更新日: 2024.10.10 働き方

専業主婦が3年間パートで働いた場合、年金受給額への影響はどうなる?

専業主婦が3年間パートで働いた場合、年金受給額への影響はどうなる?
専業主婦の方が働き方を考えるに当たって1つの要素となるのが年金です。2022年から厚生年金の加入対象者の幅が広がり、パートで働く主婦にも加入対象となる方が増えていくと想定されます。
 
そこで、厚生年金に加入する夫に扶養されている専業主婦が3年間パートで働いたと仮定し、働き方による将来の年金受給額への影響についてシミュレーションしてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

扶養内でパートを続けた場合は?

専業主婦がパートで働く場合、まず頭をよぎるのが扶養内での勤務でしょう。扶養内で働ければ、世帯全体でかかる税金や保険料の負担を最小限にしながら収入を増やすことができます。
 
この場合、年金額には一切影響ありません。扶養内であれば厚生年金に加入することもなく、国民年金保険料も第3号被保険者のままでいられるため支払いが生じません。
 

扶養から外れた場合は?

では、フルタイムとはいかないまでも、1日6時間程度の勤務時間で3年間働いた場合はどうでしょう。年収は150万円程度と仮定します。
 
この場合は扶養から外れて、勤務先で厚生年金に加入することになります。毎月発生する保険料はおおよそ1万1600円ほどになり、3年間で支払う厚生年金保険料の総額はおおよそ41万7000円にも上ります。それに対して将来受け取れる厚生年金額は、月額で1800円ほど増えることになります(厚生労働省の算出するおおよその金額)。
 
3年間で支払った保険料の元を取るには、約19年(232ヶ月)かかります。年金の受け取りが65歳からということを考えると、84歳くらいまでは生きなければ元を取れない計算になります。
 

フルタイムで働いた場合は?

パートであってもフルタイムで働かれる方はいらっしゃいます。フルタイムで働き、年収200万円程度と仮定しましょう。毎月の厚生年金の保険料は1万5600円ほどで、将来受け取れる年金額は毎月2400円ほど増えることになります(厚生労働省の算出するおおよその金額)。
 
3年間で支払うことになる年金保険料の総額は約56万1000円で、元を取るためにはこちらも約19年(233ヶ月ほど)かかる計算になり、84歳以上は生きなければ元を取れません。
 

パートが厚生年金に加入するのは得? 損?

手元に残るお金や年金について、元を取れるかという観点から考えるのであれば、専業主婦がパートを始めても厚生年金に加入するべきではないと考えることもできるでしょう。それは次のような理由からです。
 

(1)厚生年金に加入している夫の扶養内であれば、一定の要件の下、国民年金の保険料を支払わずとも満額(年間で約78万円)受け取れる
(2)厚生年金に加入すると元を取るのに現状19年程度かかる
(3)扶養から外れると夫の税金が大幅に増えることもある

 
さらに、70歳までの継続雇用を企業の努力義務とするよう改正された高年齢者雇用安定法の存在から、将来的には年金を受け取れるのが現状の65歳から70歳に後ろ倒しされる可能性もあり、支払った保険料の元を取れる年齢が遅くなることも想定されます。
 
厚生年金は終身年金で一生受け取り続けられるとはいえ、パートの収入に応じた保険料を納めても将来のリターンはすずめの涙ほどです。その上、元を取るのに19年程度かかるとあれば、よほどお金に困っていない限りは専業主婦の税制優遇をフルに利用し、厚生年金の加入対象にならない範囲でパートとして働くのが現在を豊かにするためには有効ではないでしょうか。
 

専業主婦がパートで働く際は年金について考えて働くべき

専業主婦がパートで働くと、働き方によっては厚生年金に加入して将来受け取れる年金を増やすことができます。
 
しかし、会社員の夫に扶養されている方が下手にパートで働くと、専業主婦のときに受けられていた年金や税金での優遇を失ってしまい、思うように世帯収入を増やせないということにもなり得ます。
 
専業主婦がパートで働く際は年金についても考慮し、現在の手取りはもちろん、どのような働き方をすれば将来をより豊かにできるのか考えるようにしてください。
 
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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