更新日: 2022.03.17 働き方

パート主婦(夫)が悩む「収入の壁超え問題」。扶養を外れても損しない境界線って?

執筆者 : 新井智美

パート主婦(夫)が悩む「収入の壁超え問題」。扶養を外れても損しない境界線って?
パートなど扶養範囲内で働くことを選択する人もいます。その際には、税金が発生する境界線や、社会保険の加入が必要となる境界線などに気をつけておかなければなりません。
 
いわゆる「収入の壁」といわれるものですが、それぞれの内容について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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税金の壁

収入の壁には、所得税もしくは住民税が発生する壁があります。給与収入の場合、給与所得控除(※1)が適用され、控除額は給与収入に応じて決まります。ただ、最低金額が設定されており、その額は55万円です。つまり、給与収入が55万円以下であれば、給与所得は0円となります。
 
また、所得税の計算の際には、所得金額からその人に応じた所得控除を適用し、最終的な課税所得金額を計算します。その際に適用される所得控除が基礎控除のみだった場合、控除額は48万円です。したがって、55万円+48万円=103万円が、所得税がかからないボーダーラインです。
 

■所得金額が48万円を超えると配偶者控除の対象外に

配偶者控除(※2)を受けられる条件の1つに「その年の合計所得金額が48万円以下であること」とあります。したがって、給与収入がある場合、それが103万円を超えると配偶者控除の適用対象外となります。
 
ただ、配偶者控除を受けられなくても、配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除の内容については、以下のとおりです。
 

■配偶者特別控除

配偶者特別控除(※3)とは、配偶者の給与収入が103万円以上になり、配偶者控除の適用対象外となった場合でも、一定の収入までは所得控除が適用される制度です。
 
配偶者特別控除額は、配偶者の所得、そして納税者本人の合計所得金額によって異なりますが、例えば、納税者本人の合計所得金額が900万円以下で、配偶者の合計所得金額が133万円以下であれば、3万円の配偶者特別控除を受けることができます。
 
配偶者特別控除を受けるための配偶者の合計所得金額が133万円以下なければならず、納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合は2万円、950万円超1000万円以下になると1万円と、納税者本人の合計所得が多くなるほど、配偶者特別控除額も少なくなる仕組みです。
 
したがって、配偶者特別控除を受けるためのボーダーラインは、給与収入が201万円以下(合計所得金額が133万円以下)であることです。
 

社会保険の壁

働いていても一定の収入以下であれば、夫の社会保険の扶養に入ることができ、社会保険料の負担はありません。しかし、一定の収入を超えてしまうと、社会保険への加入が必要となり、夫の社会保険の扶養から外れなければならなくなります。そのボーダーラインはどのくらいなのでしょうか。
 

■社会保険の加入が必要となる事業所の要件

社会保険の適用事業所となる要件(※4)は、「株式会社などの法人の事業所」もしくは「従業員が常時5人以上いる個人の事業所」です。さらに、これらの要件に満たなくても、従業員の半数以上が社会保険の適用事業所となることに合意しており、事業主が厚生労働省に申請して認可を受けることで適用事業所になることができます。
 

パート主婦で社会保険の加入が必要となる要件

パートタイムのような短期時間労働者でも、以下の要件を満たすと社会保険の加入が必要です。

●週の所定労働時間が20時間以上
●月の収入が8万8000円以上
●学生ではない
●1年以上の雇用契約がある
●特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること

ただ、これらの要件は、2022年10月より緩和されることが決まっています。月の収入が8万8000円以上ということは、年収で考えると105万6000円以上です。そのため、社会保険の加入が必要となるボーダーラインの年収については106万円と言われています。
 
また、夫が加入している社会保険によっては、年収130万円を超えた場合には扶養対象外となることがあります。このボーダーラインは加入している健康保険組合などで異なることから、あくまでも目安として捉えておき、加入している健康保険組合の規約などを確認し、扶養となる年収の条件を確認しておきましょう。
 

まとめ

社会保険へ加入した際、保険料の負担は労使折半ですが、負担がなかった時と比べるとかなりの増額となります。
 
もちろん、健康保険に用意されている各種手当を受けることができるようになるほか、それまで国民年金保険のみであったのが厚生年金保険へも加入することから、老齢年金はもちろん、障害年金や遺族年金の受給額も多くなる可能性があります。
 
どちらを選ぶかは悩ましいところですが、あくまでも扶養範囲内で働きたいと考えるなら、年収を106万円以下に抑えておくことも選択肢の1つです。一般的に社会保険料の負担割合を考慮しても損をしない境界線はおおむね年収160万円以上といわれています。
 
もし、扶養対象外で働こうと考えているならば、年収160万円以上になる働き方を考えることをおすすめします。
 
出典
(※1)国税庁「No.1410 給与所得控除」
(※2)国税庁「No.1191 配偶者控除」
(※3)国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
(※4)日本年金機構「適用事業所と被保険者」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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