「家計収支」の観点で専業主婦よりワーキングマザーが圧勝では無いワケとは?
配信日: 2018.02.01 更新日: 2024.10.10
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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収支的にはワーキングマザーに軍配かもしれないが
まずは客観的に収支で考えてみましょう。収支は、水道と同じで、入ってくる水(収入)を増やすか、出ていく水(支出)を減らさなければ、タンクに水(貯蓄)は増えません。専業主婦であるということは水が入っている蛇口はご主人の1本ということになりますから、ワーキングマザーのご家庭と同じようにタンクに水をためるためには、出ていく蛇口の口を締める必要があるということになります。
水が入る蛇口を1本で出ていく蛇口を細くするのと、2本の蛇口で出ていく蛇口が太いのと、どちらがタンクに水が溜まりやすいでしょうか。
ほとんどの方が後者(2本の入り口と太い出口)のほうが貯まりやすいと回答されると思います。しかし、これもご主人の稼ぎが2本分、ということであれば全く話は違います。すなわち収支(定量的)な観点で考えることは意味がないということです。
子育ての仕組みが激変
筆者の子どもたちが小学校低学年とまだ幼かったころ、周りの私立小学校に通わせていたご家庭は100%専業主婦だったと記憶しています。
公立の小学校であれば学童保育などのサービスを活用するということも一般化していましたが、私立小学校であれば、周りの小学校の友達とは付き合いもなく「私立に行かせるほどの余裕がある人が」という先入観からか、学童保育を利用しているご家庭は皆無ではなかったかと思います。
しかし、今や、そういった私立小学校ですら、放課後サービスというのを始めています。コストはかかるものの、重要なのはそういった体制の変化です。私立小学校でもワーキングマザーを意識してターゲティング(生徒募集)する必要が出てきているほど、ワーキングマザーの台頭の勢いが止められなくなっているという事実です。そしてその背景にあるのは、必ずしも家計収支ではないということは前述の通りです。
価値観も柔軟性が求められる
このように考えてくると、単純に「家計収支」からワーキングマザー、専業主婦の二者択一について論じるのは適切ではないと言えるでしょう。専業主婦がマジョリティだった時代とワーキングマザーの市民権が大きくなってきた今とでは、お金の使い方よりも時間の使い方が大きな話題になっているようです。
また子ども同士でも、単なる保護者が戻るまでの滞在先ではなく、アフタスクール・アクティビティという学びの場として重要になってきています。
かつて、「子育てはご近所地域ぐるみで」という時代がありましたが、その地域がアフタスクール・アクティビティに置き換わっているのです。子どもは親の背中を見て育ちますから、今の親世代の親は専業主婦。
しかしながら、その時の価値観が大きくかわっているということを認識すべきでしょう。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表