更新日: 2024.10.10 働き方
給料の振り込み口座を「地元の銀行」に指定されましたが、不便なのでこれまで使っていた口座に振り込んでほしいです。やはり従わなければいけないでしょうか?
本記事では、給与の支払いについて、法律はどのように定めているのか詳しく解説します。会社に伝えることで、給料の振り込み口座を現在の金融機関から希望する金融機関に変えられるかもしれません。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
給料の支払いは通貨で、直接労働者に支払うのが原則
労働基準法第24条は、賃金は「通貨で」、「直接労働者に」、「全額を」、「毎月1回以上」、「一定期日を定めて」支払わなければならないと定めています。これを賃金支払いの5原則と言い、本来給料は現金で手渡しするものなのです。
しかし、実際に現金手渡しをしている会社はほとんどありません。労働基準法をもう少し詳しく見てみましょう。労働基準法施行規則第7条の2第1項では「労働者の同意を得た場合には、労働者が指定する銀行またはその他金融機関への振り込みに変えられる」としています。
つまり、金融機関を指定する権利は労働者にあり、会社が指定することはできません。給与支払い口座の金融機関を変えたければ、会社にこのことを伝えましょう。
筆者も所属する会社に、金融機関の変更をお願いしたことがありましたが、最初は聞き入れてもらえませんでした。しかし、法律では本来会社が指定できないと定められていることを丁寧に伝えて、金融機関を変えてもらうことに成功しています。
金融機関の変更を受け入れてもらえない場合はどうする?
会社が金融機関を指定するのは、メリットがあるからです。具体的には、給与振り込みにかかる手数料を抑えられる、給与振り込み業務を効率化できることなどが挙げられます。労働者に金融機関の変更を認めることは、大きな手間とコストにつながるのです。
したがって、金融機関の変更を受け入れてくれない会社があるかもしれません。こういった場合の対処法を紹介します。
労働局の総合労働相談コーナーで相談する
労働局は全国379ヶ所に総合労働相談コーナーを設けています。専門の相談員が労働問題に関する相談を受けてくれる窓口で、予約も利用料も不要です。
労働基準法など法律違反の疑いがある場合は、行政指導などの権限を持つ担当部署への取り次ぎも行っています。会社に指導が入ることで、金融機関の変更を認めてくれるかもしれません。
会社の指定金融機関のまま定額自動入金サービスを使う
会社と争うことまで望んでいないものの、指定されている口座とは違う口座に給料が入るようにしたい人は、ネットバンクの「定額自動入金サービス」を活用しましょう。
多くのネットバンクが提供しているサービスで、他行口座から指定金額を引き落として自動的に別の口座へ入金でき、ほとんどの場合手数料は無料です。このサービスを使うと、例えば給料日が25日であれば、お金の流れは以下のようになります。
(例)
1.毎月25日に、会社が指定する金融機関の口座に給料が振り込まれる
2.毎月27日に、設定した金額が給与振り込み口座から引き落とされる
3.2の4営業日後に、設定した金額がネットバンクの口座に振り込まれる
*引き落とし日や振り込み日は銀行によって変わります。
ネットバンク口座への入金が、給料日から時間が空いてしまうことは欠点ですが、給与振り込み口座をネットバンク口座に変えるのと、ほぼ同じ効果が得られます。
給料の振り込み先を変えて欲しいことを会社に伝えよう
給与の振り込み先は会社ではなく、労働者が決めるものです。会社指定の金融機関に不満がある人は、まずは会社に相談しましょう。法律上は労働者が決められることになっていると伝えれば、給与の振り込み先を変えてもらえるはずです。
もちろん、銀行口座の変更を快く思わない会社もあるでしょう。自身の権利はしっかり主張しつつ、社内での立場が悪くならないような立ち回りが必要です。どうしても変えてもらえない場合は、定額自動入金サービスを使うことで、自動的に給料がネットバンクに送金される仕組みを作るのがおすすめです。
出典
厚生労働省 労働基準法第24条(賃金の支払)について
厚生労働省 労働基準法施行規則
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士