更新日: 2024.10.10 家計の見直し
「我が家より苦しい家計はありますか?」という質問に答えはあるのか
「隣の家の事情が知りたい」ご相談について考えてみました。
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
家計は資産と収支の2つで成り立っている
再三お伝えしているとおり、家計は資産(ストック)と収支(フロー)で成り立っています。月々の給与収入が少なくても、資産(預貯金や不動産など)をたくさん持っている家庭もあれば、その逆もあります。
給与収入は多くても、預貯金がほとんどない、あるいは預貯金を全部ローンの返済にあてて住宅を購入した場合などがこれに該当します。
住宅などの不動産は、新築で入居した途端に中古になりますから建物の価値は下がり、立地など土地の価格に大きく依存することになります。
ここからわかるとおり、「我が家より苦しい家を探すのはほとんど不可能」というのがいつも冒頭でお伝えしている回答です。
我が家より苦しい家計があるとわかれば頑張れる
それでも「我が家より苦しい家計があるのなら、踏ん張る活力になる」という切り替えしが多いのです。ズバリ言うなら、あるでしょう。
手取り月収が10万円そこそこで夫婦2人でやっていかなければいけないと聞けば、このケースが一番大変でしょうか?
しかし、今は資産もほとんどないかもしれないけれど、このご夫妻には近々まとまった遺産が入るかもしれません。また手取り月収が100万円のご家庭は、ほんとうに20万円の家庭よりも優雅なのでしょうか?
月々の生活費が80万円、ローンの支払いが月々20万円、預貯金は「毎月100万円の給与があるから」といってほとんどしていないという家庭もあります。ここからも明らかなように、一見わかりやすい、給与(フロー)だけを比較しても無意味です。
お金の管理の仕方が上手いか下手か
あえて比較の物差しを探すとすれば、「お金の管理の仕方が上手いか下手か」という物差しにならない物差しです。
よく著名人で、ピーク時で月収が1000万円あったけれど、今は仕事もなくなって月収は10万円。こんな話を耳にしますが、そういう人は決まって「生活スタイルを変えられない」とコメントしています。
これはダイエットとも似ていますが、健康診断で指摘されて一時的にベジタリアンに転向したとしても、脳内転換ができていなければ、再び昔の不健康な食生活に戻ってしまうようなものです。「生き方」=「お金の使い方」はそう簡単に変えられません。
「これではマズイ」「乗り越えなければ」といって、自分なりに工夫して管理していくことが「上手いやりくり」として評価されます。
「自分より悲惨な家計を探す」という無意味な質問より「家計改善の工夫」を
数字的な比較対象を探すよりも、それぞれの家計が唯一無二のモデルケースです。その前提で「自分の家計改善」のためにできること、やめるべきことを探していきましょう。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表