更新日: 2024.10.10 働き方
【手取り20万円・30代非正規雇用】このままだと年金だけでは生きていけず、「老後破産」も……?
一方で、非正規雇用であり、30代でもいまだに手取り20万円という方もいます。そういった方は将来、老後破産するしかないのでしょうか。非正規雇用の将来について考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
非正規雇用の問題点のひとつは賃金の少なさにある
非正規雇用における大きな問題点のひとつに、昇給がしづらいという問題があります。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によれば、男女計の非正規雇用労働者(正社員・正職員以外)の賃金は25歳から29歳のときで、20万4900円となっています。
一応、55歳から59歳になるころには21万500円と微増していますが、ほぼ横ばいに等しい状況です。非正規雇用は昇給がほぼないものとして考えてよいでしょう。
また、非正規雇用の労働者は正規雇用の労働者に比べて賃金自体も少ないようです。同統計によれば、大企業の賃金を100とすると、非正規雇用労働者の賃金は男女計で67程度になるようです。
賃金が少ないと受け取る年金額も小さくなる
非正規雇用の労働者であっても、基本的に手取り20万円を得られるほど働いているのであれば、多くの場合、厚生年金に加入していることになります。将来受け取る厚生年金の額は、上限こそあれ基本的には収入に比例して高くなっていきます。手取り20万円というと、毎月の給与は総支給額で24万円から25万円程度になるでしょう。
仮に、1991年7月1日生まれの方が、総支給25万円(年収300万円)の給与で23歳から60歳まで非正規雇用として働いた場合の、65歳から受け取れる年金の見込み額は年間141万円です。
※20歳から22歳は学生で国民年金に加入していたと仮定して厚生労働省の公的年金シミュレーターにて試算
この見込み額を月額換算すると11万7500円です。高齢単身無職世帯の月の支出が15万5495円となっている(総務省の「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」参照)ことを考えると、年金だけで生活するのは厳しいといわざるを得ないでしょう。
老後破産を過度に恐れる必要もない
手取り20万円のまま働きつづけることが前提にはなりますが、非正規雇用労働者であっても必ず老後破産するとは限りません。65歳から「家計調査報告」の統計どおり毎月15万5495円の支出額で生活するとして、毎月11万7500円の年金で不足するのは3万7995円です。この金額であれば、資産運用にて十分カバーできます。
30代からでも毎月3万円を、つみたてNISAにて年利5%で運用ができれば、25年間で元利合計の資産額はおよそ1786万5000円となります。毎月3万8000円ずつ切り崩しても38年以上生活できる計算になります。
毎月3万円の積み立てが難しい場合は積立金額を2万円に引き下げて、30年間に運用期間を延ばせば、資産総額はおよそ1664万5000円となります。決して裕福ではありませんが、大病を患うなどよほど大きな出費が生じない限り、老後破産にまでは至らないでしょう。
また、老後もシルバー人材や再就職など、何らかの形で毎月数万円でも得られることができれば、資産運用ができなくとも、老後破産に至らない程度に生活を維持することは可能です。
正規雇用や自営業者、起業を目指すことも検討を!
まだ30代であれば、非正規雇用から正規雇用へ転職することも不可能ではありません。30代で非正規雇用といえども、今まで経験してきた業務内容を基に転職活動を行えば、正規雇用として働けるようになることもあります。
他にも、非正規雇用として働きながらできる範囲で副業を行い、それを元に自営業へ移行したり起業して経営者になったりする道もあります。
まだ30代なら、非正規雇用でも前向きにできることからやっていくべき
たとえ30代で手取り20万円の非正規雇用労働者であっても、年金だけでは生きていけず老後破産するしかない、というわけではありません。正規雇用を目指して転職活動を行う、つみたてNISAを利用した資産形成をコツコツ行う、といった方法で老後破産を防ぐことができます。
30代であれば、非正規雇用として働きつつ、副業や起業といった方法で自営業者や経営者になる道もあり、まだ将来を悲観するには早い年齢です。
老後が不安であれば、まずはできることをひとつずつ、ゆっくりでも老後に向けて実践していってください。そうすることで、年金だけでは生活できずとも破産にまでは至らない、穏やかな老後を過ごすことができるでしょう。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査の概況
執筆者:柘植輝
行政書士