更新日: 2022.03.14 働き方

パートの妻が「106万円の壁」を越えて10年間働く。65歳以降、年金はいくら増える?

執筆者 : 柘植輝

パートの妻が「106万円の壁」を越えて10年間働く。65歳以降、年金はいくら増える?
子育てが一段落した、子どもが家を出て独立したなど、家庭がいったん落ち着いたころに扶養内でパートをしていた妻がフルタイム勤務に切り替えることを検討される家庭もあります。フルタイムで働くことで収入が増えるだけでなく、将来、受け取れる年金も増えることがあります。
 
仮に「106万円の壁」を超えて10年間働き65歳から年金を受け取ると仮定して、年金がどれくらい増えるのか計算してみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

106万円の壁とは

扶養を外れて社会保険(厚生年金や健康保険)に入るかどうかの基準となる年収のひとつです。
 
短時間労働者の加入条件のひとつに賃金が月額8万8000円以上であるいう要件があり、おおむね年収が106万円(8万8000円×12ヶ月分)を超えると扶養から外れ、社会保険に自身で加入しなければならなくなることから106万円の壁といわれるのです。
 
具体的には、106万円の壁は収入以外にも下記の要件を満たす必要があります。

1.週の所定労働時間が20時間以上
2.雇用期間が1年以上見込まれる
3.学生でない
4.特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めている
(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)

106万円の壁においては上記のうち、4の要件が重要です。
 
特定適用事業所とは、事業主が同一である適用事業所の社会保険加入者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所をいいます。なお、令和4年10月からは上記人数要件が500人から100人へ変更されます。
 
任意特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数500人以下の企業に属する適用事業所で、短時間労働者が社会保険に加入することについての労使合意を行った事業所をいいます。
 
つまり、106万円の壁を越えて働いても、雇用期間が1年未満や、勤務先が個人事業主で厚生年金への加入義務がない、法人であっても人数が少なく適用事業所でないような場合は厚生年金に加入できないことになり、将来受け取る厚生年金は増えません。
 
106万円の壁を越えても上記4の要件を満たさず、厚生年金に加入することができない場合においては、勤務時間をさらに増やし、フルタイムないし、同じ事業所で勤務しているフルタイム労働者の1週の所定労働時間および1月の所定労働日数の4分の3以上になるように勤務する必要があります。
 
ただ、そもそも勤務先が個人事業主で厚生年金の適用事業所でなく厚生年金が適用されないという場合、働く時間を増やしても厚生年金には加入できないため、別の勤務先に転職し厚生年金の適用事業所となる職場で働く必要があります。
 

106万円の壁を越えて10年働いた場合、年金はどれくらい増える?

仮にこれまで扶養内のパートとして勤務していた妻が、106万円の壁を越えて厚生年金に加入して10年働いた場合、65歳から受け取る年金はどれくらい増えるのでしょうか。
 
下記のような事例でシミュレーションしてみます。

・毎月9万円で就業(年収108万円)
・それまで厚生年金の加入履歴はない
・50~60歳までの10年間就業
・三井住友銀行 年金試算シミュレーションにて計算

すると、65歳から受け取れる厚生年金は毎月4000円ほどになります。年間では4.8万円の厚生年金を受け取れることになります。
 
国民年金は過去に未納などなく満額受け取れると仮定すると、厚生年金と合わせて受け取れる年金は月額で6万9075円、年額では82万8900円になります。
 

106万円の壁を越えて10年間働くと厚生年金は4.8万円ほど増える!

パートの妻が50歳から月収9万円程度で10年間働き厚生年金に加入すると、65歳からは毎月4000円、年間では4.8万円ほどの厚生年金を受け取ることができます。
 
しかし、勤務先によっては106万円の壁を越えても厚生年金に加入できないこともあります。将来受け取る年金を増やすために106万円の壁を越えようと考えている場合、厚生年金に加入できるのかも勤務先に確認したうえで働き方について決定するとよいでしょう。
 
出典
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
三井住友銀行 年金試算シミュレーション
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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