更新日: 2024.10.10 働き方
連休明けに毎回有休を取得して「3連休」にする社員がいます。業務が滞るのですが、有休は「権利」と主張されると何も言えません……。
本記事では、職場で、連休明けに有給休暇を取得して頻繁に3連休を取る人によって、仕事が滞っていると仮定して、どうにかそれを改善することはできないのかを考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
有給休暇は原則として使用を拒むことができない
有給休暇は、労働者側が自由なタイミングで行使できるという法的性質があります。世間的には、労働者の側が会社の許可を得て、有給休暇を「使わせてもらう」というイメージのほうが強いかもしれません。
しかし、法的には会社の許可は不要で、労働者が前日までに指定すれば、無条件で利用できる強力な権利です。本来は「会社の承認によって与える」というような、会社優位なものではないのです。ましてや上司や同僚に「お伺い」を立てて使わなければならないものでもありません。
そのため、「連休明けに有休を使用して3連休にする」という方法をとる社員がいたとしても、それを禁止したり罰則を与えたりするなどの、いわゆる不利益扱いをすることはできません。例えば、「有休を使って3連休にする場合は、1回につき1万円減給」という罰則や、「従業員から企業に5000円の支払いが必要」などという決め事はできないというわけです。
もちろん「業務が滞ったので、その損害として100万円を損害賠償請求する」といった命令もできません。つまり、3連休にするために有休を取った従業員がいれば、そのまま希望する日に有給休暇を取得させることが原則になります。
もし「労働者の希望する時期に取得させない」ということをすると、会社側は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される場合があります。
有給休暇には時季変更権がある
原則として、社員の希望時期に取得させなければならない有休ですが、それには、時季変更権を行使するという例外事由があります。それは、有給休暇の取得を認めることで、職場において事業の適正な運営が妨げられてしまうような場合です。
とはいえ、この条件を満たすことは非常に難しく、単に「繁忙期だから」「業務が忙しいから」などといったような漠然とした理由では認められません。
会社側が時季変更権を行使するには、事業に影響することについての客観的な蓋然(がいぜん)性の存在や、ほかの労働者を確保できるかどうかなど、さまざまな要件を満たすことが必要であり、簡単には認められません。
今回のように、単に「業務が滞る」といった程度では、「有休は権利」と主張する社員に、時季変更権を用いて日にちを変更させることは難しいでしょう。
有給休暇の使い方を評価制度に組み入れることはできる
業務が滞るとはいえ、有給休暇の取得を制限することが難しいのであれば、間接的に制限をかけることは可能な場合もあります。具体的には「評価制度に有給休暇の使い方を組み入れる」といったことが考えられます。
例えば、「繁忙期は多くの人が有休の取得を控えているにもかかわらず、一人だけ自由気ままにして、周りがその分の負担を強いられている」という場合を考えてみましょう。そういった場合、人事評価において「協調性や積極性が高くない」という評価をくだすことが考えられます。
これらの評価は、有給休暇を取得したことを、直接的に処分の対象としているわけではないため、不利益扱いとはなりません。それによって、本来なら30万円の賞与を、査定によって29万円に減らすなどして、間接的な抑止力とすることが可能になります。
まとめ
連休明けに有給休暇を使用して頻繁に3連休とする人がいて、それによって業務が滞ったとしても、基本的にはそれを制限することはできません。
有給休暇は労働者の権利です。社員の有給休暇の取り方に頭を悩ませているようであれば、有給休暇を取得しても問題のない人員体制を構築するとか、人事制度を変えるなどの対策が必要になるでしょう。間違っても罰金や減給などの、直接的な不利益扱いをしないようにしましょう。
出典
厚生労働省 中央労働委員会 個別労働関係紛争のあっせん 個別的労働紛争の調整事例と解説 2. 労働関係の展開 (6)労働時間・休暇 [28]長期の年次有給休暇の請求と時季変更権行使
厚生労働省 しっかりマスター労働基準法 有給休暇編
執筆者:柘植輝
行政書士