌也

高校卒業後の進路、進学?就職?その中間の施設があるのをご存知ですか?
高校卒業後の進路先として、多くは大学・短大・専門学校に進学すると思いますが、それだけではありません。進学と就職の中間的な施設として、公共職業能力開発施設があります。ものづくりに関連する学科が多いですが、施設によっては、観光ビジネス、情報ビジネス、ファッションビジネス、福祉サービスなども学べます。

専門学校と重なる学科が多いのですが、専門学校に比べ、学費も安く、就職率もほぼ100%です。公共職業能力開発施設も選択肢に入れましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

高校卒業後の進路

文部科学省「平成29年度学校基本調査(速報値)」によると、平成29年3月、高校卒業者は1,074,841人です。このうち、大学・短大進学率は54.8%、専門学校進学率は16.2%、就職者の割合は17.7%、その他が5.9%となっています。その他には、専修学校(一般課程)、公共職業能力開発施設等の入学者などが含まれます。
 
公共職業能力開発施設(以下「職業能力開発施設」)は、国や地方自治体が、実学を教育した教育を行い、優れた技術者を養成する教育機関です。職業能力を開発する学校という点で、専門学校と似ていますが、職業能力開発校と専門学校(専修学校の専門課程)は全く違う教育施設です。
 
職業能力開発施設のうち、高校卒業者を対象としたものに、職業能力開発校、職業能力開発短期大学校(短期大学ではありません)、職業能力開発大学校(大学ではありません)があります。職業能力開発校は、自治体により名称がバラバラで統一されていません。技術専門校、高等技術専門校、産業技術専門学院などです。職業能力開発短期大学校は、短大や専門学校に準ずる形で高度技能訓練を行っている教育施設です。マツダ工業技術短期大学校のように会社の運営する学校もあります。
 
職業能力開発大学校は、大学に準じる形で高度な職業技術の訓練を行っている教育施設です。職業訓練の指導員を養成する、職業能力開発総合大学校(東京都小平市)では大卒と同じく「学士」の取得が可能です。
 
職業能力開発施設で学べる主な学科として以下のものがあります。施設ごとに学べる学科は異なります。(  )内の金額は初年度納付金例です。
たとえば、以下のようなコースがあります。
 
<神奈川県立西部総合技術専門校>
ケアワーカーコース(29,900円)
木材加工コース(178,250円)
自動車整備コース(186,410円)
介護調理コース(26,900円)
セレクトプロダクトコース(31,800円)
 
<茨城県立産業技術短期大学校>
情報処理システム科(576,750円~645,000円)
情報処理科(576,750円~645,000円)
 
<関東職業能力開発大学校>
生産技術料(639,200円)
電気エネルギー制御科(639,200円)
建築科(639,200円)
建築施工システム技術科(応用課程)(592,800円)
電子情報技術科(639,200円)
生産電気システム技術科(応用課程)(582,800円)
生産機械システム技術科(応用課程)(582,800円)
生産電子情報システム技術科(応用課程)(582,800円)
 

職業能力開発施設のメリット・デメリット

私立の専門学校、短大、大学に比べ学費が安いことと、地元の中小企業とのかかわり合いが強く、就職率がほぼ100%である点が最大のメリットといえます。低所得者に対する授業料免除制度もあります。一方、職業能力開発施設を卒業しても学歴にはなりません(職業能力開発総合大学校を除く)。高卒のままです。専門学校のように、大学や大学院への編入は認められていません。
 
日本学生支援機構の奨学金も利用できません。高卒を対象としたコースの選考方法には、推薦選考と一般選考があります。公的な機関ですので、願書を出せば入校できるというわけにはいきません。授業内容は、実習が中心なので、勉強に馴染めなかった高校生にも楽しく学べます。
 
ただし、学ぶことが多いので生半可な気持ちでは続きません。本当にその職業に就きたいのかよく考えた上で入校しましょう。募集人数は多くないので競争率は高いです。
高校の進路担当の先生でも職業能力開発施設について詳しい先生は少ないと思います。公的機関なので積極的にPRされていません。
 
高校によっては進路指導室にパンフレットがある場合があります。興味のある高校生はまず、パンフレットが高校にないか確認しましょう。なければ、ホームページを調べ、オープンキャンパスに参加して情報収集しましょう。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。http://fp-trc.com/