更新日: 2024.10.10 働き方
〈働く女性を応援する〉⑥ 借入だけではない、さまざまな資金調達方法
でもお金を借りるだけが資金調達ではないですし、お金を借りるにしても、いろいろなプランがあります。
事業を始めるということは人生の大きな転機であり、さまざまな事業リスクが伴います。資金調達もそのリスクの1つですので、リスクはできるだけ抑えたいものです。自分に合った資金調達はなにか、考えてみましょう。
執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
どんな資金調達方法があるの?
資金調達の手段は、大きく分けると(1)借入、(2)補助金・助成金、(3)投資の3つです。
(1)借入は、金融機関等から融資を受けること。金融機関側で行う審査をパスしなければいけません。また、いくら借りられるかではなく、いくらなら返済できるか、の観点で考えることが大事です。
(2)補助金・助成金は、返済を必要としません。「もらえる」となると、みんな「欲しい」と思うもの。当然申請が殺到しますので、審査・選抜されることになります。
(3)投資による資金調達もあります。投資会社からの資金提供だけでなく、個人投資家からの資金提供の場合もあります。
銀行融資だけではない借入、自分に合ったメニューを探そう
融資を受ける際には、政府系金融機関や自治体による公的融資を利用する方法と、民間の金融機関から融資を受ける方法(プロパー融資)があります。
特に創業時はまだ実績がなく、業績を示す決算書がありません。事業計画書により事業内容を説明することになりますが、実現可能性が高いと認められないと審査は通りません。
したがって、プロパー融資は非常にハードルが高くなります。
信用保証協会の保証を付けると、審査は通りやすくなりますが、保証料の支払が必要なのと融資額に上限がつくことになります。
政府系金融機関や市・県などの自治体による公的融資制度は、そのような創業者を支援するメニューが用意されています。公的融資は一般的に低金利で、固定金利が多く、無担保・無保証人の場合もあります。女性、若者、シニアの優遇措置もあり、国の政策に基づき実施しているため、貸し渋りなどはしません。
もちろん借入手続にはいくつかの書類が必要で、融資実行までに一定の時間は要しますし、税金は事前に完納が前提となりますが、チャレンジしたい人の後押しをしてくれます。
また(1)借入には、金融機関からの借入だけでなく、親類・知人からの借入もあります。
前者は有利子なのに対し、後者は無利子であることがほとんどですし、また返済期限がないか、あっても短くないことが多いです。要は身内が全面的に応援してくれて、「事業が軌道に乗ったら返してね」と出世払い的な融資となります。そのため自己資金に準じて扱うことができます。
補助金・助成金を受けると、お金以上の効果がある
借入は返済義務があるのに対して、補助金・助成金は返済を必要としません。「お金がもらえる」というと、これほどありがたいことはありません。
ただし補助金・助成金の受取りは事業が終わった後になるため、資金繰り的には支出が先になり、立替えておく必要があります。立替えるお金がない場合は、補助金を受けることを条件に、金融機関からつなぎ融資を受けることもあります。
補助金・助成金を受けるには、申請をして採用されないといけません。補助金・助成金には一定の枠が設定されているので、応募者が多ければ、ほかとは差別化された魅力的な事業でなければ採用されません。
また事業計画書を作るなど申請手続きが大変な場合もあります。
しかし補助金・助成金が受けられるということは、その事業に対して一定の評価が得られたという実績にもなり、その後のビジネスに大きなプラスになります。
ほかにも、事業計画書を作り、プレゼンを行って競い合うビジネスコンテストもあります。ビジネスコンテストで入賞するのはさらに大変ですが、もし入賞できれば、取材を受けるなどして知名度が一気にアップし、周りからもさまざまな支援が得られるようになるでしょう。
投資なんて……と構えずに、身近な投資もある
投資会社や個人投資家からの、資金提供などによる資金調達もあります。経営ノウハウを伝授してくれる場合は、特に起業前や起業後まもない時期には大変ありがたいビジネスパートナーになります。
一方で、上場を果たし株価が上がったところで株を売り、莫大な利益を得ることを目的とする投資であったり、そのまま買収されたりするケースもあります。
近年では、ネットなどを通じて不特定多数からの資金提供を受けるクラウドファンディングも投資の1つです。その事業に共感してくれる、応援してくれる個人が1口1万円程度の資金を提供する仕組みです。
ただし募集の期限内に目標額に到達しない場合は、不成立となり1円も得られないということもあります。
クラウドファンディングは、投資してくれたらお礼に新商品を送る、などの方法で資金を募る場合があります。
そのような場合は、集まる金額はその商品の魅力に左右される可能性があり、それはつまり新商品のテストマーケティングとしてクラウドファンディングを利用する、という考え方もできます。
チャレンジする意味はあるかもしれませんね。
Text:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士、システム監査技術者、不正検査士(CFE)
アットハーモニーマネジメントオフィス代表