「年収の壁」を意識してパートをしていますが、年収の壁を超えたらそんなに手取りが減るのでしょうか? お得に働けるパート主婦の年収を教えてください

配信日: 2024.10.11

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「年収の壁」を意識してパートをしていますが、年収の壁を超えたらそんなに手取りが減るのでしょうか? お得に働けるパート主婦の年収を教えてください
2024年10月から、「年収の壁」に関わる制度が一部変更となりました。今回は、年収の壁についておさらいし、制度変更の内容を確認しましょう。そして、パートで働いている方がお得に働ける年収はいくらなのか、考えてみましょう。
下中英恵

執筆者:下中英恵(したなかはなえ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。

富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”

「年収の壁」をおさらい

収入が多い夫の扶養家族となっている妻は、自分で健康保険料や年金保険料を納める必要がありません。しかし、妻がパートなどの短時間労働者として働いている場合、妻の年収が一定以上になると、夫の扶養から外れて、妻が自分で健康保険料や社会保険料を納める必要があります。
 
この扶養から外れる基準が、「年収の壁」と呼ばれているものです。社会保険料の場合、ポイントとなるのは「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
 

<年収の壁>

106万円の壁:

2024年9月までは、1.厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で、2.週の勤務時間が20時間以上、3.雇用期間は継続して2ヶ月を超えて働くことが見込まれ、4.賃金の月額が8万8000円以上(年収106万円以上)の方が、社会保険の加入対象となっています(学生を除く)。
 
厳密には異なりますが、目安として「厚生年金保険の被保険者数」は、企業の従業員数と考えると分かりやすいでしょう。自分の勤めている企業の正確な厚生年金保険の被保険者数が知りたい場合は、人事部に問い合わせを行いましょう。

 

130万円の壁:

企業の従業員数に関わらず、全ての労働者が社会保険に加入しなければならないのが、「年収130万円の壁」です。

 

2024年10月からの変更点

2024年10月からは「106万円の壁」について、社会保険料を納めるべき人の範囲が拡大しました。今までよりも、対象となる企業が増える予定です。具体的には、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。
 

<2024年10月から社会保料納付するべき人>

1. 1週間の所定労働時間が20時間以上
2. 雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれる
3. 賃金の月額が8万8000円以上
4. 学生ではない(夜間の学生などは対象)
5. 被保険者の総数が企業規模で常時51人以上の特定適用事業所に勤務(または任意特定適用事業所に勤務)

 
「規模が小さい企業に勤めているから安心」と思っていた方も、106万円の壁が適用されるケースがあります。勤めている企業の従業員数を確認しておきましょう。
 

お得に働ける年収とは?

パートで働いている妻は、年収の壁を少し超えただけでは、社会保険料の負担が増える分、手取り金額は減ってしまいます。
 
例えば106万円の壁を越えて年収108万円を稼いだ場合、手取り金額がいくらくらいになるのか、確認していきます。
 

<年収108万円の場合>

年収が106万円を超え、年金保険料や健康保険料を納めなければならない場合、手取り金額が大幅に減ります。
 
年間の年金保険料が約10万円、健康保険料が約5万円とすると、天引きされる年間の社会保険料は約15万円です。さらに住民税などを考慮すると、年収108万円の手取り金額は、約92万円となります。106万円以内で年収を調整した場合に比べ、14万円ほど手取りが低くなる可能性があります。
 
年収106万円の壁を超える場合は、少なくとも年収120万円を超えるように働かなければ、手取り金額は増えません。また、130万円の壁を超える場合は、最低でも年収150万円を目指さなければ、手取りが減ってしまいます。
 
年収120万円や150万円まで働ける場合は、年収の壁を越えて働くとよいでしょう。一方、家庭の事情で労働時間の制約があり、そこまで働けない方は、手取り金額を考えると、年収の壁を越えずに働いたほうが手取りの金額はお得になります。
 

まとめ

年収の壁を意識しながら働いているパートタイムの方は多いでしょう。今回紹介した内容を参考にしながら、まずは、2024年10月からの制度変更について理解することが大切です。そして、自分たちの家庭内で最もお得に働けるのは、年収いくらまでなのか、よく検討してみましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について
 
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

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