残業代割増率25%と26%では、どのくらい残業代に差がつく? 「1%」の重みを年単位で比較してみた
配信日: 2023.03.09 更新日: 2024.10.10
今回は、割増率1%の重みを確認するため、残業代の割増率が25%の場合と26%の場合で比較してみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
残業代の割増率は原則25%
雇用形態にかかわらず、1日8時間、週40時間を超えて働いた場合は通常の賃金に加えて25%上乗せされた割増賃金、いわゆる残業代が支払われます。例えば、時給1000円で働いている方が1時間残業をした場合、通常の賃金1000円に割増賃金250円が上乗せされ、1250円の残業代が支払われるという具合です。
なお、会社の所定労働時間が8時間未満であるような場合は、それを超えて仕事をしても1日8時間、週40時間を超える時間までは法律上の残業とはならず、残業代が支払われないこともあるためご注意ください。
残業代の割増率は法律で25%以上とされています。ほとんどの会社では25%と定めていますが、これを上回る割増率にすることも可能です。
残業代割増率の1%の重みを確認
では、残業代割増率の1%の重みを年単位で確認していきましょう。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和4年11月分結果速報」によれば、平均残業時間は月10.5時間となっています。
分かりやすくするため、時間当たりの給与1000円の方が毎月10時間、年間120時間残業したと仮定し、残業代の割増率が25%と26%の場合で比較していきます。
割増率25%の場合における1時間当たりの残業代は1250円です。1年間での残業代は15万円となり、5年間続くと75万円、10年間続くと150万円です。一方、割増率26%の場合における1時間当たりの残業代は1260円です。1年間での残業代は15万1200円となり、5年間で75万6000円、10年間だと151万2000円です。
両者を比較すると、1年間で1200円、5年間で6000円、10年間で1万2000円の差がつきます。
【図表1】
年数 | 割増率25% | 割増率26% | 差額 |
---|---|---|---|
1 | 15万円 | 15万1200円 | 1200円 |
2 | 30万円 | 30万2400円 | 2400円 |
3 | 45万円 | 45万3600円 | 3600円 |
4 | 60万円 | 60万4800円 | 4800円 |
5 | 75万円 | 75万6000円 | 6000円 |
6 | 90万円 | 90万7200円 | 7200円 |
7 | 105万円 | 105万8400円 | 8400円 |
8 | 120万円 | 120万9600円 | 9600円 |
9 | 135万円 | 136万800円 | 1万800円 |
10 | 150万円 | 151万2000円 | 1万2000円 |
11 | 165万円 | 166万3200円 | 1万3200円 |
12 | 180万円 | 181万4400円 | 1万4400円 |
13 | 195万円 | 196万5600円 | 1万5600円 |
14 | 210万円 | 211万6800円 | 1万6800円 |
15 | 225万円 | 226万8000円 | 1万8000円 |
16 | 240万円 | 241万9200円 | 1万9200円 |
17 | 255万円 | 257万400円 | 2万400円 |
18 | 270万円 | 272万1600円 | 2万1600円 |
19 | 285万円 | 287万2800円 | 2万2800円 |
20 | 300万円 | 302万4000円 | 2万4000円 |
※筆者作成
このように、ほんの1%であっても年月を重ねると徐々にその差は大きなものになっていきます。
時給が2000円になると…?
時給1000円と新卒程度の収入に相当する額では、割増率による残業代の差にもさほど違いがみられないと思う方もいらっしゃるでしょう。そこで、次は時給2000円で計算してみましょう。時給2000円であれば、単純計算で年収400万円前後に相当します。
割増率25%の場合における1時間当たりの残業代は2500円です。1年間での残業代は30万円となり、5年間続くと150万円、10年間続くと300万円です。一方、割増率26%の場合における1時間当たりの残業代は2520円です。1年間での残業代は30万2400円となり、5年間で151万2000円、10年間だと302万4000円です。
両者を比較すると、1年間で2400円、5年で1万2000円、10年間で2万4000円の差がつきます。20年間積み重なると、その差は4万8000円にもなります。
【図表2】
年数 | 割増率25% | 割増率26% | 差額 |
---|---|---|---|
1 | 30万 | 30万2400円 | 2400円 |
2 | 60万 | 60万4800円 | 4800円 |
3 | 90万円 | 90万7200円 | 7200円 |
4 | 120万円 | 120万9600円 | 9600円 |
5 | 150万円 | 151万2000円 | 1万2000円 |
6 | 180万円 | 181万4400円 | 1万4400円 |
7 | 210万円 | 211万6800円 | 1万6800円 |
8 | 240万円 | 241万9200円 | 1万9200円 |
9 | 270万円 | 272万1600円 | 2万1600円 |
10 | 300万円 | 302万4000円 | 2万4000円 |
11 | 330万円 | 332万6400円 | 2万6400円 |
12 | 360万円 | 362万8800円 | 2万8800円 |
13 | 390万円 | 393万1200円 | 3万1200円 |
14 | 420万円 | 423万3600円 | 3万3600円 |
15 | 450万円 | 453万6000円 | 3万6000円 |
16 | 480万円 | 483万8400円 | 3万8400円 |
17 | 510万円 | 514万800円 | 4万800円 |
18 | 540万円 | 544万3200円 | 4万3200円 |
19 | 570万円 | 574万5600円 | 4万5600円 |
20 | 600万円 | 604万8000円 | 4万8000円 |
※筆者作成
5年間で1万円を超えるとなると、割増率の1%の差が実感できるのではないでしょうか。
残業代が支払われないときは?
1%の重みを知ると、25%という割増率の重みにも気づけます。特に、残業しても残業代が支払われないという方は、残業代がどれほど重要なのか痛感していらっしゃるのではないでしょうか。
もし、残業代が支払われずに困っている場合は、弁護士や労働問題の専門家である社労士に相談してみてください。また、勤務地を管轄する労働基準監督署のほか、夜間や土日祝日も受け付けている厚生労働省の労働条件相談「ほっとライン」(0120-811-610)に相談することも有効です。
一人で悩むより、上記のような専門家や機関の助けを借りて解決策を見いだしましょう。
残業代の割増率は1%変わるだけで最終的に数千円から数万円の差になる
残業代の割増率は重要なものです。割増率25%と26%とでは、表面上の数字ではほんの1%しか違いはありませんが、年月を重ねると最終的に万単位の金額の差が出てきます。
残業代を受け取ることは労働者の権利です。残業代の割増率における1%の重みが分かると、残業代や残業そのものに対して、今までとは違った見方をすることができるのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年11月分結果速報
厚生労働省 労働条件相談「ほっとライン」(Working Hotline)
執筆者:柘植輝
行政書士