更新日: 2024.02.13 働き方

就職先は「車通勤」しかできない場所にあります。車の購入費用を経費として収入から差し引いたりできないのでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

就職先は「車通勤」しかできない場所にあります。車の購入費用を経費として収入から差し引いたりできないのでしょうか?
給与所得者と個人事業主の違いはいろいろありますが、そのひとつに個人事業主に比べて給与所得者は経費が認められるケースが少ないという点があります。
 
たとえば、車通勤しかできない勤務先に勤めている人が通勤用の車を購入すると経費になるでしょうか。そこで、本記事では車を購入した給与所得者が購入費を経費にできるかという点を解説します。通勤用に車の購入を検討中の人は参考にしてください。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

給与所得者には個人事業主のような経費控除がない

個人事業主が事業用の車両を購入した場合、耐用年数に応じた期間中は減価償却費として課税対象から外せます。もちろん、車両だけでなく事業に必要な経費はすべて課税対象外となります。
 
しかし、給与所得者には個人事業主と同じ経費処理は認められていません。その代わりに給与所得者には給与所得控除として一定金額の控除が認められています。給与所得者が認められている給与所得控除の金額は図表1のとおりです。
 
【図表1】
 

給与収入
(源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
~162万5000円 55万円
162万5000円超~180万円 収入金額×40%-10万円
180万円超~360万円 収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円 収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円 収入金額×10%+110万円
850万円超~ 195万円(上限)

 
国税局 給与所得控除をもとにして筆者作成
 
図表1のとおり、給与所得者も実質的に最大195万円の経費が認められていますが、給与所得控除額を超えられる特例もあります。
 

給与所得者の特例「特定支出控除」で車通勤の一部が控除できる

給与所得者は、所得に応じた給与所得控除額が実質的な経費として認められています。しかし、個人事業主とは違い、給与所得者の給与所得控除額には上限が設定されています。それでは、上限を超えることはできないのでしょうか。
 
結論を言うと、給与所得控除を超えても認められるケースはあります。全額が認められるわけではありませんが、給与所得控除を超える特定の支出が一定金額以上であれば、控除が認められる「特定支出控除」という制度があります。
 

特定支出控除の概要

給与所得者に認められている給与所得控除には上限がありますが、それを超えて控除を認める制度が「特定支出控除」です。特定支出控除の概要は以下のとおりです。
 

◆特定支出控除の概要

●対象者:給与所得がある人
●対象となる条件:対象の特定支出が給与所得控除の2分の1を超える場合

 
特定支出控除はあらかじめ定められた支出に該当すれば、最大で97万5000円(給与所得控除の上限195万円の2分の1)を超える部分について控除が認められる仕組みです。
 

特定支出控除の対象となる支出

特定支出控除の対象となるのは、すべての支出ではなく以下の支出に限られます。
 

●通勤費
●職務上の旅費
●転居費
●研修費
●資格取得費
●単身赴任などの帰宅旅費
●次に掲げる支出(合計額が65万円超の場合は65万円まで)で、給与の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
 図書費、衣服費、交際費等

 
上記の通勤費には車両の購入費は含まれません。対象となるのは以下の通勤費です。
 

●航空費を除く交通機関を利用する場合
●自動車を利用する場合
●交通機関と自動車を利用する場合(上記2つの合計)

 
さらに、自動車を利用する場合の対象となる通勤費は以下に限られます。
 

●燃料費
●有料道路料金
●修理費(故意や重大な過失によるものを除く)

 
車両の購入費(減価償却費)や自動車税は対象となりませんが、上記の費用の1年分が控除の対象になります。
 

特定支出控除の申告方法

特定支出の控除の申告は年末調整ではなく、直接管轄の税務署に確定申告を行います。そのため当年分は翌年2月16日〜3月15日(年度によって変更もあるので注意)の間に確定申告が必要なので忘れないようにしましょう。
 
また、申告に際しては以下の証明書の添付が必要になるので事前に準備しておきましょう。
 

●特定支出に関する明細書
●給与の支払者などの証明書
●交通機関を利用した場合は搭乗・乗車・乗船に関する証明書
●支出した金額を証する書類

 

給与所得者は通勤車の購入は経費にできないが、通勤費の一部は控除可能なので活用しよう

給与所得者は個人事業主のように事業に関する経費が全額認められませんが、代わりに収入に応じた給与所得控除が認められています。また、特別支出控除によって給与所得を超えても控除が認められる支出もあります。
 
車による通勤では車両の購入費や自動車税などは認められませんが、ガソリン代や有料道路料金、修理費は認められるので活用しましょう。
 

出典

国税庁 No.1400 給与所得
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
税務署 給与所得者の特定支出控除について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

ライターさん募集