更新日: 2024.10.10 家計の見直し
お金を増やしたいと思って落とし穴に落ちないように注意すべきこととは?
自由に使えるお金を手に入れるため、どのようにしたらお金を増やすことができるのでしょうか。また、そのときに間違った判断をしないように、注意したいポイントを見ていきましょう。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
お金を増やす方法とは
お金を増やす方法は、「収入を増やす」か「支出を減らす」かの2択であることは、ほとんどの人が分かっていることでしょう。ただ、収入を増やすことは、給料制の会社員にとっては簡単ではありません。
一方、支出を減らすことは、支出の見直しをすると、一定数の人は効果があります。支出が減らせる人の特徴は、把握している支出金額に思い込みの部分が多く、実際の支出額と一致していない人です。
これは家計簿をつけているかどうかという問題ではありません。家計簿をつけていなくても、通帳やクレジットカード、キャッシュレス決済サービスといったもので、支出額は管理できるからです。
お金を増やしたいのであれば、まずは現状の支出額を把握しましょう。その上で、「収入―支出=貯蓄」という余った分を貯蓄する考え方ではなく、「収入―貯蓄=支出」という先取り貯蓄の考え方を定着させましょう。
支出額を見直して、もうお金を増やす手段が見つからない
支出額を見直して一定の支出額を減らすことはできたけれど、今の急速な物価高などには対応できず、やはりお金が増やせないということもあります。
そんななかで、よく聞く話と言えば、「今の世の中で物価高に対応するには、お金に働いてもらいましょう」といったような売り文句ではないでしょうか。こういった広告を見て投資を始めたい、という人も多いです。もちろん間違いではないです。
例えば、毎月3万円の積立を銀行で行っているとします。このうち1万円だけでも銀行ではなく証券会社で投資信託を毎月積み立てることにすると、利息は異なります。
とある銀行で積立をすると金利は0.002%、とある証券会社で投資信託を積み立てると2.5%の運用益だったとします(実際は異なりますが、ここでは金利と運用益を同じ意味だと考えてください)。この場合、どちらにお金を預けますか、という話になります。
どちらにお金を預けますか
先ほどの例で、銀行にお金を預けるか、証券会社にお金を預けるかどうしますか、と尋ねられると、多くの人は証券会社にお金を預けます、と言ってしまうかもしれません。
さらには、話を聞いている段階で、3万円のうち1万円だけ証券会社に変更するのは惜しいから、どうせなら3万円全額を証券会社に変更しよう、という考えさえも沸いてきそうです。
金利0.002%と運用益2.5%という数字の比較だけでも、お金を増やしたいという気持ちをかき立てられます。さらに追い打ちをかけるように、銀行では100万円預けても20円ぐらいしか利息はつきませんが、証券会社に預けたら2万5000円増えますと言われると、銀行から証券会社にお金を移します、となりがちです。
ここが落とし穴
お金を増やしたいという思いが強く、支出額もなかなか抑えられないとなると、やはり頭に思い浮かぶのは投資です。
お金を増やしたいな、投資を始めようかなと考えたときに、銀行で積立をする場合と証券会社で積立をする場合との比較を、具体的な金額を挙げて説明をされるとどうしても気持ちが舞い上がり、全部を証券会社にしてみよう、と思いがちです。
でも、投資は自分の身の丈にあった範囲内で行うことが必要です。その身の丈は、人それぞれ異なります。さらに、首相が「資産所得倍増プラン」なるものを提言したこともあり、私も投資を始めます、という人が増えることが考えられます。
何度でも言いますが、投資を始めることは間違いではありません。むしろ、この物価高の時代で給料が増えないとなると、投資を始めるべきです。でもその前に少し冷静になって、次のことをよく考えてください。
●本当に支出額を見直しましたか。
●投資は増えるだけではなく減ることもある、ということを本当に理解していますか。
●「投資=投資信託の購入」だけだと思っていませんか。同じ投資で元本割れの可能性はあるけれど、投資信託より少しは安全な債券というものがあることを知っていますか。
●債券の中には、国や地方が発行するものがあることを知っていますか。
こういったことを冷静に考えながら、自分が投資をすべきなのかが分からないのであれば、お近くのファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。
相談相手にも落とし穴
ただし、相談に行った先でも注意が必要です。相談したファイナンシャル・プランナーが、投資をすべきだとか、この商品を買うべきだといったことばかり主張する人であれば、そのファイナンシャル・プランナーは自分の成績を挙げることに手いっぱいな可能性もあるので、丁重にお断りしてください。
投資は全員がすべきだと言う考えに間違いはないと思っていますが、まずはその人に合った家計を作ることの方が大切です。その家計を作ったうえで、投資ということが必要になるのであれば考えるというシンプルな流れです。
新型コロナウイルスの猛威やウクライナ情勢により、経済が混乱状態にあるのは間違いありません。そのため、円安や株安、物価高といったさまざまなことが起こっているのも事実です。こういったときこそ冷静な目をもって、自分の大切なお金と向き合ってください。
出典
(※)総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)8月分(2022年9月20日公表)
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士