【2022年度残業代予算額を調査】中央省庁の「超過勤務問題」とは?

配信日: 2022.09.10 更新日: 2024.10.10

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【2022年度残業代予算額を調査】中央省庁の「超過勤務問題」とは?
菅政権(当時)が2021年3月に決定した「人事管理運営方針」において、各府省庁職員の勤務時間を把握するように求めました。その結果、2022年度一般会計予算において、前年度よりも大幅に「超過勤務手当」が増加しました。
本記事では、中央省庁の超過勤務問題や、2022年度残業代予算額を紹介します。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

中央省庁の超過勤務問題とは


 
中央省庁で働く各府省庁職員の超過勤務が問題になっており、勤務時間の正確な把握もできていなかったため、現状把握するために「超過勤務手当」をつけることで予算を増加させました。裏を返せば、しっかりとした超過勤務手当すらついていなかった可能性があるといえるでしょう。
 
2021年3月19日に伊藤孝恵(たかえ)参議院議員が「官僚の働き方に関する質問主意書」を政府に出し、その答弁書によると、2020年12月から2021年2月の3ヶ月間で月80時間超の職員が約6500人、月100時間超の職員は約3000人いる状況でした。
 

超過勤務の原因

超過勤務は、仕事量の多さに対して職員の少なさが原因のものや、国会議員からの質問通告や質問主意書への対応があります。
 
例えば、財務省であれば予算編成期間の9月から12月の期間や、内閣法制局であれば通常国会の会期直前から会期中の前半に通常国会にかけられる法律案の審査を行っており、どちらも連日の残業が続くような状況です。また、新型コロナウイルス感染症のまん延以降は、内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室や厚生労働省の残業が増えていました。
 
国会会期中は、国会議員からの質問通告の可能性を考え待機をしています。しかしルールが守られていないことから、質問通告が来るのが遅く、通告が来てからでないと対応ができないため必然的に残業をすることになってしまいます。
 

2022年度残業代予算額

2022年度残業代予算額は、勤務時間把握のために大幅増加となりました。2022年度と2021年度の比較と伸び率を図表1で紹介します。
 
図表1
 

2022年度予算額 2021年度予算額
(補正含む)
伸び率
内閣官房 14億7654万円 11億4165万円 29.3%
内閣法制局 7312万円 7440万円 ー1.8%
内閣府 12億3978万円 9億5690万円 29.6%
警察庁 43億7212万円 39億3412万円 11.1%
総務省 24億3376万円 20億9542万円 16.1%
法務省 8億4604万円 7億2812万円 16.2%
外務省 30億7867万円 28億3097万円 8.7%
財務省 25億766万円 24億6322万円 1.8%
文部科学省 17億423万円 13億9628万円 22.1%
厚生労働省 55億3161万円 39億8264万円 38.9%
農林水産省 35億46万円 35億3006万円 ー0.8%
経済産業省 27億9500万円 23億8062万円 17.4%
国土交通省 51億3187万円 38億6776万円 32.7%
環境省 10億6477万円 8億5560万円 24.4%
防衛省 89億6501万円 80億3596万円 11.6%

 
出典:財務省 予算書・決算書データベース 令和4年度予算書関連 当初予算 一般会計
 

中央省庁の超過勤務問題を解決するには

2022年度予算では、概算として残業の実態が把握できるようになったため、最終的な決算で実際の超過勤務を確認できるでしょう。財務省や内閣法制局などでは時期的に超過勤務が発生する場合や、新型コロナウイルス感染症対策のような突発的な事態で残業が発生する場合があります。
 
超過勤務問題を解決させるには、民間企業が実施しているような働き方改革だけではなく、中央省庁にある残業させるような慣習や、国会議員の意識を変えることで実現が可能となるでしょう。
 

出典

内閣官房 令和3年度における人事管理運営方針について

神一行 大蔵官僚 超エリート集団の人脈と野望(講談社、Kindle版、1986)
西川伸一 立法の中枢 知られざる官庁内閣法制局(五月書房、2000)
財務省 予算書・決算書データベース 令和4年度予算書関連 当初予算 一般会計

 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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