更新日: 2024.10.15 貯金

マイナンバーカードは預貯金口座とひも付けしなければならないのですか? 「預貯金口座管理法」が施行されたのを見て気になりました。

マイナンバーカードは預貯金口座とひも付けしなければならないのですか? 「預貯金口座管理法」が施行されたのを見て気になりました。
「預貯金口座管理法」が2024年4月1日から施行されましたが、「公金受取口座登録法」と混同される面もあり、その内容は正しく理解されていない点があるようです。この法律は、マイナンバーカードと預金口座の「登録や管理」を促進するためのものだと捉えている人も多いようですが、実際はどのようなものなのか、具体的に内容を見てみましょう。
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

「預貯金口座管理法」と「公金受取口座登録法」とは

マイナンバーカード(マイナカード)と預貯金の「登録や管理」は「ひも付け」と表現されることが一般的ですが、2018年から本人の同意に基づいて行われてきました。しかし、報道などでマイナカードの普及率が80%を超えたといわれる一方で、マイナカードと預金口座の「ひも付け」率は5%以下ともいわれています。
 
マイナカードと預貯金口座の「ひも付け」にはさまざまな意見もありますが、「預貯金口座管理法」の施行や「公金受取口座登録法」の改定施行を進めることによって、マイナカードを利用する国民の利便性と行政の効率化に役立つ点も多いと思われます。
 
この2つの法律は混同されている面もあるため、ここでは、それぞれの内容の確認も含めて見てみましょう。
 

預貯金口座管理制度でできること

預金口座管理法に基づいて実施されている預金口座管理制度は、以下のようなことが行われています。
 
1)預貯金者が、預金口座をマイナカードによって管理することを希望すると、預金口座とマイナカードが「ひも付け」されます。なお、これは強制ではないと明示されています。
 
2)預金者が希望すれば、預金保険機構を経由して、他の金融機関の口座についても「ひも付け」が行われます。自動的にひも付けが行われることはありません。
 
3)災害時などには、預金者のマイナンバーにより口座情報の提供を受けることができます。災害で通帳を紛失した場合などに、この情報により支払い(預金引き出し)を受けることが可能になるということです。
 
【図表1】

図表1

※デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」に基づき筆者が作成
 
4)相続の際には、相続人は、被相続人を名義人とする金融機関の口座に関する情報の提供を求めることができます。その結果、相続人は預金保険機構から登録している全ての口座情報の通知を受けることができます。
 
【図表2】

図表2

※デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」に基づき筆者が作成

●預金者は、マイナンバーを登録することを金融機関に勧められることはありますが、登録義務はありません。
●取引をしている銀行のうち1行について「ひも付け」を承認しても、他行分は任意であり、自動的に「ひも付け」されることはありません。

 

公金受取口座登録制度でできること

預貯金口座管理制度と共にマイナカードに関連して、公金受取口座登録制度が改定されています。2つの制度は、マイナカードを利用する点は同じですが、別の制度です。
 
1)本人名義の預貯金口座を、マイナンバーと共に給付金等の受取口座として登録することにより、給付金等の申請時に都度の手続きが不要になります。
 
2)一人一口座に限られています。
 
3)公金受取口座の登録には4つの方法があります。
 
(1)マイナポータルからの登録
既にマイナポータルをPCまたはスマホで利用している場合は、そちらから登録できます。マイナポータル未利用の場合は、マイナポータルアプリをパソコンまたはスマホにインストールすることが必要です。
 
(2)所得税の確定申告の際の登録
所得税の確定申告(還付申告)に際して、公金受取口座の登録の手順が案内されています。なお、この(1)(2)は先行して既に始まっています。
 
(3)日本年金機構からの通知により登録
 
【図表3】

図表3

※デジタル庁「よくある質問:公金受取口座登録の『特例制度』について(対象:年金受取口座)」に基づき筆者が作成
 
日本年金機構からの通知(上記)は、未登録の年金受給者に書留郵便を送付して、年金受取口座の自動登録を通知することになっています。同意する場合は特に手続き不要ですが、同意しない場合は、45日以内に同封の返信用はがきで回答することになっています。デジタル庁は不同意以外を登録することになります。
 
(4)口座のある金融機関の窓口からも登録できますが、こちらは2024年度末に始まるとされています。
 

まとめ

この2つの制度は、マイナカードの利用による利便性と行政の効率化を目指すものです。ただ、マイナカードの登録の人的なミスによる問題発生等もあり、マイナカードの利用は計画通りには運んでいないようです。
 
しかし、諸外国と比較して、日本はデジタル化や行政の効率化の遅れが指摘されています。内容をよく理解しながらも進めていくことが大事なのではないでしょうか。
 

出典

デジタル庁 e-Gov 法令検索 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律
デジタル庁 e-Gov 法令検索 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律
デジタル庁 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要
デジタル庁 よくある質問:公金受取口座登録の「特例制度」について(対象:年金受取口座)
 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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