転職先が「家族経営」の会社でした。事務なのに毎日「お茶くみ」「掃除」「買い出し」などの雑務ばかりで辞めたいです。「入社1ヶ月で辞める」って非常識ですか?
配信日: 2024.04.17 更新日: 2024.10.10
例えば、事務職として採用されたのに、入社1ヶ月間、掃除や買い出し等の業務ばかりさせられる、といった場合はどうすればよいのでしょうか。該当する労働基準法の確認と、労働者としては実際にどのような行動をしていくことが望ましいのかを、合わせて見ていきます。
執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
契約時に「労働条件の明示」はされていたかチェックしよう
労働基準法では労働契約の締結をするときに、法定の事項について「書面の交付」により労働条件を明示すべきと定めています。
「第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。」
この条文中の「厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とは、「労働基準法施行規則」第5条(4)に定められており、「法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。」とされています。
必ず紙の書面を渡す必要はなく、電子メール送信などによってもよいとされていますが、労働契約を行う際に業務内容や契約期間などの事項を明示した書面を受け取っていない場合は、企業側に労働基準法違反の疑いがあります。
労働条件を記載した書面を受け取っている場合は、内容をもう一度確認してみましょう。もし、労働条件などを記した書面の内容と実際の業務が異なっている場合は、労働者側から労働契約を解除することが認められています。
ただし、書面に記載された内容に「その他、上司の命じる業務」などの記述がある場合は、労働者が業務時間中に雑務を命じられている場合でも、ただちに違法であるとは言えないため注意しましょう。
退職を決める前にまず、職場の責任者に労働基準法の順守を求めよう。
では、労働基準法を理由として採用1ヶ月で会社をやめても大丈夫なのでしょうか。
キャリアコンサルタントである筆者としては、いきなり退職を決めることはおすすめできません。どのような事情があったとしても、後日に転職をする際、履歴書に「1ヶ月で転職した」という経歴が残ってしまうことは、多くの場合でマイナス評価となるためです。
また、家族経営など小規模の事業所では特に、経営者や人事担当者が労働基準法の内容を理解しないままに労働者の採用や業務命令を行っている場合がよく見られます。そのような場合、「今企業が行っていることは労働基準法第15条に反した行為である」と経営者の方が認識すれば、現在の状況が改善される可能性も考えられます。
労働者の立場で、どのようにそれを企業側に伝えていくかというのは難しい問題になりますが、自分で通知することがためらわれるのであれば、お勤めの企業を担当している社労士の先生や、労働基準監督署に相談することから始めていくとよいでしょう。
企業側に法律の順守を求めても改善がされない場合は、退職も選択肢に入れて今後の準備をしていく必要が出てきます。その場合も決してあせらず、客観的な記録を残しておくとよいでしょう。
まとめ
労働契約時に示されるべき「労働条件」と、実際の業務内容が異なっている場合は、労働基準法に違反しているため、労働者側から即時に労働契約を解除することが可能です。
ただ、実際には企業側の認識不足でそのようなことが起きている可能性があり、違法状態である指摘をすることで状況が改善することも考えられます。退職の決断は決して急がず、労働基準監督署に相談することなどから始めることをおすすめします。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
e-Gov法令検索 労働基準法施行規則
茨城労働局 求人票の内容と実際の仕事が違う
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント