更新日: 2022.08.01 働き方

フリーターが納める税金・保険料とは? 働き方や年収によって変わる?

執筆者 : 上山由紀子

フリーターが納める税金・保険料とは? 働き方や年収によって変わる?
現在、フリーターという言葉は普通に使われていますが、どんな働き方をしている人がフリーターなのでしょうか。また、フリーターとして働く方も、ある一定の収入があれば会社員などと同じように税金や健康保険料等を納めることになります。
 
では、その額や条件はどうなっているのでしょうか。以下で解説していきます。
上山由紀子

執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

フリーターとはどんな働き方をする人?

実は、フリーターという用語には厳密な定義が存在していません。総務省「労働力調査」では、若年のパート・アルバイトおよびその希望者のことを、便宜上「フリーター」としています(※1)。
 
また、総務省と厚生労働省とでは、下記のとおり少しフリーターの定義が異なります。
 

1.総務省「労働力調査」

若年のパート・アルバイトおよびその希望者
年齢が15~34歳で男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者のうち次の者をいう。

●雇用者のうち勤め先における呼称がパート・アルバイトの者
●完全失業者のうち探している仕事の形態がパート・アルバイトの者
●非労働力人口で、家事も通学もしていないその他の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態がパート・アルバイトの者

 

2.厚生労働省 平成3年「労働経済の分析」

年齢は15~34歳と限定

●現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で、男性については継続就業年数が1~5年未満の者、女性については未婚で仕事を主にしている者
●現在無業の者については家事も通学もしておらず「アルバイト・パート」の仕事を希望する者

総務省と厚生労働省の定義で共通しているのは、年齢が15~34歳であること、働き方をアルバイト・パートとしていることです。
 

フリーターの納める所得税・住民税は?

現在アルバイトやパートを掛け持ちして働き、収入を増やしているフリーターの方もいることでしょう。収入によって、また、扶養家族の有無や家族構成によっても納める税金は変わってきます。
 
所得税の計算では、1年間(1月1日~12月31日)に個人が得た総収入金額から必要経費を差し引いて所得金額を求め、そこからさらに所得控除額を差し引いた金額に対して課税します。(※2)。

(計算式)

所得金額=総収入金額-必要経費〔給与所得控除(※3)〕
課税所得金額=所得金額-所得控除額(基礎控除)
所得税額=課税所得金額×所得税率(※4)

 
〇今回、控除するものは給与所得控除と基礎控除のみとし、他の控除は考慮しない。また、復興特別所得税も考慮しないものとする。
 
例えば、
独身、親の扶養に入っていない、勤め先でパートとして働き年収が103万円のAさんの場合は以下のとおりです。

(所得税)

上記の計算式より
課税所得金額=103万円(総収入金額)-55万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=0円

課税所得金額がゼロになるため所得税はかかりません。しかし、住民税は課せられます。
 
住民税は前年度の所得に応じて課税され、所得割と均等割があり、所得割は課税所得金額に対して10%、均等割は通常5000円(市町村民税3500円、道府県民税1500円。2023年度までそれぞれ500円ずつ引き上げられている)と定められています(※5)。住民税では基礎控除が43万円となり、所得税の場合より5万円少なくなります。

(住民税)

課税所得金額=103万円(総収入金額)-55万円(給与所得控除)-43万円(基礎控除)=5万円
所得割=5万円(課税所得金額)×10%=5000円
所得割5000円と均等割5000円で1万円となります。

一方、独身、親の扶養に入っていない、勤め先でパートとして働き年収が150万円のBさんの場合は以下のとおりです。

(所得税)

課税所得金額=150万円(総収入金額)-55万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=47万円
所得税額=47万円(課税所得金額)×5%(所得税率)=2万3500円

 

(住民税)

課税所得金額=150万円(総収入金額)-55万円(給与所得控除)-43万円(基礎控除)=52万円
所得割=52万円(課税所得金額)×10%=5万2000円
所得割5万2000円と均等割5000円で5万7000円となります。

 
収入により、納める所得税や住民税が変わってくるのが分かります。
 

フリーターの保険料は?

社会保険制度には「健康保険制度」「介護保険制度」「労働者災害補償制度(労災保険)」「雇用保険制度」「年金保険制度」の5つがあります。このうち、15~34歳であるフリーターに特に関係してくる保険は、「健康保険」と「年金保険」です。
 
健康保険では、年収が130万円以上になると扶養に入れず、自分で健康保険料を納める必要があります(※6)。また、令和4年10月から、短時間労働者に対する健康保険と厚生年金保険の適用が拡大されます(※7)。
 
現行では、以下の要件を満たす短時間労働者は、健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。

(1)1週の所定労働時間が20時間以上であること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が8万8000円以上あること
(4)学生ではないこと
(5)従業員数が常時500人超えの事業所

令和4年10月および令和6年10月からは、次のように適用が拡大されます。改正となるのは、上記の(2)と(5)です。

令和4年10月からは

(2)雇用期間が2ヶ月を超える見込み
(5)従業員数が常時100人超えの事業所

 

令和6年10月からは

(2)雇用期間が2ヶ月を超える見込み
(5)従業員数が常時50人超えの事業所

従業員数100人超え、あるいは50人超えの事業所で働いているフリーターの方は、健康保険料と厚生年金保険料を納める必要が出てくる可能性があります。
 
例えば、前述のBさん(年収150万円)の場合は以下のとおりです。
標準報酬月額はおおよそ12万5000円となり、協会けんぽの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)によると、健康保険は9等級で保険料は6180.3円、厚生年金保険料は6等級で1万1529円です。健康保険・厚生年金保険ともに会社とBさんの折半(協会けんぽの場合)となっており、上記はBさん自身が納める金額になります(※8)。
 
今のうちに、働いているところがどれくらいの規模の会社なのかを確認しておきましょう。
 

まとめ

今回はフリーターの方が収入によってどれくらいの税金を納めることになるのか、また、今後の適用拡大により健康保険と厚生年金保険の対象となる条件をお伝えしました。保険料を負担することによって手取り額は少なくなりますが、将来受給できる厚生年金が増えることになります。
 

出典

(※1)総務省統計局 16A‐Q09 フリーターの人数
(※2)国税庁 No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか
(※3)国税庁 No.1410 給与所得控除 令和2年分以降
(※4)国税庁 No.2260 所得税の税率
(※5)総務省 個人住民税
(※6)全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
(※7)日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
(※8)全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
 
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

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