更新日: 2024.04.18 働き方

有休を取得してすぐ「10日分すべて消化したい」という部下。病欠も考慮して「残しておくように」アドバイスすべき?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

有休を取得してすぐ「10日分すべて消化したい」という部下。病欠も考慮して「残しておくように」アドバイスすべき?
一定の条件を満たすと取得できる有給休暇ですが、労働者の中には取得後すぐに消化しようとする人がいるかもしれません。
 
その際、取得した日数のすべてをまとめて使いたいと思うかもしれませんが、企業側からすると計画的でないように感じることもあるでしょう。あるいは「運営の都合上、まとまって休みを取られると困る」と感じるかもしれません。
 
本記事では、有給休暇の取り方についておさえておくべき基本ポイントをまとめています。
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有給休暇の取得は基本的に労働者に請求権がある

有給休暇の取得については、労働基準法に規定があります。労働基準法第39条によると、有給休暇は「労働者の請求する時季」に与えなければなりません。つまり原則的には、労働者が希望するタイミングで有給休暇を与える必要がある、と考えられます。
 

有給休暇は10日分一気に使い切るのではなく残しておくべき?

もし労働者が「10日分すべて」など有給休暇を一気に消化しようとする場合、前述の第39条の文言に照らし合わせると、労働者にはその権利があるように思えます。
 
将来の不確定な要素のために有給休暇取得を思いとどまらせるのは、正当とはいいにくいでしょう。とはいえ、企業や労働者がおさえておくとよい注意点がいくつかあります。
 

有給休暇をすぐに使い切ることのリスク

仮に有給休暇をすべて使った後にやむを得ない理由などで休む場合、労働者は欠勤日に労働力を提供しないことになります。その場合「ノーワークノーペイの原則」から、欠勤分の給与が減額されてしまうかもしれません。
 
ノーワークノーペイの原則とは「労働なしに給与支払いは発生しない」という考え方のことです。労働者側もこのようなリスクを踏まえて、計画的な有給休暇取得を考えるとよいかもしれません。
 

特定の事情があれば「時季変更権」を活用できる

労働基準法第39条によると、企業側には「時季変更権」が認められています。本権利は、労働者の希望した日に有給休暇を取らせると正常な事業運営に支障が出る場合、企業側が休暇日を変更できる権利です。
 
10日の有給休暇となると多くの日数にまたがるため、事業運営に支障が出るかもしれません。同時期にほかの労働者も有給休暇を申請している場合などは、とくにその可能性があるでしょう。
 
このようなケースでは企業が時季変更権を行使し、10日分まとめて希望日に休ませるのではなく、一部を別の日に変更する選択肢も考えられます。
 

有給休暇には時効がある

企業は、有給休暇の時効についても考慮する必要があります。労働基準法第115条によると、有給休暇には「発生日から2年間の時効」があります。
 
有給休暇申請を思いとどまらせた結果、結局取得せずに時効を迎えてしまうかもしれません。
 

病欠時に有給休暇への振替はできる?

有給休暇を残している労働者が、病気を理由に「今日休みたいが有給休暇に振り替えられないか」と相談することがあるかもしれません。前述の第39条によると、労働者が有給休暇申請をする際、企業は運営への影響を考えて時季変更権を行使するか判断します。
 
しかし突然当日に有給休暇を申請されると、企業側は時季変更権を行使しにくい状況となるため、原則として事前に申請することが一般的とされています。
 
そのため、当日の朝に病気であることを理由に有給休暇へ振り替えできるかについては、企業の判断となる可能性があるでしょう。ただし就業規則や企業方針はそれぞれ異なるため、どのような対応になるかはケースバイケースの面があるかもしれません。
 

有給休暇の取得タイミングでは労働者の意見が尊重される

有給休暇をいつ取得するかは、基本的に労働者の意見が尊重されるようです。正常な事業運営が妨げられるケースは別として、10日分の有給休暇が申請される場合は、原則としてそれを取得させる必要があるでしょう。
 
ただし、有給休暇を使い切った後にやむを得ず休む場合などは、休んだ分の給与が発生しない可能性があります。そのため、有給休暇取得のタイミングについて、しっかりと計画を立てる必要があるでしょう。
 

出典

e-Govポータル 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇 第三十九条(年次有給休暇)、 第十二章 雑則 第百十五条(時効)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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