パート主婦の働き方。扶養を外れて手取りがマイナスにならないのは「年収150万円」から?
配信日: 2021.11.15 更新日: 2024.10.10
手取りがマイナスとならない年収ラインとしては、よく「150万円」といわれますが、果たしてそれは本当でしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
扶養の範囲内でシミュレーション
まずは夫の扶養の範囲内でパート勤務した場合はどうなるのか、シミュレーションしてみましょう。パートの収入は所得税も住民税もかからない年収99万円と仮定し、夫の年収は500万円、夫婦ともに介護保険料と賞与については考慮しないものとします。
このケースでは夫の手取り収入は約397万円で、妻の収入99万円がそのまま加わるため、家計全体の手取り収入は496万円ほどになり、家計全体の手取りの割合は約82.8%です。
いわゆる103万円の壁といわれるラインがこれです。
130万円を超えるパート収入でシミュレーション
続いて妻のパート収入について、夫の社会保険の扶養から外れる130万円を超える場合で考えていきましょう。仮にパート収入を135万円として考えます。
この場合、夫の手取り収入は約397万円、妻の手取り収入は約113万円で、家計全体の手取り収入は約510万円となります。夫の手取りはほぼ変わりませんが、妻の手取り収入は135万円から減少しており、結果、家計の収入は手取り割合で考えると減少しています。
本来であれば、99万円よりも36万円増えていなければならないはずが、実際には手取りが14万円しか増えていません。これは、妻のパート収入が130万円を超えたことで夫の扶養から外れ、社会保険料(健康保険と厚生年金)の支払いが生じたことに起因します。
家計全体の額面上の収入に対する手取りの割合は約80.3%です。130万円の壁といわれるのが、このラインです。
パート収入が150万円を超えない場合と超える場合
では、本題である手取りがマイナスとならないのは「年収150万円」からなのかという問いについて考えていきます。
妻のパート収入が149万円の場合、夫の手取り収入は同じく約397万円です。妻の手取り収入は122万円ほどになり、家計全体の手取りは約519万円です。手取り額自体は増えていますが、手取り割合そのものは減少している点には注意が必要です。
次に、年収150万円をわずかに超えている場合でシミュレーションします。仮に妻のパート収入を155万円として計算してみましょう。その他の条件は同一とします。
この場合、夫の手取り収入は約397万円、妻の手取り収入は約127万円で、家計全体の手取り収入は約524万円となります。家計全体の手取りは、150万円を超えていない場合と比較して増加しています。
これは今回の条件で計算した一例ですが、ここまでの結果からは扶養を外れて手取りがマイナスとならないのは、必ずしも150万円からとはいえないことが分かります。なぜなら、扶養を外れて収入135万円、149万円でも家計全体の手取り自体は増えているからです。
ただし、手取り割合についてはその限りではなく、減少しています。
まとめ
扶養を外れて手取りがマイナスにならないのは年収150万円から? といわれることもありますが、実際に検証してみると、必ずしも150万円までいかなければマイナスというわけではありません。
しかし、今回の計算の結果はあくまでも一例であるため、実際の数値は個々の状況により異なります。
パート収入が年間130万円を超えて扶養から外れてしまったときは、無理に150万円を超えるように働くのではなく、まずは一度簡単にでも家計の収支を計算した上で、働き方について考えてみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)
全国健康保険協会 令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:柘植輝
行政書士