会社の制服は、退職時に「クリーニングして返却」と言われました。もともと給与から「買い取り」として天引きされていたのですが、違法ではありませんか? なんだか納得いきません…
配信日: 2024.01.27 更新日: 2024.10.10
制服のある職場では、就業規則には制服が貸与か買い取りのどちらなのか、費用負担はどのようになっているのかを明記し、周知しておく必要があります。しかし、しっかりと就業規則を確認している人は少ないかもしれません。
本記事では、退職時に制服の返還を求められた場合に応じるべきか否か、具体的なケースを紹介します。また返還時にはクリーニングを求められることが多いですが、クリーニングが必須かどうかもあわせて解説します。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
「買い取り」した制服は退職時に返却しなくて良い
入社時などに買い取りで支給した制服を、退職時に返却する必要はありません。買い取りした制服は労働者の所有物となるためです。
しかし、退職後は制服の使い道もないため、会社側に買い取りを求めることは可能です。買い取ってもらえる場合には、制服の使用期間や消耗度合いを考慮して金額を会社と話し合って決めるとよいでしょう。
多くの会社では、退職後の悪用を懸念して制服の返却を求めています。自分の所有物である制服を、無償で会社に返却することにどうしても納得できない場合は、会社で捨てるということも1つの方法です。
退職時に制服を返却すべきケース
制服を買い取りしていた場合は、従業員の持ち物であるため返還の義務はありませんが、貸与など従業員の所有ではない場合には退職時に返還の義務があります。
また、制服の返還時には「クリーニング」を求められることがありますが、これも義務といえるのでしょうか? ここでは、退職時に制服を返還すべき具体的なケースとクリーニングの必要性について見ていきます。
「買い取り」ではなく「保証料だった」
制服を自己負担で「買い取り」したと思っていたけれど、実は「保証料」の名目だったという場合には、制服の所有権は会社にあるため返還しなければいけません。
従業員に制服を貸与しても、退職時に返却せずに連絡が途絶えてしまったり、従業員の所有物ではないため大切に扱わなかったりという可能性があります。そのために制服を返却しなかったり、常識の範囲以上に早く消耗してしまったりした場合にはそのまま徴収できるように保証料を設定している会社があります。
このケースでは、必ず就業規則などに「買い取り」ではなく「保証料」であることを明記する必要があります。従業員側も、あとから「知らなかった」とならないよう、入社時や契約内容に変更があった場合には就業規則をよく読んで確認しておきましょう。
制服が貸与の場合
そもそも買い取りではなく貸与で制服を使用していた場合や、制服代を会社と従業員で折半していた場合などは、制服の所有者が100%従業員ではないため、返還の義務があります。ただし、折半の場合には半分は従業員の所有物と見なされるため、持ち分を会社に買い取ってもらえる可能性はあります。
万一、従業員が貸与された制服を返却しなかった場合、会社側が給与天引きでクリーニング代や制服代を徴収する可能性が考えられます。しかし労働基準法24条により、会社は従業員の承諾を得ずに所得税や社会保険料などの税金以外は、どのような費用も「給与天引き」はできないこととなっています。
同意なく給与天引きされた場合は違法となりますが、円満退職のため貸与された制服はきちんと返却することをおすすめします。
また、民法599条では借りたものは常識の範囲内の消耗以外は現状復帰して返却するよう定められているため、制服をクリーニングしてから返却することは常識の範囲といえるでしょう。
まとめ
会社の制服を入社時などに「買い取り」していた場合には、制服の所有権は従業員にあるため、退職時に返還を求められても応じる義務はありません。ただし、会社側が返還を求める理由として、退職後の悪用を懸念するなどの理由があるため、退職時に会社で捨てるなども1つの方法です。
どうしても返還を求められる場合には、会社に買い取ってもらえるよう相談してみましょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
厚生労働省 労働基準法第24条(賃金の支払)について
執筆者:古澤綾
FP2級