更新日: 2023.06.23 働き方

「有給休暇の消化期限が迫ってます!」労務から言われたけど、有休に期限なんてあるの…?

「有給休暇の消化期限が迫ってます!」労務から言われたけど、有休に期限なんてあるの…?
有休が一定の期間を迎えると消滅してしまうことを知っていますか? 意外と有休を使いきれずに、毎年繰り越しを続けているという方は、少なくないようです。もしかすると、気づかないうちに有給休暇が消えていっているかもしれません。
 
そこで、今回は有給休暇の消滅について解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

有給休暇は2年で消滅する

有給休暇は6ヶ月間勤務すると10日付与され、その後1年経過ごとに11日付与、さらに1年経過で12日付与と、年々付与する日数が増え続け、6年6ヶ月経過以降は毎年20日付与されるようになります。
 
図表1

出典:厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説
 
そして、有給休暇には繰越制度があります。当年に発生した有給休暇のうち、使い切ることができなかった部分は翌年に繰り越していくことができます。しかし、この繰り越しは永遠というわけでもありません。
 
有給休暇の請求権は2年と定められており、それを過ぎると時効によって消滅してしまいます。時効によって消滅してしまった有給休暇は労働者の側から請求して取得することができなくなってしまいます。
 
有給休暇は休んでいても給与が発生する権利です。1日当たりの賃金が2万円の方が有給休暇を1日消滅させてしまうと、「働かずに2万円を得る権利」を失ってしまっていることになります。
 

有給休暇の取得を会社が拒否することはある?

急に有給休暇の消滅が近づいていると言われても、突然有給休暇を取得すると言い出したら、会社がそれを拒むのではないかと心配される方もいらっしゃるでしょう。
 
その点、有給休暇の取得は労働者の自由であり、会社は原則としてその取得を拒むことができないとされています。そのため、有給休暇が消滅しそうだからと消滅前に有給休暇を急いで取得することも法的には問題ありません。
 
しかし、有給休暇を取得することで会社の業務に支障の出る場合があります。そういった場合に備えて、会社には有給休暇の取得について時季変更権が与えられています。会社が指定する時期については、できる限り労働者の希望に沿った時期とすることが求められていますが、会社からは取得時期について自身の希望している時期から変更される場合があることは知っておきましょう。
 

有給休暇の取得によって不利益が生じる可能性は?

有給休暇の取得によって不利益が生じることは、基本的にないと考えてもいいでしょう。むしろ、有給休暇を全く取得しない労働者の方が適度に有給休暇を取得する方よりも、会社によっては困りものという考え方もあります。
 
なぜなら、2019年4月以降、雇用主には労働者に対して有給休暇を取得させる義務が課せられているからです。具体的には、年に10日以上有給休暇が付与される労働者に対して有給休暇の付与日から起算して、次回の有給休暇付与までの間に年5日以上有給休暇を付与させなければならないとされています。
 
図表2

出典:厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
 
もし、年5日の有給休暇を取得させなかった場合、雇用主には30万円以下の罰金が科される可能性があります。これは労働者1人につき1つの罰が存在するとされるため、労働者が有給休暇を全く取得しないとなれば、雇用主も困ってしまいます。
 
このように労働基準法の観点から見ても、適切に有給休暇を取得することは雇用主も助かるのです。
 

有給休暇の取得は適切に行うべき!

有給休暇は2年で時効によって消滅してしまいます。せっかく休みながら賃金を得られる権利を有しているのですから、消滅前に有効に使いたいものです。有給休暇を適切に取得することで、雇用主は法令を遵守でき、労働者はリフレッシュして効率よく仕事に向き合うことができるようになります。
 
もし、労務担当から有給休暇の消滅について話があったときは、時期を考えながら有給休暇を取得するようにしてみてください。
 

出典

厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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