「毎月の残業時間」って本当はどれくらいが法律的には許されているの?
配信日: 2022.09.12 更新日: 2024.10.10
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
法律が定めている残業時間は月45時間・年360時間まで
労働基準法は労働に関する最低基準を定めています。その中で「労働時間を延長して労働させることができる時間(残業時間)」は、月45時間・年360時間までと定めています(労働基準法36条4項)。
月25日の勤務で45時間の残業があると仮定すると、1日当たりの平均残業時間は1時間48分です。一方、年間360時間の残業があると仮定すると、月の平均残業時間は30時間となり、30時間を月25日勤務で平均すると1日の残業時間は1時間12分になります。そのため、毎月残業時間の限界まで残業したとすると、8ヶ月で年間残業時間に到達することになります。
法定の労働時間は1日8時間以内で週に40時間以内
労働基準法が定める労働時間は1日8時間以内で、週に40時間以内として(同32条、35条)、最低でも週に1回は休日を設定することとしています。実は労働基準法の観点から考えると残業は例外的な扱いになっており、原則的には定められている労働時間を超過しての労働は認められていません。
労働基準法は労働者を守るためにあることから、労働基準法を守っていないことが労働基準監督署に知られれば罰則の適用対象になるでしょう。
従業員を残業させるためには「36協定」が必要
従業員を残業させるためには、従業員(労働者)と会社(使用者)側で残業等(時間外労働・休日労働)に関する同意として「36協定」を結び労働基準監督署に提出する必要があります。
36協定を結ばずに従業員に残業をさせてしまえば、労働基準法違反になります。労働基準法を守っておらず、特に悪質であると判断されれば、労働基準監督署の監督対象になるだけでなく、取引先などからの評判が悪くなることは避けられません。
特別な事情があれば年間で最大720時間まで残業が可能
特別な事情があれば年間で最大720時間までの残業が可能ですが、毎月60時間の残業が認められるわけではなく、2ヶ月~6ヶ月の平均残業時間は休日出勤も含めて80時間以内に収める必要があります。
また、特別な事情ではなく残業時間が月45時間超えた場合や年間360時間を超えた場合には罰則があるため、特別な事情であることを確信できないのであれば気を付けましょう。
最大720時間まで残業は可能ですが、従業員の負担が大きくなってしまうため、従業員へのしっかりとしたケアが必要です。無理な残業が続くと、健康を害したり退職を選択したりする従業員も出てきます。
特別な事情であると認められるケース
特別な事情であると認められるケースは、ボーナス時期の業務多忙・大規模クレームの発生・予算や決算業務など一時的に特別な事情がある場合だけです。慢性的に人手が不足している状態や、単純に業務が忙しいだけでは特別な事情としては認められません。
自分たちでは特別な事情だと思っていても、労働基準監督署からすれば特別な事情だと認められなければ違反に該当する恐れがあります。
一部の業種では36協定が適用されない
一部の業種や職種では36協定が適用されないことから、残業時間の縛りを受けずに働いているケースも珍しくありません。例えば、管理職などは36協定の適用を受けませんが、残業時間の縛りを受けずに残業代も不必要です。
ただし、従業員の多くを管理職として勤務させている企業もありますが、管理職としての実体を伴っていないなら本来の残業時間上限を超えてしまうと残業時間違反と判断されるケースもあります。
他にも国家公務員(一般職)は36協定が適用されませんが、労働時間は週に38時間45分で休日は週に2回を原則として適用しているのが特徴です。地方公務員は原則として労働基準法が適用されている一方で、36協定に関する手続きは必要ありません。
残業時間に異常を感じたら労働基準監督署に相談する
労働基準監督署とは、企業などが労働基準法を正しく守り、従業員の労働環境や残業時間を超過していないかを監督・指導する行政機関です。残業時間に異常を感じたら労働基準監督署に相談すると、労働基準監督署が企業に対して調査などをしてくれます。
労働基準法に違反している企業に改善を求めることは当然の権利です。会社に直接交渉しても労働環境が改善しないのであれば、労働基準監督署に相談して会社の体質を改善するためにも調査をしてもらうことも大切といえるでしょう。
出典
e-Govポータル 労働基準法
厚生労働省 「労働基準監督署の役割」(パンフレット)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部