更新日: 2024.10.10 貯金

財形年金はやめるべきなの? 財形年金のメリット・デメリットを解説

財形年金はやめるべきなの? 財形年金のメリット・デメリットを解説
「iDeCo」や「つみたてNISA」が老後の生活に向けた資産形成の手段として存在感を示す中、若い頃に始めた財形年金貯蓄を解約して積立投資に切り替えた方がよいのではという悩みはありませんか?
 
当記事では、財形年金のメリット・デメリットを挙げながら、解約するべきかを判断する際の基本的な考え方について解説していきます。
茂野博起

執筆者:茂野博起(しげの ひろき)

AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

かつて財形年金は老後準備の主流だった

iDeCoやつみたてNISAが制度化される前、老後資金の資産形成の主役はもっぱら「財形年金貯蓄」だったといえます。
 
しかし、その財形年金による資産形成は、低金利時代を迎えて曲がり角に差し掛かりました。
 

財形貯蓄の種類と特徴

そもそも財形年金貯蓄とはどのような制度なのか、改めて確認しましょう。
 
財形貯蓄制度は、以下の3種類ある「財形年金貯蓄」のうちの1つです。
 

勤労者財産形成貯蓄(一般財形貯蓄)

勤労者が3年以上にわたって積み立て、それによって利子等の非課税措置を受けられます。加入年齢や使用目的に制限はなく、自由度の高い財形貯蓄といえます。
 

勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)

住宅の取得やリフォームなど、住宅資金準備を目的とした財形貯蓄で、55歳以下の勤労者が5年以上の期間にわたって積み立てることで、利子等の非課税措置が受けられます。
 

勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)

55歳未満の勤労者が5年以上にわたって積み立て、60歳以降に5年間以上の年金受給を受けるための財形貯蓄です。
 
【図表1】

一般財形貯蓄 財形住宅貯蓄 財形年金貯蓄
年齢要件 なし 加入時満55歳以下
積立期間 3年以上 原則5年以上 5年以上
積立目的 自由 住宅購入・リフォーム 老後資金の準備
積立限度額 なし 財形年金と合算で550万円 財形住宅と合算して550万円
税 金 課税 非課税 非課税
払出時の取扱い 特になし 5年間さかのぼって課税

厚生労働省「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」を基に筆者が作成
 
3つの財形貯蓄はいずれも事業主と金融機関が契約し、給与天引きによる自動引き落としで積み立てていくのが特徴です。勤務先によっては財形積立制度が導入されていないこともあるので、新たに加入を希望する場合は担当者に確認しましょう。
 

財形年金のメリットとデメリット

それでは、財形年金貯蓄にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
 

財形年金貯蓄のメリット

財形年金貯蓄の主なメリットとして次の2つが挙げられます。

1.利子等に対する非課税措置を受けられる
2.給与天引きなので積立金額が自動的に引き落とされ、老後生活資金の準備を着実に進められる安心感がある

税負担が増すばかりの昨今だからこそ、非課税枠は大事にしたいものです。
 

財形年金のデメリット

一方、財形年金貯蓄のデメリットとしては次の3つが挙げられます。

1.現在の金利水準では利子収入を期待しにくい
2.利子収入が増えないため、非課税の恩恵が受けにくい
3.目的外払出しの場合は5年さかのぼって課税される

足元のような低金利・物価上昇局面が長期的に継続すると、お金の価値は目減りしてしまう可能性があります。加入を検討する場合は、現在の適用金利と物価上昇率を踏まえて慎重に判断するようにしましょう。
 

選択肢が広がった今、財形年金は解約した方がよいのか?

老後生活の準備のためにコツコツと継続してきた財形年金を、今になって解約してよいものなのかは、悩ましい問題です。一人ひとりの事情によって最適解は異なり、一概にどちらが正解と言い切ることはできません。
 
iDeCoやNISAなど他制度に資金を移す場合、解約時に目的外払出しとして過去5年間分の税金が差し引かれることになります。iDeCoやNISAを通じた投資の複利効果がどの程度見込めるかをしっかり考えた上で、解約が自分にとって得か、損かを慎重に検討する必要があります。
 
例えば定年退職間際であれば、解約せずにそのまま保持するという選択肢が有効といえるでしょう。
 
反対に定年まで10年以上といった比較的長い時間が残されている場合であれば、積立投資の複利効果を最大限に享受するという選択肢を積極的に考えてもよさそうです。ただし、比較的「安全」とされている積立投資であっても、元本保証はなく、絶対に利益が出るとも言い切れない点に注意が必要です。
 

まとめ

財形年金貯蓄などの優遇制度を活用することは資産形成をする上で大切ですが、時代が移り変わる中で、制度自体が社会状況にマッチしているかは慎重に見定める必要があります。
 
財形年金からiDeCoやNISAといった新制度への資金移動を検討する際は、解約によって生じる税負担を考え合わせた上で、ご自身の老後をより豊かにしてくれる制度を賢く選択するよう心がけましょう。
 

出典

厚生労働省 勤労者財産形成促進制度(財形制度)
 
執筆者:茂野博起
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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