更新日: 2023.12.18 働き方

「残業する意味ありますか?」と若手社員に言われましたが、残業を強制することはできないのでしょうか…?

執筆者 : 柘植輝

「残業する意味ありますか?」と若手社員に言われましたが、残業を強制することはできないのでしょうか…?
近年では、仕事に対する価値観も変わりつつあり、若手社員の残業拒否に、頭を悩ませる管理職や先輩社員も増えてきているようです。仮に、残業をかたくなに拒む若手社員がいた場合に、残業を強制させることはできないのでしょうか。今回は、残業強制の可否について考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

理由があれば残業は強制できる

結論からいうと、一定の条件の下であれば、残業は強制することができます。具体的には、36協定を締結して、就業規則にも残業に関する規定を定めた上で、合理的な理由があれば残業を強制することができるのです。
 
この場合、たとえ社員が残業に意味を感じず、したくないと考えていても、命令があれば、基本的に残業しなければなりません。命令に従わなかった場合は、懲戒処分など、会社の規定に基づく処分の対象となります。
 

残業を拒否できる場合

とはいえ、残業の命令は絶対的なものではありません。仕事がないのに残業を強制することや、残業を命じる必要性のない業務で残業を強制することはできません。また、残業に合理的な理由があったとしても、社員に正当な理由があれば、残業を拒否することが認められています。
 
残業の命令を拒否できる正当な理由としては、体調不良などが挙げられます。例えば、眼精疲労を理由に残業を拒否したことで解雇された労働者が、解雇無効を訴えた事件では、残業命令に従えない理由があったと認められるとして、裁判所は解雇を無効としています。
 
体調不良以外でも、妊娠中や要介護の家族を抱えているなどの配慮が必要な事情がある場合は、残業拒否が認められると考えられます。また、36協定が結ばれておらず、年360時間という法定の上限残業時間を超えるなどして法に違反している場合も、当然ながら残業拒否は認められるでしょう。
 
なお、事業主が上記に違反した場合、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金という重い罰則が科される可能性があります。
 
このように、社員側の残業拒否が認められるには相応の理由が必要となります。早く帰りたいから、といった自分都合の理由での残業拒否は認められないでしょう。
 
つまり、正当な残業であれば、「残業する意味ありますか?」と拒否する若手社員への残業強制は、基本的に可能と思われます。
 

残業を拒否する若手社員への対応はどうすればいい?

もし、36協定が結ばれていないなど、会社側に問題があるのならば、残業を拒否する若手社員に強制をするべきではありません。その状況で残業を強制すると、会社が罰則を受ける可能性があります。
 
正当な残業であるにもかかわらず命令に従わないようであれば、単に残業を命令するだけではなく、その必要性を説くなどして、教育および指導もしていくべきでしょう。やみくもに命令し続けるばかりでは、反発を買い、最終的には、不満が高まった若手社員が離職してしまう可能性もあり得ます。
 
また残業を拒否するからには、なんらかの理由があるはずです。残業代が1円も出ない、もしくは満額出ないといった、法令に違反するような会社側の問題がないかを振り返ってみましょう。
 
たとえ少額でも、残業代が未払いとなっていては、労働意欲もそがれてしまいます。賃金については会社の問題であり、管理者側の対応だけでは改善できない部分かもしれませんが、理由として知っておくことで、若手社員との話し合いにおける糸口となるかもしれません。
 

まとめ

36協定を結んでおり、かつ、業務上合理的な理由があるなどの一定の事由を満たすことで、拒否する社員にも残業を強制することはできます。
 
しかし、「残業する意味ありますか?」と若手社員が言う以上、残業を拒否する明確な理由があるはずです。
 
もしも、若手社員の残業拒否に悩んでいるようであれば、残業を強制するだけではなく、拒否する理由も考えて、適宜指導などを行いながら、若手社員と向き合っていくべきでしょう。
 

出典

厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 改正内容(時間外労働の上限規制)(4ページ)

広島県商工労働局 広島県雇用労働情報サイトわーくわくネットひろしま 5-14 残業命令を拒否できるか|労働相談Q&A

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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