更新日: 2024.10.10 働き方
【実録】「退職して逃げたら人生終わりだ!」なぜ人は「ブラック企業」から抜け出せないのか? 8年間の勤務経験をもとに筆者が解説
そんな会社は「辞めて抜け出せばいい」と思えますが、多くの人がブラック企業からなかなか抜け出せないのが実情です。筆者も経験者なので、よくわかります。この記事では、筆者の経験をもとに、ブラック企業から抜け出せない理由を解説し、抜け出すにはどうしたらいいかを教えます。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
そもそもブラック企業とは
「ブラック企業」に明確な定義はありませんが、厚生労働省によると、一般的な特徴として次のようなものがあります。
●労働者に極端な長時間労働やノルマを課す
●残業代を支払わない
●ハラスメントが横行する
筆者もブラック企業に勤務した経験があり、平均的に月150時間以上の残業や休日出勤を8年間続けました。残業代も休日出勤の手当などもなく、友人との交流も制限された生活でしたが、実はブラック企業だったと気づいたのは退職後、友人に前職について話したときでした。当時は、どこの会社もこんなものだと思っていたのです。
ブラック企業とわかっていながら抜け出せない理由は大きく分けて、生活不安や自信のなさなど労働者側の要因と、退職届が受理されないなど会社側の要因があります。
労働者側の要因
ブラック企業をやめられない理由の多くは、労働者側の要因によるものです。
もちろん労働者側の要因とはいっても、そもそもは会社や上司によってつくられた現状なので労働者が悪いというものではありません。
●転職活動が不安
●生活が困窮する
●同僚や関係者に迷惑がかかる
●退職は逃げるようで自分を許せない
●転職を考える時間や余裕がない
●労働環境は良くないが、仕事自体は好き
●家族やパートナーが許してくれない
日本労働調査組合が2021年に実施した「ブラック企業に関するアンケート調査」でも、辞められない理由のうち転職活動への不安が41.7%、生活が困窮するとの理由が38.9%をとなっています。
筆者もまさに調査結果のとおり、転職活動への不安と生活が困窮するとの恐れから、ブラック企業を辞められない状態が続きました。みなし残業代として40時間まで支給されていましたが、残業時間は軽く150時間を超えており、1ヶ月の休日は2日あれば良いほうでした。
しかしこれらは「業務時間内でやるべきことを、上司にお願いして業務時間外や休日にさせてもらう」とのスタンスだったため無給でした。
そのため手取りの給料は名古屋市内での一人暮らしにはつらい13万円程度。働き続けても深夜のコンビニ代や終電に間に合わなかったタクシー代がかさむばかりで、転職活動する時間も心の余裕もありませんでした。
さらにはタイムカードを時間までに押し忘れたり、インフルエンザなどで休んだりしたら罰金1万円を徴収され、貯蓄どころか生活のための借金をしていた時期もありました。
会社側の要因
会社側の言動が要因となって、ブラック企業を辞められないケースは以下のようなものが考えられます。
●会社側の執拗な引き止めや脅迫、退職届の不受理など
筆者の場合も、ブラック企業に勤めた8年間で5回程度は退職を申し出たことがありました。ブラック企業という認識はありませんでしたが、それでも心身ともに悲鳴をあげていたのです。
会社側から、世間一般的な「○○月まで忙しいからいてほしい」といった優しい引き止めはありません。「ここで辞めたら人生終わり、逃げ続ける人生になる」「ここより条件のいい職場なんてない、以前辞めた△△さんも今は苦労している」など脅迫のような説得を受け、最終的には「逃げずにがんばります」と返答してしまうのでした。
ブラック企業だと思ったら早めに転職活動を
ブラック企業は年数が経てば経つほど抜け出しにくくなります。人間には「サンクコスト効果」が無意識にあります。サンクコスト効果とは、成果を回収できないのに、それまでにかけた費用や時間がもったいなく感じて辞められない状態に陥ることです。
筆者の勤務していたブラック企業でも、少しずつ労働環境の改善はおこなわれているようです。しかし思いきって労働者側が会社を変えれば、数年も待たずに、労働環境を改善できます。転職活動をおこなうことにリスクはありません。ブラック企業だと感じたら早めに行動しましょう。
出典
厚生労働省 労働条件に関する総合情報サイト 確かめよう労働条件 Q&A 「ブラック企業」ってどんな会社なの?
日本労働調査組合 ブラック企業に関する労働調査 2021年9月
執筆者:古澤綾
FP2級