従業員持株制度にはどんなメリットがある? 加入した方がいい?

配信日: 2022.06.30 更新日: 2024.10.10

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従業員持株制度にはどんなメリットがある? 加入した方がいい?
お勤め先に「持株制度」という制度があり、奨励金がつくことから魅力的にも思えるものの、「よく分からない」とそのままにしている方や、加入すべきか迷っている方は多いようです。
 
基本的には、制度があるのであれば、利用することをおすすめします。ただし、持株会を通じた自社株の取得には、メリットとともにデメリットもあります。しくみや注意点を理解した上で始めることが大切です。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP®認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

そもそも、従業員持株制度ってなに?

「従業員持株制度」とは、従業員が毎月の給与や賞与から、あらかじめ金額を決めて自社株を購入する仕組みです。東京証券取引所の調査(※)では、2020年3月現在上場会社3708社のうち3236社が持株制度を実施しているほか、非上場会社でも福利厚生の一環として、制度を有する企業も増えています。
 
自社株式を取得することにより、従業員としてだけでなく、株主としての権利も得られるため、経営に参画するという意識をもつことなどから、経営者、従業員双方にとってメリットがあると言われています。それぞれのメリットについて見てみましょう。
 

会社側から見たメリット

上場会社が歓迎するのは、短期的な利益を期待する株主よりも、長期的に経営方針や体制を理解し、応援してくれる株主です。そういった意味で、従業員持株制度により株主となる従業員は「安定株主」と言えます。また、従業員が株式を保有することで、外部からの敵対的買収を防ぐことにもなり得ます。
 
会社のために利益を上げようとする人の集団が、会社の利益を生み出し、配当として分配し、長期的な資産形成のサポート(福利厚生)として機能すれば、従業員のモチベーションはますます上がるという好循環が繰り返されます。つまり、経営参画の意識が、仕事に対する意識を変え、会社の発展につながるということです。
 

従業員から見たメリット

 

奨励金がある

なんといっても魅力なのは、奨励金があることでしょう。従業員が持株会を通じて自社株を購入する場合、会社が一定の割合で購入金額を上乗せします。仮に、奨励金10%とされる会社で毎月5000円の積み立てを設定したとすると、毎回5500円分の株式を購入できることになり、資産形成のスピードが上がります。
 

配当金が得られる

株主の権利として、利益の分配である配当金を受け取ることができる点もメリットと言えるでしょう。株主である従業員のモチベーションが上がることで会社の利益が増えれば、配当金の増額も期待できます。
 

「長期・分散・積み立て」の実践

株式投資に興味はあっても、1単元(100株単位)を購入するには資金が足りない、というケースも多いのですが、持株会では、積立金額相当の小数点以下での買い付けも可能です。
 
毎月一定額での積立投資は、購入単価の平均化により価格変動のリスクを軽減します。資産形成の王道とも言える「長期・分散・積み立て」を実践できます。また、給与(賞与)からの天引きで手間なく、自動的に積み立てられることもメリットと言えます。
 

デメリットは?

持株制度は、理論的には好循環が繰り返されるしくみなのですが、頑張れば上がる(業績はよくなる)とも言いきれず、さまざまな経営環境、予測できない事態による業績ダウンは、会社と個人の双方に影響を与えます。
 
最悪のシナリオとしては、給与収入が途絶える、投資した株式も価値がなくなる、ということもあり得ます。つまり、投資対象として、集中し過ぎてしまったために、リスクが大きくなってしまったということになるのです。
 
仕組み的なデメリットとしては、株主優待も得られず、簡単に売却できないことが挙げられます。これは、持株制度で購入している株式は、持株会が保有する株式のなかでの従業員個人の持ち分という位置づけであるためです。
 
単位株となり、個人名義の証券口座へ引き出しという手続きをすれば、株主名簿に個人名が登録されるため、優待も売却も可能です。単位未満株での売却を希望する場合は、持株会社に買い取ってもらう手続きをします。
 

まとめ

メリット、デメリットについてお伝えしましたが、前提条件として、その会社に長く勤めることを想定しています。最近では、転職や起業も珍しくなく、M&A(会社の吸収合併)による持株会の解散など予期せぬ事態やトラブルも聞かれます。
 
また、積み立てた金額が、退職後の生活を豊かにしてくれる可能性もある一方で、なかには、勤め上げた会社への思いが強すぎて、生活は苦しいのに、株式のまま現金化できないケースも見られます。
 
基本的には、持株制度があるならば、利用することをおすすめします。ただし、貯蓄と投資に回す金額、投資のなかでも、NISAや確定拠出年金など、目的や使う時期に合わせて配分を考えたうえで、資産形成の手段の1つとして制度を活用したいものです。
 

出典

(※)東京証券取引所 2019年度従業員持株会状況調査結果の概要について
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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