派遣社員ですが、正社員に支給される「月2万円」が上限の「交通費」が自分には支給されません。これって違法ですか?

配信日: 2024.03.26 更新日: 2024.10.10

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派遣社員ですが、正社員に支給される「月2万円」が上限の「交通費」が自分には支給されません。これって違法ですか?
「派遣社員には交通費が支給されていないのに、正社員には交通費が支給されている」こういった話は珍しい話ではなく、よく耳にします。しかし、昨今叫ばれる「同一労働同一賃金」には反しているように考えられますが、実際にはどうでしょうか。
 
派遣社員として就労したことのある多くの方から寄せられる、この問題について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

交通費の支給は義務ではない

まず前提として知っておくべき知識に「交通費の支給は義務ではない」というものがありますが、こちらは意外に思うかもしれません。求人サイトやハローワーク、その他企業のWEBページに記載されている求人ページなど、どこの求人票を見ても、諸手当の欄に「通勤手当や交通費などは、所定の上限額の下で支給される」などといったことが記載されています。
 
しかし、これらはあくまでも企業の厚意によるものにすぎません。他社と比べて条件が著しく劣ると、募集しても人が来なくなってしまうため、交通費を支給することが当たり前である昨今の求人水準に合わせて、企業が条件の一つとして定めているにすぎないのです。
 

派遣社員にだけ交通費を支給しないのは、同一労働同一賃金に反する可能性がある

では、「派遣社員には交通費を支給しないのに、自社の社員については交通費を支給している」という点についてはどうなのでしょうか。この点については、同一労働同一賃金の原則に照らして考えていくと「違法である」される可能性があるでしょう。
 
同一労働同一賃金とは、「雇用形態に関わらず、同じ労働においては同じように扱うべき」という考え方です。国の定める「同一労働同一賃金ガイドライン」によれば、各種手当については「同一の支給を行わなければならない」とされています。
 
例えば、「通勤にかかる交通費を会社が負担する」という趣旨に基づいて支給される通勤手当は、雇用形態や業務内容に関係なく、賃金規程や就業規則など勤務先の規程に基づき支給される必要があるようです。
 
そのため、「正社員には交通費が月2万円支給されるのに、派遣社員には1円も支給されない」あるいは「派遣社員にも交通費が支給されるが、正社員のようにかかった交通費の全額ではなく、一部にとどまる」などというような場合は、同一労働同一賃金に反している、いわば違法な状態になります。
 
ただし、交通費が時給の中に含まれているなどの場合は、別途手当として支給されておらずとも、直ちに違法とはならない可能性もあり得るので確認が必要です。
 

交通費に課税されることも

交通費は所得税や住民税が非課税となっています。しかし、時給の中に交通費が含まれているような場合は、時給に所得税や住民税が課税されてしまい、手取りが減ってしまうのです。
 
仮に年収400万円(課税所得額を170万円と仮定)で所得税の税率が5%、住民税率が10%の方において、交通費1万円が時給に含まれているような場合、年間12万円の交通費が発生していることになります。この場合、交通費に対して発生する所得税が年間6000円、住民税が1万2000円程度になります。
 
もちろんこれは概算であり、正確な額ではありませんが、交通費が時給に含まれているとこのように税負担が重くなり、実質的に交通費が自費負担になっている部分が出てきてしまうこともあります。
 
もし交通費の支給を会社にお願いするのであれば、別途手当として支給してもらう方をおすすめします。
 

まとめ

正社員のみに月2万円の交通費が支給され、派遣社員には交通費が支給されないという場合、同一労働同一賃金に違反している可能性が高いです。
 
なお、派遣社員は原則派遣元の会社に所属している扱いとなりますので、もし現在自分が派遣社員で、時給に加算されているわけでもなく交通費が出ていないという場合、支給してもらうことができないか、まずは一度派遣元に相談してみるといいかもしれません。
 
それでも解決しなかった場合、派遣元または勤務先の所在地を管轄する労働局へ相談してみてください。そうすることで、何かしら解決のためのアドバイスを得られるでしょう。
 

出典

厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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