更新日: 2024.01.25 働き方

パート先がセルフレジになりましたが、「客に仕事をさせるのか!」など暴言を吐かれることがあります。店長には「我慢して」と言われますが胃が痛いです…耐えるしかありませんか?

執筆者 : 玉上信明

パート先がセルフレジになりましたが、「客に仕事をさせるのか!」など暴言を吐かれることがあります。店長には「我慢して」と言われますが胃が痛いです…耐えるしかありませんか?
お客の要望やクレームについては、真摯(しんし)に対応する必要がありますが、長時間の暴言はいわゆる「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の一種であり、我慢すべきものではありません。
 
カスハラはさまざまな業界で大きな問題になっており、厚生労働省やUAゼンセン(日本最大の産業別労働組合)などで、対応方法についてわかりやすい取りまとめが行われています。本記事ではこれらをもとに、カスハラ対応のポイントを紹介します。
玉上信明

執筆者:玉上信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

カスタマーハラスメントの深刻な実態

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、調査対象の20~64歳の男女労働者8000名のうち、過去3年間でカスタマーハラスメント(顧客等からの著しい迷惑行為)を受けた労働者の割合は、図表1のとおり15%です。パワハラ31.4%、セクハラ10.2%と比べてもかなり多く発生しています。
 
図表1
 
過去3年間にハラスメントを受けた経験

図表1

厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
 
迷惑行為の内容は図表2のとおり、「長時間の拘束・同じ内容の繰り返し」「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」などが高い比率になっています。
 
図表2
図表2

厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
 
UAゼンセンの調査でも、過去2年間で顧客からの迷惑行為被害を受けた人は56.7%、6回以上の被害を受けた人だけで14.1%など 、繰り返し被害に遭っている人が多数います。
 
迷惑行為のきっかけとして、事業所側の問題よりも、むしろ「顧客の不満のはけ口や嫌がらせ」33%、「顧客の勘違い」15%等、顧客側等顧客側の問題が多くを占めています。迷惑対応に要したのは1時間以内が6割ですが、2日以上かかったものも10%を超えています。
 
図表3
図表3

UAゼンセン 悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果
 
迷惑行為の具体例としては以下のようなものがあげられます。

・商品が腐っていたとの電話で交換品を持って訪問すると、延々とサービスが悪いといい続け、最後には外見を非難された。
 
・感染予防のため、商品の袋詰めをお断りしたら暴言を吐かれた。そのお客さまの来店のつど心臓がドキドキした。
 
・レジの接客態度が悪いと胸ぐらを掴まれ引きずられるなど暴力を振るうので警察を呼んだ。

カスハラとは何か。どんな影響があるのか

顧客や取引先など(以下、顧客等)からのクレームにも正当なものとカスハラにあたるものがあります。次の基準で判別が可能です。
 
まず「顧客の言動・要求が妥当かどうか」です。例えば商品に問題がないのに「気に入らないから取り換えろ」といった場合です。
 
次に、要求の適否にかかわらず、実現の手段・態様が社会通念から外れていれば、カスハラに該当します。購入商品に問題があって交換してほしい、としても、「土下座しろ! バカ!嘘つき野郎!」といった暴言、長時間の叱責(しっせき)は、社会通念から外れます。
 
現場の人は困惑し就業環境が著しく害されます 。カスハラを何度も経験した従業員は「眠れなくなった」(21.2%)、「通院・服薬した」(8.8%)など、深刻な影響が生じます。 周りの従業員にも勤労意欲の低下をもたらすでしょう 。
 

カスハラは我慢すべきものではない

カスハラは従業員の就業環境の問題にとどまらず、企業にも顧客等にも大きな影響が生じます 。 企業には、時間の浪費、業務上の支障、従業員の離職、金銭的な損失、ブランドイメージの低下等が生じます。顧客等には、業務遅滞によるサービス低下、利用環境、雰囲気の悪化につながります。企業として真剣に取り組む必要があります。
 
厚生労働省の指針で は、カスハラについてもパワハラ同様に、会社として次の対応が望ましいと明記しています。

・相談・対応に必要な体制の整備
 
・被害者への配慮のための取組(被害者のメンタルヘルス不調相談対応など)
 
・カスハラ被害を防止するための取組(マニュアル作成、研修実施など)

会社には従業員に対する安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。就業環境に配慮する義務もその内容に含まれます。従業員がカスハラ被害の防止対策や被害に遭ったときの対処を会社に求めるのは当然のことなのです。
 
店長等の中間管理職には、事を荒立てないように従業員に我慢を強いる人もいるかもしれません。カスハラ対応が会社の義務であることを理解していないのです。
 
そんなときには、厚生労働省の前記のマニュアル・指針などを示し、カスハラ対応が会社の義務であると訴えてください。
 
現場管理者が対応しないなら躊躇(ちゅうちょ)せず本部・本社に相談してください。自身の意欲減退、心身不調、さらには直接的な暴力被害にも会いかねない事態です。前記の通り、企業にも顧客等にも大きな影響を及ぼす問題なのです。
 

カスハラ対応にこそ企業としての姿勢・品格が現れる

被害に遭って我慢するのは、相手を増長させ被害拡大につながりかねません。従業員を大切にし、真に顧客本位に経営をする企業なら、カスハラ顧客から従業員を守り顧客等を守ることの大切さをよく理解しているはずです。勇気をもって会社に訴えかけてください。
 

出典

厚生労働省 カスタマーハラスメントを知っていますか?
厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
厚生労働省 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
UAゼンセン 悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー