更新日: 2024.10.10 働き方
2023年4月から中小企業労働者の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げに! 残業代はどのくらいになる?
これにより、大企業との間で存在していた割増賃金率の差が是正され、同じ基準が適用されることになります。しかしながら、割増賃金率が上がるといっても、具体的にどの程度変更になるのかピンとこない人も多いでしょう。
そこで本記事では、2023年4月から中小企業労働者の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、どの程度引き上げられるのかについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
中小企業労働者の時間外労働に関する現状と課題
労働者が時間外労働をした場合の割増賃金率は、労働基準法によって定められています。しかし、図表1のように中小企業と大企業の間で割増賃金率が異なっている点が問題視されていました。
【図表1】
1ヶ月の時間外労働時間 | 60時間以下 | 60時間超 |
---|---|---|
大企業 | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 25% |
同じように残業をした場合でも、中小企業勤務であれば残業代が少なく、手取りにも差が出ていました。
2023年4月からの改正労働基準法の概要
2023年4月からの改正労働基準法では、図表2のとおり、中小企業労働者が月60時間を超える時間外労働をした場合、割増賃金率が引き上げられます。大企業と同じ基準になり、60時間超の時間外労働に対する割増賃金率は50%になります。
【図表2】
1ヶ月の時間外労働時間 | 60時間以下 | 60時間超 |
---|---|---|
大企業 | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 25%→50% |
割増賃金率がこれまでよりも高くなるため、中小企業労働者の残業代も増加することになります。また、これまでとは残業代の計算式が変わるため、担当部署では対応が必要となります。
休日労働との関連性
月60時間を超える時間外労働が深夜に行われた場合、賃金がさらに加算されます。
・深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%の割り増し
ただし、法定休日に行った労働時間は、月60時間の時間外手当の計算には含まれず、割増賃金率は35%です。法定休日以外の休日に行った労働時間は、時間外手当の計算対象となります。
法改正によって残業代はどのくらいになる?
では、労働基準法の改正により、残業代がどの程度変わるのかを計算します。図表3は毎月の残業時間が75時間、基本給+諸手当が40万円、1ヶ月平均所定労働時間数が160時間の場合です。
【図表3】
残業代 | |
---|---|
2023年3月31日まで | (40万円÷160)×1.25×75=23万4375円 |
2023年4月1日から | (40万円÷160)×1.25×60+(40万円÷160)×1.5×15 =24万3750円 |
このように、60時間を超えた時間外労働分は、時間外手当が引き上げられます。
労働基準法が改正される背景や影響とは
中小企業で時間外労働の割増賃金率が引き上げは、労働基準法の改正によるものですが、このような改正に至ったのには、どのような背景があるのでしょうか?
働き方改革の一環である
働き方改革とは、労働者それぞれが1人ひとりの事情に応じた柔軟な働き方を選択できる社会を実現するための、政府の取り組みです。2019年までは、時間外労働には上限時間が特に決められていませんでした。
そんな中、労働基準法の改正で、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から罰則付きの労働時間規制が導入されました。
そしてさらに2023年4月から、中小企業で時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。労働者にとってよい職場環境を実現するために、働き方改革によってこのような改正が行われているのです。
業務効率化が求められる
これまでと同じように従業員が残業していては、企業にとっては人件費の負担が増えることになり、業務効率化・生産性向上に取り組まざるをえなくなるでしょう。
中小企業事業主に対して、「業務改善助成金」や「キャリアアップ助成金」といった、生産性を向上させ、労働時間を短縮するための取り組みに必要な費用の一部を助成する制度があります。詳しくは厚生労働省の「働き方改革特設サイト」を確認してみてください。
中小企業労働者の時間外労働割増賃金率引き上げは2023年4月から! 早めに業務効率化に取り組みましょう
2023年4月からの改正労働基準法において、中小企業労働者でも時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。これに伴い、大企業との格差が是正され、同じ基準になります。
これまでと同じように働いていると企業は人件費の負担が増えますので、生産性の向上が求められます。国などが生産性の向上に取り組んだ企業を対象に助成する制度もありますので、企業としては活用しない手はありません。
中小企業の60時間超の時間外労働に対し、50%の割増賃金率が適用される改正労働基準法は2023年4月からです。少しでも人件費の負担を増やさないよう、生産性の向上に取り組むことが求められます。
出典
厚生労働省 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
厚生労働省 働き方改革特設サイト 時間外労働の上限規制
厚生労働省 働き方改革特設サイト 助成金のご案内
厚生労働省 「働き方改革」の実現に向けて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部