更新日: 2024.10.10 働き方
転職先で「始業前にみんなにお茶をくんで」と言われビックリ!「昼休憩」と「午後3時」もお茶くみが必要らしいのですが、断っても良いでしょうか? 長い慣習のようです…
本記事では従業員への時間外のお茶くみを断れるのかどうかについて解説します。
執筆者:山田麻耶(やまだ まや)
FP2級
上司から指示されたお茶くみは労働時間に該当する
厚生労働省では労働時間を「労働者が使用者の明示または黙示の指示により、指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。
「明示の指示」は口頭などで明確に伝えられる指示のことで、実際に業務を行っている時間や、会議や研修に参加している時間などは、明示の指示による労働時間となります。
一方、「黙示の指示」は明確な指示こそないものの事実上働かざるを得ないような状況のことです。例えば昼休憩中に電話や来客の対応をしたり、着用が義務である制服に着替えたりすることが該当します。
従業員へのお茶くみを上司の指示で行っている場合、労働時間に該当すると考えられます。しかし、特に命令がなく従業員に「一息ついてほしい」など個人的な理由でお茶くみをしている場合は労働時間に該当しないでしょう。
始業前や昼休憩にお茶くみを命じられたら
始業前のお茶くみを命じられている場合は、時間外勤務に対応するため、時間外手当を請求する権利があります。
また昼休憩時にお茶くみをしなければいけない場合は、お茶くみにかかった時間分の休憩を別途もらう必要があります。
労働基準法では、使用者は、勤務時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは60分以上の休憩を与えなければならないとされています。お茶くみという軽作業とはいえ、それが業務にあたる場合は必要な休憩時間を確保しなければいけません。
「女性だから」という理由のお茶くみは違法
お茶くみは女性が行うというルールが設けられている会社もあるかもしれません。しかし「女性だから」のように、性別を理由にお茶くみを命じることは法律に違反します。
男女雇用機会均等法の第6条は、性別による差別を禁じています。男性にはお茶くみをさせず、女性にばかりお茶くみの指示をすることは、男女で異なる扱いをしており、差別をしているとみなされます。
男女の区別をしてお茶くみを命じていないかもチェックすると良いでしょう。お茶くみ制度を無くすための判断材料になります。
勤務時間外にお茶くみを要求されたら要注意
始業前や昼休憩中など、勤務時間外にお茶くみを指示された場合、時間外勤務をしているといえるでしょう。その日のうちにお茶くみにかかった時間分の休憩をとるか、時間外手当を請求できる可能性があります。
とはいえ長年の慣習を変えるのは難しいことですし、「お茶くみをしているので別途お金をください」とは言いづらいかもしれません。その場合は、会社の慣習と割り切り引き受けることも1つの方法です。
どうしても納得できない場合は、「お茶を飲みたい人は各自で用意しましょう」という提案をしても良いでしょう。自分が納得できる選択をしてくださいね。
出典
厚生労働省 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い
厚生労働省 労働条件に関する総合情報サイト 確かめよう労働条件 社会人として働き始めてからの労働法 第2章5労働時間
e-Gov 法令検索 労働基準法
e-Gov 法令検索 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
執筆者:山田麻耶
FP2級