残業手当と時間外手当の違いって?
配信日: 2021.03.31 更新日: 2024.10.10
「残業手当」と「時間外手当」とは、どのように違うのでしょうか。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
労働基準法の規定
まずは基礎知識として、「労働基準法」の理解は欠かせません。ここで押さえておきたいのは、以下の点です。
●労働時間(同法第32条)
●時間外労働(同法第36条)
●割増賃金(同法第37条)
労働基準法では、各項目について、以下のように規定されています。
●1週間につき40時間以内(休憩時間を除く)
●1日につき8時間以内(休憩時間を除く)
●労働時間の延長、休日労働が可能(労働組合などと書面による協定をし、行政官庁に届け出た場合に限る)
●時間外労働をさせた場合には、割増賃金を支払わなければならない
時間外手当
労働基準法第32条に規定された労働時間を「法定労働時間」といいます。同法では、法定労働時間を超えた労働を「時間外労働」としていますが、これを俗に「法定時間外労働」といいます。
労働基準法では、法定時間外労働に対し「割増賃金」を支払うよう規定しています。この割増賃金のことを「時間外手当」といいます。
残業手当
労働時間の規定があるのは、労働基準法だけではありません。会社は、「就業規則」によって労働時間を規定しています。就業規則によって規定された労働時間のことを「所定労働時間」といいます。
就業規則とは、労働条件(労働時間、賃金など)や待遇の基準(退職手当、表彰・制裁など)を明記した会社と従業員との間のルールのようなものですが、当然、法律の範囲を超えることはできません。
例えば、1日の労働時間を9時間とする(労働基準法の規定より1時間多い)というのは認められません。反対に、法律の範囲内であれば、規定することができます。例えば、1日の労働時間を7時間とする(労働基準法の規定より1時間少ない)、という規定をすることは可能です。
就業規則に「1日の労働時間を7時間とする」と記載がある場合、所定労働時間は7時間です。所定労働時間を超えての労働は“残業”となり、「残業手当」が支給されることになります。なお、この場合の“割増賃金”については、就業規則で規定されるものとなります。
まとめ
時間外手当と残業手当についてまとめると、以下のようになります。
●時間外手当とは、労働基準法に定めのある労働時間(法定労働時間)を超えた場合に支給される割増賃金(労働基準法に規定)のこと
●残業手当とは、就業規則に定めのある労働時間(所定労働時間)を超えた場合に支給される割増賃金(就業規則に規定)のこと
法定労働時間と所定労働時間が同じであれば、この2つに違いはありません(厳密には「残業手当」という考え方がなくなります)。一方、法定労働時間と所定労働時間が異なる場合、時間外手当と残業手当に違いが生じます。
例えば、所定労働時間が1日7時間として考えてみましょう(法定労働時間は1日8時間です)。9時間労働した場合、7時間を超える労働時間については残業となります。
しかし、8時間以下の労働時間については法定労働時間内ですので、残業を2種類に分けて考える必要が出てきます。「法定時間内残業」と「法定時間外残業」という考え方です。法定時間内残業とは、所定労働時間を超えて法定労働時間までの残業のことです。法定時間外残業とは、法定労働時間を超えた残業のことです。
時間外手当と残業手当の違いについて、法定時間内残業と法定時間外残業という言葉を使ってまとめると、以下のようになります。
●時間外手当とは、法定時間外残業に対して支払われる割増賃金(労働基準法に規定)のこと
●残業手当とは、法定時間内残業に対して支払われる割増賃金(就業規則に規定)のこと
今後の参考になれば幸いです。
出典
e-Gov法令検索 「労働基準法」
東京労働局 「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー