退職する前に準備するべき老後のための預貯金額は?
配信日: 2022.08.24 更新日: 2024.10.10
そこで、自分の老後に必要な預貯金額等を知る方法をお伝えします。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
年間の支出額の把握
まずは年間の支出額を把握しましょう。いきなり「年間」と言われると、やる気をなくす人もいるかもしれませんが、安心してください。簡単に年間の支出額が分かる方法もお伝えします。
(1) 家計簿から把握する方法
これは家計簿をつけている人しかできない方法です。過去のデータをお持ちであれば、そのデータをもとに支出額の1年分を合計します。細かく合計できるのであれば項目ごと(食費・光熱費・通信費・日用品費など)に合計してください。面倒であれば単純に1年分を合計しても問題はありません。
(2) 項目ごとに集計して把握する方法
これは光熱費や通信費、クレジットカード等の引き落としをしている通帳を準備します。その通帳から引き落とされている金額を1年分集計します。食費や日用品は現金を引き出して支払いをしている人は、大体の引き出し額を集計してください。
(3) (2)と同じ通帳を使ってざっくり把握する方法
例えば今年の7月末の通帳の残高を書き出します。次に昨年の7月末の通帳残高を書き出します。この差(今年7月残高―昨年7月残高)がプラスであれば、その差が1年間に増えた金額です。この金額を12で割って(割り算)ください。
それが1ヶ月で増えた金額と考えてください。給料の手取り額から、その1ヶ月で増えた金額をマイナスすると、1ヶ月で使った支出額となります。
その金額に12を掛ける(かけ算)と、1年間で使った支出額(便宜上、上記の例で「今年7月残高―昨年7月残高」がマイナスであれば、「給料の手取り額×12ヶ月=1年間で使った支出額」と考えてください)となります。
(4) 何もかも面倒だという人が把握する方法
給料の手取り額については、だいたい把握されていると思います。仮に、その金額の8割が毎月の支出額だとしてみてください。これははっきり言って正確さはほとんどありませんが、やってみることが大切です。
このようにして年間の支出額を把握するのですが、1円単位までの正確な金額は不要です。まずはおおまかな年間支出額を把握することを1番に考えてください。
老後の年数を想像する
年間の支出額が把握できれば、ほぼ完成と言えます。次に考える必要があるのは、退職してから何年間生活するのかです。もちろん正確な数字は誰も分かりませんが、平均余命表(※1)などを参考にすることができます。
また、人生100年時代とも言われているので、100歳までの年数を想像しても良いかもしれません。おおよそ何年間、第二の人生である老後があるのかを考えてください。
受給できる老齢年金等の金額を知る
老後の大きな収入源となるのは老齢年金ですが、多くの人は「受給できる老齢年金額」が分からないとよく聞きます。知る方法はいくつかあります。
(1) ねんきん定期便(※2)
(2) ねんきんネット(※3)
(3) 公的年金シミュレーター(※4)
(4) 年金事務所に問い合わせる(※5)
これらの方法から、自分に適した方法で調べてみてください。
老後に必要な預貯金額は?
ここまで見てきた項目を用いると、老後に必要な預貯金額は、以下の算式で計算できます。
「年間の支出額」×「余命年数」―「受給できる老齢年金等」
注1:年間の支出額は、子どもや配偶者がいる・いないで大きく異なるので、退職が近づくにつれ、修正が必要となります。
注2:受給できる老齢年金等については、老齢年金以外にも退職金や保険会社等で加入している個人年金保険等もあるでしょう。そういう人は、ここに加算してください。
おおよその金額を知ることが一番大切
漠然とした老後の不安は、年代に関係なく多くの人が持っています。その漠然とした部分を少し具体化できるのが、この算式(「年間の支出額」×「余命年数」―「受給できる老齢年金等」)です。少しでも具体化できれば、今から行動を変えることができます。
正確に知りたいのであれば、1つずつを正確な金額にしていけば完成しますし、プロに聞くこともできます。ただ、まずは正確性よりも「おおよそ」の金額を知り、行動を起こすことから始めてください。
出典
(※1)厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
(※2)日本年金機構 大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています
(※3)日本年金機構 ねんきんネット
(※4)厚生労働省 公的年金シミュレーター
(※5)日本年金機構 全国の相談・手続き窓口
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士