更新日: 2024.10.10 働き方

4月に新卒入社した社員が、1ヶ月で「退職願」を出してきました。「有休を消化するので10日ください」と言われたのですが、本当に与える必要はありますか? 法律違反になるでしょうか?

4月に新卒入社した社員が、1ヶ月で「退職願」を出してきました。「有休を消化するので10日ください」と言われたのですが、本当に与える必要はありますか? 法律違反になるでしょうか?
厚生労働省の調査によると、令和2年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は高卒就職者が37.0%、大卒就職者が32.3%、事業所規模が100人未満に限定すると高卒・大卒共に40%以上の離職率となっています。
 
新入社員がすぐ辞めてしまうのは珍しくないようですが、入社後1ヶ月で退職願を提出し、「有休消化するので有休を10日ください」と言われたら、有給休暇を認めないといけないのでしょうか?
 
本記事では年次有給休暇(有休)の発生条件や新入社員への有休付与条件、入社後すぐに退職する新入社員に有給休暇を認める必要がある場合について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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有給休暇の権利を得るのは入社6ヶ月後?

有休制度の趣旨は「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資する」というものです。
 
有休の要件は次の2つを満たす必要があります。
 

・雇い入れの日から起算して6ヶ月以上継続して勤務
・全所定労働日の8割以上を出勤

 
この2つの要件を満たした労働者に対して10労働日の有休が与えられ、その後1年ごとに付与される有休が増えていき、6年6ヶ月以上の継続勤務で20日の付与日数となります。
 

新入社員への有休付与は2パターンある

以上の内容通りであれば、4月に入社した新入社員は入社後6ヶ月経過するまでは有休がありません。そのため入社後1ヶ月で新入社員が退職願を出してきて「有休消化させてほしい」と言われても、有休消化をさせる必要はありません。そもそも消化できる有休が発生していないからです。
 
しかし入社時点や入社後6ヶ月以内に有休を前倒して付与する場合もあります。このように入社後6ヶ月以内に前倒しで有休を付与している会社の場合、新入社員が6ヶ月以内に退職する場合に有休消化を認めないといけないのでしょうか?
 

前倒しで付与した有休は与えなければ法律違反になる?

入社後6ヶ月以内に有休の全部または一部を前倒しで労働者に付与した場合、有休の付与条件である「全所定労働日の8割以上の出勤」の算定はその短縮された期間を全て出勤したものとみなされます。
 
例えば入社直後に5日、入社6ヶ月後に5日の有休を付与すると規定している会社の場合、入社直後に付与される5日については、入社から入社後6ヶ月までの期間は全て出勤したとみなして入社直後に前倒しで付与されているのです。
 
この入社直後に前倒しで付与された5日の有休は法律で定められた年次有給休暇に該当するので、新入社員が6ヶ月以上継続して勤務していなくても請求できます。
 
そのため新入社員が入社後1ヶ月で退職する場合でも、その新入社員に対して有休が前倒しで付与されていれば、その有休取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当しない限り、取得を認める必要があります。ただし認める必要があるのは前倒しで付与した有休のみとなります。
 
もし事業の正常な運営を妨げないのに有休を認めない場合は、労働基準法違反となり、6ヶ月の懲役または30万円以下の罰金となります。
 

まとめと注意点

新入社員に対して前倒しで有休を付与した場合、その有休取得を認めないと労働基準法違反になる可能性が高いです。なお、会社によっては就業規則には入社6ヶ月後に付与すると記載していても実際には前倒しで入社時に付与している会社もあります。
 
その慣習(入社時に有休を付与する)が長期間反復して継続している場合は労使慣行となり、就業規則ではなくその労使慣行が労働者の権利として認められることもありますので、就業規則だけでなく、会社の慣習にも注意して対応することが必要です。
 

出典

厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
厚生労働省 年次有給休暇制度について
厚生労働省 労働基準法の一部改正の施行について(平成六年一月四日) (基発第一号)
e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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