更新日: 2024.10.10 働き方
参勤交代は片道「5億円」!? 過酷でブラックって本当? どんな費用がかかってたの?
そこで、今回は参勤交代にかかった金額とともにその内訳について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
参勤交代は1年おきに江戸と自国を行き来する制度
大名は、大きく「譜代大名」と「外様大名」の2種類に分かれていました。譜代大名は1600年の「関ケ原の戦い」以前から徳川家に仕えていた大名、外様大名は譜代大名以外の大名のことです。徳川家は家臣との絆が強く、昔から仕えている譜代大名は外様大名と比較して優遇されていました。
・参勤交代の経路は幕府から指示がある
参勤交代は1年おきに江戸と自国に交互に住んで仕事をする制度です。参勤交代をする際、時期と経路を幕府の指示に従わなければなりませんでした。時期は譜代大名が6月(関東周辺の譜代大名は8月)、外様大名は4月と決められており、早めに参勤交代する旨を知らせて時期と経路の確認が必要だったといわれています。
経路を決めるのは道中奉行で、参勤交代の時期に各大名行列で街道が混雑しないように調整をしていました。参勤交代は原則1年おきでしたが、例外として、江戸に住んでいる譜代大名の参勤交代は不要、江戸に近い関東の大名は半年おき、遠方の藩は3年や6年に1度と考慮されていたといわれています。
江戸から最も遠い藩の参勤交代にかかる費用は片道約11億円!
江戸と自国との行き来にかかる費用は江戸からの距離があったり、禄高(ろくだか)が高かったりする大名ほど高額でした。
・参勤交代の費用は5億円前後になるのも珍しくなかった
一例として、加賀藩は加賀(石川県)から江戸まで約2週間かかり、1808年(文化5年)の参勤交代時にかかった費用は銀が332貫466匁(もんめ)ほど(金5541両)という記録が残っています。
この頃にあった小判として元文小判があり、含まれている金は約8.6グラムです。貴金属地金等の事業を展開している田中貴金属工業株式会社によると、2023年2月24日時点の金の買い取り価格は8619円となっています。
金1グラムの価値を8600円として元文小判1枚の価値を算出すると「金1グラムの単価8600円×金の含有量8.6グラム」で7万3960円です。参勤交代時にかかったのは5541両なので「7万3960円×5541両」で4億9812万2360円であることがわかります。
ちなみに、遠方である薩摩藩の参勤交代では江戸まで2ヶ月ほど、1万5000両かかったと記録されており、これを同じく換算すると11億940万円です。参勤交代時は江戸に滞在する費用もかかるため、各藩にとっては徐々に財政圧迫につながっていきました。
参勤交代の費用内訳は?
参勤交代の際にはいわゆる大名行列を作って江戸まで歩いていましたが、例えば、石川県の加賀藩・前田氏は参勤交代の際に4000人で行列を作っていた記録が残っています。大名行列は「見栄の張り合い」という側面もあり、自国を離れてしばらくは大名行列のために一時雇用した農民などが参加し、ある程度移動すると「御役御免」となりました。
さらに、江戸に近くなると再び行列用に雇用した人員が参加し、大行列となります。そのため、「人員費」は参勤交代の費用の中で上位に入るコストでした。
・交通費や人件費以外に「おみやげ代」も必要だった
参勤交代の費用内訳として、ある年の鳥取藩のケースを見てみましょう。鳥取から江戸までは21泊22日間の旅でした。費用総額は1957両。内訳は足軽への「給料」、「馬代」や「運賃」、「宿泊費」、さまざまな物品の購入費などがかかっています。
将軍や幕府要人への「おみやげ」、道中にある国の藩主への「贈答品」などの費用も必要です。旅には藩主専用の料理人や料理人愛用の調理器具、米や調味料、水まで自国から持参しています。そのほか、節約するために、ろうそくやトイレ、風呂、漬物樽なども持参していたようです。
参勤交代時は費用節約の工夫がされていた
江戸時代の大名の義務だった参勤交代。1年おきに江戸と自国を行き来する際には、ばく大な費用がかかり、遠方の藩は11億円に及んだ記録もあります。人件費、運賃、宿泊費、おみやげ代などさまざまな費用が必要になるため、徐々に財政を圧迫する結果となりました。
旅の経路も指定されるので、参勤交代の費用を節約するために各大名はそれぞれ工夫していたとされています。出張旅費や交通費が会社から支給される会社員、国費(税金)で東京と選挙区を往来できる国会議員と比べると、自己負担を強いる大名行列は、ブラック過ぎて現代人には受け入れがたいイベントかもしれません。とはいえ、時代を問わず、節約は大切なことであるといえるでしょう。
出典
貨幣博物館 金貨の改鋳
貨幣博物館 江戸時代の1両は今のいくら?昔のお金の現在価値
田中貴金属工業株式会社 金価格推移
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部