勤務先が「健康保険」と「厚生年金」に加入させてくれません。これは違法じゃないのですか?
配信日: 2024.05.17 更新日: 2024.10.10
そこで、健康保険や厚生年金に加入しないまま働くことが違法であるかどうか考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
会社に勤めている場合は強制加入
もし、勤務先が株式会社などいわゆる法人である場合、会社員の方は必ず会社の健康保険と厚生年金に加入します。この点について、勤務先となる会社や働いている従業員本人の意思は関係なく強制となります。
なぜなら、法人の事業所は法律によって強制適用事業所とされており、パート従業員で時短勤務であるなどの例外を除き、必ず従業員は加入するとされているからです。
社会保険の加入において雇用形態は関係ありません。正社員はもちろん、パート・アルバイトであっても、1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が通常の就労者の4分の3以上あり、かつ次の要件をすべて満たす方も社会保険の被保険者となります。
ア)週の所定労働時間が20時間以上
イ)賃金が月額8.8万円以上
ウ)雇用期間が2ヶ月以上見込まれること
エ)学生(夜間部、勤労学生を除く)ではないこと
オ)被保険者数が101人以上の企業または100人以下の企業であっても短時間労働者の保険適用を労使で合意(同意対象者の過半数で組織する労働組合がある場合は当該労働組合の同意、労働組合がない場合は同意対象者の過半数代表者の同意もしくは同意対象者の2分の1以上の同意)した企業に勤務すること
なお、2024年10月からは被保険者数の要件は51人以上になります。
つまり、勤務先が株式会社や合同会社であるにもかかわらず、自身が社会保険の被保険者となる資格を有しながら健康保険や厚生年金に加入できないという場合、それは会社が違法な扱いをしているということになります。問題があると感じたら労働基準監督署などへご相談ください。
個人事業主に雇われているような場合は例外に当たる
一つ例外として考えておかなければならないものとして、個人事業主に雇われて働く場合があります。法人の事業所以外は任意適用事業所となっています。任意適用事業所とは、従業員の半数以上が加入に同意するなど一定の要件を満たした事業所です。
この任意適用事業所のうち、実際に厚生年金に加入している事業所はそう多くありません。そのため、実質的には個人事業主に雇われて働くという場合は、勤務先で健康保険や厚生年金に加入することは難しく、自身で国民年金や国民健康保険に加入することになります。
今後加入するとなると保険料はいくらかかる?
厚生年金と健康保険は手厚い保証があるといわれる一方、保険料が高いといわれることがあります。誰しもが保険料の高さについて一度は聞いたことがあるでしょう。そこで、実際にどれくらいの額が発生するのか確認してみましょう。
健康保険と厚生年金の保険料は、おおむね給与の額に比例します。仮に毎月20万円の給与を受け取っている方と仮定すると、健康保険料は月々9980円、厚生年金保険料は月々1万8300円となります。もし、介護保険が発生するとなると、健康保険料は1万1580円もの額になります。
金額を見ると、健康保険と厚生年金の保険料は人によっては高いと感じるかもしれません。健康保険と厚生年金に加入したいと希望する場合は、こういった現実についても知っておく必要があるでしょう。
まとめ
勤務先が株式会社など法人形態である場合、その従業員は原則として健康保険と厚生年金に強制加入することとなり、加入しない場合は違法となります。
しかし、勤務先が株式会社などではなく、個人事業主であるような場合は、その限りではありません。
健康保険や厚生年金の加入要件はやや複雑となる部分もあります。もし、健康保険や厚生年金に加入できないことで悩んでいる場合は、労働基準監督署や年金事務所などへご相談ください。
出典
埼玉県 労働相談Q&A 会社が社会保険に加入してくれない
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
執筆者:柘植輝
行政書士