更新日: 2024.10.10 働き方
今年の新卒社員の「チャットの返信」が遅すぎます。業務に支障が出るので「休みの日でもすぐ返信」と言っているのに守りません。今どきの若者ってこれが「普通」なんでしょうか?
しかし、それが行き過ぎて休みの日でもチャットの返信を求めることは問題です。本記事では、休日にチャットでの返事を求めることの問題点について解説します。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
休日とは労働から解放されている状況
労働契約において休日とは「労働義務が免除されている日」をいい、会社は労働基準法にのっとって、毎週少なくとも1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけません。
休日は労働義務がない状態であり、労働者は自由に過ごす権利があります。
休日にチャットの返信を求めるのは何が問題?
休日にチャットの返信を求める行為は、大きく分けて2つの問題が生じる可能性を秘めています。1つは労働基準法に違反している可能性があること、もう1つはパワハラになるかもしれないことです。
チャット返信の強要は労働とみなされる可能性が高い
一般的に「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」は労働時間とされています。チャット返信を義務化してしまうと、チャット返信自体が業務とみなされる可能性があるのです。
業務とみなされれば、チャット返信にかかった時間は労働時間にカウントされるため、賃金を払わない場合は違法となります。
チャット返信の強要がパワハラになる可能性がある
厚生労働省では、以下の3つの要素を満たすものをパワハラと定義しています。
・優越的な関係にもとづいて(優位性を背景に)行われること
・業務の適正な範囲を超えて行われること
・身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
例えば上司という立場を利用して、緊急ではない要件に対しても即時の返信を求め、返信が遅かったことに対して叱責(しっせき)することで、部下が精神的な苦痛を感じた場合はパワハラに該当する恐れがあります。
休日のチャット返信を求めない体制作りが大切
労働基準法にも違反せず、またはパワハラにもならずに、休日にチャットの返信を求めることは難しいというのが結論です。24時間働くことが美徳とされた時代は、確かにありました。しかし、現在は仕事とプライベートは分けるべきという価値観が大切にされており、上司自身や会社の考え方もそうした価値観に合わせる必要があります。
やるべきことは「新人がすぐにチャット返信をするように指導する」ではなく、「休日にチャットをみなくても業務に支障が出ない体制を作ること」です。常に部署内の業務内容を共有できる仕組みを作ったり、休み前の業務の引き継ぎを徹底したりすることで、休日にチャットのやり取りがいらない環境づくりが求められています。
それでもトラブルの発生でどうしても緊急連絡が必要になることがあるかもしれません。そういった場合でも、本当に休日中に連絡する必要があるかをしっかり検討した上で、部下のプライベートを優先した対応を心がけましょう。
休日の連絡は緊急時に限るというルールを作り、その緊急時となる基準を決めておくことで、働きやすい職場が作れるはずです。
出典
厚生労働省 労働条件・職場環境に関するルール
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士