更新日: 2024.10.10 働き方
教員は「月50時間」の残業でも手当なしで超ブラック!?「過労死ライン」を超えても残業代が出ないワケとは
公立学校で働く教員は、残業してもほとんど残業代が支払われません。文部科学省の調査によると、労働時間が50時間を超える教員は60%以上にも上ります。
それだけ過酷な現場であるのに、なぜ教員だけ残業が適用されないのか。日本の働き方への疑問を交えつつお伝えしていきます。
執筆者:北川和哉(きたがわ かずや)
FP2級
教員はブラックといわざるを得ない現状
「教員って本当にブラックなの?」近年のニュースを耳にして、このように思う人も多いのではないでしょうか。残念ながら、うそだとはいい切れないのが事実です。
イメージで語るのではなく、志望者に関するデータを見ていきましょう。図表1は、小学校教員の受験者数ですが、ここ10年ほどでずっと右肩下がりで、競争率も半分近くにまで落ち込んでしまっています。就職先としての「教員」は人気が下がっていることがうかがえます。
【図表1】
文部科学省 公立学校教員採用選考試験の実施状況より筆者作成
教員がブラックといわれる理由は「残業代が出ないこと」
ひと言で「ブラック」といっても、その理由はさまざまです。教員の場合でいうと、部活動で忙しい、保護者からのクレーム対応がつらい、人材不足で一人ひとりに仕事が集中しているなどの問題が挙げられます。
中でも大きいのは、残業代が出ないことでしょう。教員の残業代が出ないのは、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の第3条第2項によって「教員については残業代および休日勤務手当は支払われない」とされているためです。
実際には残業代の代わりに「教職調整額」が支給されますが、金額は給料月額のわずか4%で、残業時間には明らかに見合っていません。図表2の通り、小・中学校において月の残業時間が50時間を超えている教員は、全体の60%にも上ります。
【図表2】
文部科学省 教員勤務実態調査(令和4年度)
この実態を見て、教員の残業が妥当でないと異議を唱えるのは、なんらおかしいことではありません。
ブラックでも教員を辞めない人も。しかしその理由は……?
ここまで紹介してきた通り、教員は残業代が支払われない上に勤務内容も過酷で、ブラックな現場だといえるでしょう。しかし、中には「ブラックならなぜみんな辞めないのか?」と疑問を抱く人もいるはずです。
理由は、転職しづらい日本の労働環境にあります。公立学校の教員はつらい仕事とはいえ、公務員であるという「社会的信用」があるため、他に就職先が決まっていない限りなかなか辞職を決意できません。そもそも、日々の職務に忙殺されて、転職を考える時間すら与えられない人も多いでしょう。
いずれの理由も、教員という仕事が素晴らしいから辞めないのではなく、辞めるきっかけがないなどの消極的な理由です。海外のように、転職が当たり前という風潮ができていれば、ここまで教員の働き方に関する問題が放置されてこなかったのではないかと考えられます。
教員はブラックだが、未来はないのか?
教員は決してブラックな側面だけではありません。子どもと触れ合うのが好きな人には楽しく感じられますし、部活動の顧問など他では体験できない仕事もできます。とはいえ、労働環境に問題がある事実は変わりません。実際に、近年では教員不足が顕著になっており、採用試験の倍率は下がってしまっている状態です。
一方で、このまま人材不足が進めば、労働環境が見直される可能性もあります。建設業界では、3K(きつい、危険、汚い)のイメージを払拭(ふっしょく)する取り組みが進められています。また、ドライバーは時間外労働の上限規制が適用され、残業に対して罰則が課せられるようになりました。
民間企業と公務員である公立学校の教員を同列に語ることはできませんが、今後人材不足によって残業が見直される、もしくは適切な残業代が支払われるようになることを期待したいところです。
出典
文部科学省 公立学校教員採用選考試験の実施状況
文部科学省 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第10回)・教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第11回)合同会議 配付資料 資料4‐2 教職調整額の経緯等について
文部科学省 教員勤務実態調査(令和4年度)
執筆者:北川和哉
FP2級