更新日: 2024.10.10 働き方
脱サラして地方移住、どのようなメリットがある?
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
地方から東京圏への人口流入
日本の人口は、高度経済成長期には3大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)に人口が流入しましたが、1980年頃にかけて沈静化しました。
その後、バブル期にかけて東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)に人口が流入し、バブル崩壊後は東京圏が一時的に転出超過となりましたが、2000年代には再び流入が増加しました※1。
その後も、東京圏は転入超過が続き、2019年には14万8783人の転入超過となり、前年比8915人の拡大となりましたが、2020年の新型コロナウイルスの感染の影響で、特に感染者数が多かった東京では、転入超過は大きく縮小し、2021年の東京圏の転入超過は8万1699人にとどまりました※2。
新型コロナウイルス禍の仕事やライフスタイルの変化の状況の中で、東京圏在住の人、特に若い人の地方移住への関心が高まっています。
2019年の調査では、地方移住に、強い関心がある、関心がある、やや関心がある、を合わせると20代の人では32.1%(全年齢層では25.1%)だったのが、2021年9-10月では44.9%(全年齢層では34%)になっています。
地方移住への関心理由としては、「人口密度が低く、自然豊かな環境に魅力を感じたため」「テレワークによって地方にいてもこれまでと同じように働けると感じたため」「ライフスタイルを都市部での仕事重視から、地方での生活重視に変えたいため」が上位となっています。
若い人は、環境への柔軟性があり、ITを利用したテレワークにも抵抗がなく、家族を中心とした生活の中で、自然豊かな環境のなかで子育てをしたいという意識が現れています※3。
地方移住のメリット
移住のメリットをいくつか挙げてみます。
1.生活費が安い
東京圏と比較すると住宅費が安いので、広い家に住むことができます。また、近所の人が農家をしていれば、ただで野菜をもらえるかもしれません。
2. 満員電車に乗らなくてすむ
地方では、ほとんどが車で移動するので、満員電車に乗るストレスや、電車の遅延にイライラすることもないでしょう。
3.自然に囲まれて生活ができる
山や海がすぐ近くにあるので、小さな子どもがいれば一緒にキャンプに行ったり、海に潜りに行ったり、気軽にレジャーを楽しむことができます。
4. 安くておいしい食べ物が多い
地域によっては、採りたての山の幸、海の幸をリーズナブルな値段で食べることができるかもしれません。
5.国の支援制度や自治体の補助金や助成金を受けられる
国による支援制度としては、地方創生交付金としての移住支援金や起業支援金があります。移住支援金は、首都圏に人口が一極集中することを回避し、地方の人口減少に歯止めをかけるために行っている支援事業です。
東京圏から地方へ移住したのち、起業や就職、テレワークによる業務継続をした場合、単身者なら60万円以内、2人以上の世帯で100万円以内の支援金を受け取ることが可能です。
対象となる人は、地方に移住する直前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上を東京23区に住んでいる人や、東京圏(条件不利地域を除く)から東京23区へ通勤している人などの条件があります。
起業支援金は、東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において、社会的事業の起業をした場合に、最大で200万円が助成される制度です※4。自治体の補助金や助成金としては、自治体ごと異なりますが、住宅支援、就職・就農・起業支援、結婚・子育て支援等があります※5。
6. 移住創業者向けの融資制度を利用できる
日本政策金融公庫の制度で、地方に移住して新たに事業を始める人が対象で、一定の要件に該当をする場合は、特別利率での融資を受けられます。移住前から相談が可能です※6。
まとめ
地方移住で注意していただきたいのは、メリットばかりではなく、デメリットもあるという点です。
デメリットとしては、公共交通機関が不便なので、一家に1台どころか一人1台車が必要になる、文化的施設やスポーツ観戦の施設などが少ない、医療機関が少ない、自然災害に遭いやすい、希望する仕事が見つかりにくいなどが挙げられます。
また、地方では人間関係が密なので、採れたので野菜をもらえたり、留守をしたときは近所の人が子どもを預かってくれたりと良い面がある一方、常に人の目があるので煩わしく感じたり、一度人間関係がもつれたり、うわさが広がると収拾が難しいなどがあります。
移住する前に興味がある移住先の環境をよく調べ、実際に行ってみて、できればしばらく住んでみるとよいでしょう。
出典
(※1)国土交通省 東京一極集中の状況等について
(※2)総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告
(※3)内閣府 政策統括官(経済社会システム担当) 第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 令和3年11月1日
(※4)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生 地方へ移住しよう 地方で起業しよう
(※5)【公式】岐阜県への移住・定住ポータルサイト ふふふぎふ 県の支援・補助金
(※6)日本政策金融公庫 移住創業者向けの融資制度
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者