更新日: 2023.08.12 働き方

働くことの意味、労働契約の意味とは?

執筆者 : 三藤桂子

働くことの意味、労働契約の意味とは?
学生さんにとって卒業の学年になると就職活動をはじめ、この時期、すでに内定が決まり、あとは卒業に向け最後の学生生活を謳歌(おうか)している人、社会人1年生に向けて期待と不安を抱きながら過ごしている人などが多いのではないでしょうか?
 
本稿では働くことについてわかりやすく解説します。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

そもそもなぜ働くの?

皆さんはなぜ働くのでしょうか。理由はいろいろあるかと思いますが、日本国憲法第27条では「勤労の権利を有し、義務を負う」とあります。つまり働く義務があるということです。
 
働く主な目的として次のようなものがあると考えられます。

<働く主な目的>

1 収入を得るため
2 社会に貢献するため
3 自分自身が成長するため
4 好きなことをやるため
5 高い地位を得るため
6 人生を安定させるため

皆さんの考えにあてはまる項目がいくつあったでしょうか。働くことは自身の生活を維持するため、すなわち働くことで収入を得て自立した生活をすることです。そして就職活動をしながら、自身のやりがいや成長できる会社を選択することで個性を発揮し、社会とのつながりを持ち、社会貢献へつながります。
 

【労働契約を結ぶということ】

労働契約は、会社(使用者)と労働者と両者が合意をすると契約は成立します。契約に基づき、労働者は労働し、会社は労働者に対して賃金を支払う義務を生じます。
 
労働契約が成立すると、会社は賃金(給与)を支払うほか、職場環境を安全に保ち、やむを得ない事由を除き、解雇を回避する努力をするなどの義務があります。一方、労働者は、契約時間内は誠実に働くことのほか、就労時間中は仕事に専念し、会社の秘密を漏らさないなどの義務があります。お互いが労働関係の法律をはじめ、ルールを守って仕事をしなければならないのです。
 
例として労働時間について考えてみましょう。
 
A会社では、1日の労働時間は7時間という労働契約を結んでいます。労働基準法では1日8時間、1週40時間と定められています。労働時間は、一般的に所定労働時間、所定外労働時間、法定労働時間、法定外労働時間に大別されます。
 
A会社において7時間超えて働く労働は残業となりますが・・・

所定労働時間:7時間
所定外労働時間:7時間を超え8時間までの1時間
法定労働時間:8時間
法定外労働時間:8時間を超えた時間

所定外労働時間は残業となりますが、この1時間は割増賃金の支払いは生じません。ただし、1日8時間を超え就労すると8時間超えたところから法定外労働時間となり、割増賃金の支払いが生じます。
 
労働時間について、労働基準法の中に下記のように定められています。労働基準法は労働条件に関する最低基準を定めた法律です。

(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

しかしながら、職種や業務内容によって法定時間を超えて働くときもあります。その際は、書面による労使協定(36協定)を締結し、これを行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出た場合に、時間外労働や休日労働をすることができるのです。
 
時間外や休日に仕事をする可能性がある場合、契約書にその旨記載し、実際に仕事をした場合には、会社は労働者に割増賃金を支払うことになります。このように、会社と労働者がお互いルールを守って働くことが必要です。
 

契約は口頭で成立する

契約は、原則として口頭で正式に成立します。労働契約も口頭だけで契約は正式に成立するのです。しかしながら、“言った・言わない”で後にトラブルにならないためにも書面で契約することをお勧めします。
 
会社は労働契約が成立したら、主要な労働条件を労働者に明示することを使用者に求め、労働条件通知書を労働者に交付することが義務付けられています。
 
労働条件通知書の交付は、自分の労働条件を書面で確認できるため、労働者は納得・安心して働くことができるとともに、労使間のトラブルを防止できます。労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次のとおりです。

1.労働契約の期間に関する事項
2.就業の場所および従業すべき業務に関する事項
3.始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における、就業時点転換に関する事項
4.賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金等を除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払の時期ならびに昇給に関する事項
5.退職に関する事項(解雇の事由を含む)
6.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
7.臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与およびこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
8.労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
9.安全および衛生に関する事項
10.職業訓練に関する事項
11.災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
12.表彰および制裁に関する事項
13.休職に関する事項

(引用:労働基準法施行規則第5条第1項)
 

まとめ

労働契約に関しては、労働基準法や労働契約法に定められており、会社と労働者、お互いが合意し、ルールを守って働くことが義務付けられています。
 
特に、これから就職される人など、お互いの信頼関係やトラブル回避のためにも知っていていただきたいです。
 

出典

e-GOV 法令検索 昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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