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更新日: 2024.10.10 働き方

45歳の地方公務員、上司に「管理職試験」をすすめられたけど、年収が今より「100万円」増えるなら受けるべき?“管理職のメリット”や“注意点”を筆者の体験もふまえ解説

45歳の地方公務員、上司に「管理職試験」をすすめられたけど、年収が今より「100万円」増えるなら受けるべき?“管理職のメリット”や“注意点”を筆者の体験もふまえ解説
公務員として長く働き、中堅から上の年代に差し掛かると、優秀な職員ほど「管理職になってみないか」と上司から管理職への昇任試験を受けるように勧められることがあるでしょう。しかし、管理職になると忙しくなったり、残業代が支給されなかったりすると聞いて、試験を受けるか迷う人も多いのではないでしょうか。
 
そこで本記事では、地方公務員の管理職になった際の年収の変化や「残業代」の取り扱いなどに加え、年収面以外の管理職になるメリット・デメリットについても、筆者の体験談を交えて解説します。

管理職になると年収は上がる?

管理職になる大きなメリットの1つが、管理職手当の支給などによる年収アップです。管理職手当の支給額は各自治体や役職によって違い、例えば2023年4月時点で、愛知県では4万5700円~14万6400円、福岡県では4万2100円~13万9100円の範囲になっています。
 
ボーナスである期末・勤勉手当にも役職に応じた加算があり、基本給にあたる俸給も上がることから、大半の人は年収がアップします。例えば、図表1の大阪市が公表している年収モデルでは、年齢の差はあるものの、管理職の年収がそれ以外の職員と比べてかなり高くなっているのが分かります。
 
図表1

図表1

大阪市 大阪市職員のモデル年収額(令和5年度見込)
 
ほかにも生涯賃金で考えれば、退職金が高くなるなど長い目で見ると経済的なメリットはさらに大きなものになります。
 

管理職になると「残業代」は支給されない?

管理職には多くの経済的なメリットがある一方で、管理職になった直後は年収アップを実感しにくい可能性があります。これは管理職手当が支給されるようになると、「残業代」である「時間外勤務手当」が支給されないことが大きな要因です。
 
管理職手当が支給される職員は「管理監督者」とみなされるため、管理職手当と時間外勤務手当は重複して支給されません。そのため、管理職になる前に、時間外勤務手当を多く支給されていた職員は、管理職になった直後は年収があまり増えないケースもあります。
 
例えば、管理職になった直後で管理職手当が5万円だった場合、前年度に毎月3万円ほど時間外勤務手当があったとすると、月額では2万円程度しか差がありません。基本給アップやボーナスへの加算を考えても、年収は数十万円単位のアップにとどまるでしょう。
 
そのため、給与が「思ったほど上がっていない」「仕事の大変さのわりに給与が少ない」と感じる人もいるかもしれません。また管理職ではない職員も、在職年数が長くなれば一定程度は基本給が上がります。そのような職員が多くの時間外勤務手当を受給すれば、「管理職である課長より一般の課長補佐の方が年収は高い」という現象が発生する可能性があり得るのです。
 

管理職になりたくない本当の原因は?

管理職になるかどうかの判断基準は年収だけではありません。公務員に限らず、管理職になりたくない理由の多くは、その多忙さや責任の重さなどが敬遠されるためです。
 
職務内容にもよりますが、管理職になると管理監督者という立場の責任など、職務にかかるプレッシャーが従来よりも大きくなるのは想像に難くありません。できれば気楽に働きたいと考える人は、苦労している管理職を間近に見て、管理職になるのをちゅうちょするのも無理はないのではないでしょうか。
 
苦労に見合った報酬が得られれば管理職になってもいいという人もいますし、いくら報酬が高くても管理職にはなりたくないという人もいるでしょう。管理職になるかならないかは、「働き方」という個人のライフスタイルを大きく左右する要素なのです。
 

管理職にならないデメリットも考えよう

収入の一部を諦め、管理職の重圧や多忙さを回避するのは、確かに管理職にならないメリットです。一方で、収入以外にも管理職にならないデメリットは存在します。
 
管理職にならないと、職場での立場は一定の範囲でしか上がりませんが、官公庁のような組織で仕事を進める上では、肩書が影響する場面が多々あります。自分と意見が合わない年下の管理職や上司の指示に従わなければならない場面が増え、それを苦痛と感じる人もいるでしょう。
 
そんな状況で仕事に対するモチベーションを保(たも)てるかは、その時にならないと分らないものです。年齢が上がるにつれて、組織の中での立場が上がらないことのデメリットも出てくることは十分に留意しておきましょう。
 

筆者の体験から

筆者は30年以上地方公務員として勤め、管理職になるか悩んだことがあります。最初は昇任試験を辞退しましたが、最終的には管理職となり、能力がある優秀な職員には試験を受けることを勧めていました。
 
筆者が管理職になったのは経済的な理由ではなく、職場の上下関係を割り切って長く仕事を続ける自信がなかったからです。管理職の仕事は想像どおりの厳しさでしたが、それ以外の職員の職務環境も年々厳しさが増していました。何が「気楽な働き方」なのか、人によって異なりますが、管理職にならなかったとしても、ずっと気楽に働けるかどうかは分からないということです。
 
最も大切なことは、いかに心身の健康を保って仕事を続けられるかということです。迷った際の判断の基準は「健康」だと考えておけば、迷いも少なくなるのではないでしょうか。
 

まとめ

公務員に限らず管理職になるかならないかは、経済的なメリットはもちろん、個人のライフスタイルに直結する「働き方」の選択でもあります。迷った際は、さまざまなメリット・デメリットを比較した上で、尊敬できる先輩など実際に体験した人に相談してみてはいかがでしょうか。
 

出典

大阪市 大阪市職員のモデル年収額(令和5年度見込)
愛知県 職員給与等の公表(令和5年4月1日現在)4 職員の手当の状況
福岡県 福岡県の職員給与・定員管理等について
 
執筆者:松尾知真
FP2級

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