更新日: 2022.07.06 家計の見直し

週休3日制になると、生活や家計にどのような影響がある?

執筆者 : 伊藤秀雄

週休3日制になると、生活や家計にどのような影響がある?
2021年6月に閣議決定された、いわゆる「骨太方針2021」の中で、多様な働き方の実現に向けた取り組みのひとつとして、週休3日制の普及促進が挙げられています。
 
週休3日制の導入実態や、家計への影響について確認していきます。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

週休3日制の導入状況

「骨太方針2021」では、企業への導入について次のとおり言及しています(※1)。
 
「選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る」
(内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2021より引用)
 
働き方改革への取り組みに加え、コロナ禍での就業形態の多様化など、柔軟な働き方を各企業が模索し始めたのと重なります。
 
大企業の導入事例も次第にみられるようになりましたが、実際に週休3日制を導入している企業はどのくらいあるのでしょうか?
 
図表1をご覧ください。
 
【図表1】
主な週休制1)の形態別企業割合
 

 
(厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況(※2) より引用)
 
完全週休3日制の割合は不明ですが、月1回でも週休3日制がある企業は8.5%で、前年より0.2%上昇しています。前年と比べて、休日の多い企業がより増えているのが分かります。100人以上の企業では10%以上が何らかの形で週休3日制を導入しています。
 
思ったより少ない、あるいは多い、どちらの印象を持たれたでしょうか?
 

従業員の意識

では、従業員は週休3日制に対してどのようなことを期待し、あるいは不安に感じているのでしょうか。
 
株式会社クロス・マーケティングが実施した調査(※3)の、図表2の中の<図1>によると、休日が増えることよりも家計への影響を懸念する声が上回っています。また、図表2の中の<図2>の生産性向上の予想では、年代により最大2倍以上の差があります。
 
年代が低いほど、週休3日制を前向きに捉えているようです。
 
【図表2】
 

 
<図3>

(株式会社クロス・マーケティング 選択的週休3日制に関する調査(2021年) から引用)
 
図表2の中の<図3>でも、不安の1位が収入減、そして2位は支出増と、いずれも家計への影響となっています。
 
自由な時間が増える、あるいは生産性が上がるといった、お金以外のプラス効果を理解しながらも、家計に対する漠然とした不安が解消されないと、利用の手が広く挙がらないように見えます。
 

メリットとデメリット

<図3>の回答は、多くがメリット・デメリットと重なりますが、このほかに3つずつ挙げてみました。
 

【メリット】

●学び直し機会の獲得
●副業や兼業を活用した能力開発、キャリアの拡大
●離職防止、人材獲得の促進

 

【デメリット】

●将来の厚生年金受給額の減少
●離職時の基本手当(失業手当)の減少
●職場や顧客とのコミュニケーション不足

 
前出の調査は、休日が増えることによる収入減が前提になっています。この場合、収入が減るので、年金受給額も減ることになります。
 
国民年金(基礎年金)には影響ありませんが、厚生年金の報酬比例部分の受給額が、文字通り給料の減少に応じて少なくなります。
 
仮に新入社員から定年まで週休3日制の場合、月収と賞与原資を週休2日制のときの5分の4とすると、年金額が約8割に減ります。老後の生活費が不足しないよう、その分をほかの手段を講じて備える必要があるかもしれません。
 
なお、1日あたりの勤務時間を長くし、週の総労働時間を変えない週休3日制もあります。
 
こちらは、収入減にはなりませんが、例えば1日8時間分の勤務時間をほかの平日に2時間ずつ振り分けると、1日の勤務時間が長くなり、疲労蓄積や子どもの送迎時間・通勤時間帯への影響など、また新たな不安要素が出てきます。
 

まとめ

ひと口に週休3日制といっても、1日あたりの勤務時間など制度の設計次第で、従業員への影響は大きく変わってきます。
 
ただ、いずれにしろ各自の生産性向上を伴わないと、単に「仕事の時間が足りない」状態に陥ってしまう可能性があります。
 
ところで、骨太方針では「選択的週休3日制度」とありました。
 
メリットが上回ると判断した従業員が自分の意志で「選択」し、仕事や職場ともうまく折り合いをつけて利用するなら、良いロールモデルになるのではないでしょうか。
 

出典

(※1)内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2021

(※2)厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況
(※3)株式会社クロス・マーケティング 選択的週休3日制に関する調査(2021年)
 
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。