インボイス制度で「電気料金」が上がる? 関係ないと思っていたのになぜ?「値上げのカラクリ」を解説

配信日: 2023.10.31 更新日: 2024.10.10

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インボイス制度で「電気料金」が上がる? 関係ないと思っていたのになぜ?「値上げのカラクリ」を解説
インボイス制度で影響を受けるのは個人事業主などで、会社員には関係ないと思っている人も多いかもしれません。
 
しかし、インボイスの影響で電気料金が値上がりすることをご存じでしょうか。なぜインボイス制度で電気料金が値上がりするのか、本記事では値上げの理由を解説します。
山根厚介

執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

インボイス制度で電気料金が値上がりする

2023年10月からスタートしたインボイス制度は、「適格請求書(インボイス)」を使わなければ消費税の仕入税額控除ができなくなる制度です。これにより、今まで免税事業者だった個人事業主などに大きな影響が出ています。
 
そうした中で、インボイス制度により電気会社の消費税の負担額が増えたため、来春から消費者の負担額が1キロワットアワー当たり0.007円程度、値上がりします。
 
1キロワットアワー当たり0.007円の値上げは、1ヶ月当たりの電気料金にどの程度影響するのでしょうか。環境省の調査によると、1世帯当たりの年間電気消費量の全国平均は4258キロワットアワーです。1ヶ月当たりにすると約355キロワットアワーのため、約2.5円の値上がりとなります。
 
こうして見るとたいした金額ではないかもしれませんが、私たちの知らないうちにいつの間にか値上がりが決まっていることは問題なのではないでしょうか。
 

インボイス制度と電気料金にどういう関係がある?

なぜ、インボイス制度によって電気会社の負担が増えるのでしょうか。そこには「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」という制度が関係しています。
 
最近では、一戸建てで太陽光発電を行っている世帯も増えてきましたが、電気会社はFITによって、一般家庭などにおいて太陽光発電で発電された余剰電力を一定価格で買い取らなければなりません。
 
電力を購入する際に電力会社は消費税を支払っています。従来であれば消費税を納税する課税事業者は、自分が納めなければならない消費税からこうした仕入れなどで支払った消費税を差し引くことができました。これは仕入税額控除という仕組みです。
 
しかしインボイス制度によって、仕入れ先も課税事業者でなければ仕入税額控除ができなくなりました。一般家庭の多くは課税事業者ではなく免税事業者のため、余剰電力の買い取りで支払った消費税を差し引けなくなったのです。
 
FITによる買い取りは義務のため、相手が免税事業者だとしても買い取らざるを得ず、電気会社に新たな負担が生じます。その負担額が2023年度分(2023年10月~2024年3月)で約58億円になるため、その分を値上げでまかなうことになったのです。
 
これについては、「一般の課税事業者はこのような負担の転嫁ができないのに、なぜ電気会社だけ?」という声がある一方で、「電気会社は買い取りが義務のため仕方がない」という意見もあるようです。
 

インボイス制度での値上げは今回だけ?

今回の電気代の値上げ金額は2023年度分のもので、2024年度以降についてはまだ決まっていません。ただ、現在はインボイス制度が始まったばかりで、経過措置が設けられています。
 
具体的には2026年9月までは免税事業者から仕入れた消費税額の80%、2029年9月までは50%が控除可能です。経過措置の割合が変わる2026年度以降や、経過措置がなくなる2029年度以降はさらに値上がりする可能性も考えられます。
 

まとめ

インボイス制度に一見関係がなさそうな会社員であっても、電気料金の値上げに見られるようにインボイス制度による影響が生じています。今後も、思わぬところで影響が及ぶ可能性もあるため、インボイス制度の動向には注意しておいたほうがよいでしょう。
 

出典

e-Govパブリック・コメント 「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等の概要」に関する意見公募の実施結果について(別紙)
環境省 家庭のエネルギー事情を知る
衆議院 第211回国会 財務金融委員会 第3号(令和5年2月17日(金曜日))
国税庁 消費税の軽減税率制度・適格請求書等保存方式(インボイス制度)
 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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