10月からパート先で「社会保険」に加入。保険料「1万5000円」も引かれて抜けたいのですが、収入を維持しつつ“資格喪失”する方法はないのでしょうか?
配信日: 2024.11.15
本記事では、収入や手取り額、働き方などについて説明します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
社会保険に入ると
これまで家族の扶養に入っていた人が社会保険に加入すると、給与から社会保険料を差し引かれるようになります。社会保険料は給与の約15%。少々手痛いマイナスではないでしょうか。
手取りはいくら減る?
協会けんぽ加入の東京都の会社でパート勤務のケースで、シミュレーションしてみましょう。
時給1200円の人が月88時間働くと、1ヶ月の給与は10万5600円です(通勤手当をゼロとします)。今までは雇用保険料634円と所得税930円が差し引かれ、手取り額は10万4036円でした。
しかし、社会保険に加入すると、さらに健康保険料(介護保険料を含む)6022円と厚生年金保険料9516円が差し引かれます。社会保険料が増えた結果、所得税は180円と安くなりますが、手取り額は8万9248円になり、社会保険に加入していなかった頃より1万4788円減少してしまいます。
社会保険に入らない働き方
では、社会保険に加入しない働き方はあるのでしょうか?
社会保険は、加入要件に該当するかどうかで適用の有無が決まります。そのため要件に該当しない働き方をすれば、社会保険に入らず就労することも可能です。
加入要件はいくつかありますが、従業員数51人以上の会社で働いている場合、週の所定労働時間が20時間未満であれば社会保険への加入はありません。ただし、所定労働時間を勝手に変更することはできないため、会社と話し合う必要があります。
収入を減らさない働き方は
しかし、労働時間を短くすると収入自体が減ってしまいます。収入を維持しながら社会保険に入らない働き方はないのでしょうか?
収入は維持できる
会社の社会保険に加入しない状態で、かつ収入を維持するには、次のような方法が考えられます。
・ほかの会社でも、ごく短時間のパート勤務をする
・別途、業務委託の仕事を受託する
現在のパート先以外の働き口を増やすことで、収入自体を維持することはできるでしょう。
最終的な手取り額が減ることがある
ただし、パート先の時給が上がったり業務委託の仕事が増えたりすると、年間の合計収入が130万円以上となり、扶養の範囲を超えてしまうことがあります。
扶養から外れると、自分で国民健康保険料や国民年金保険料を支払わなければなりません。会社の社会保険料は労使折半ですが、こうした保険料は全額自己負担となるためおおむね高く、国民年金保険料だけで1ヶ月1万6980円かかります。
そうなると、収入は維持できても、最終的な手取り額は減少してしまい「結局は1つの会社で社会保険に入っていたほうが得」という結果になることも、少なくないでしょう。
まとめ
社会保険は、会社や本人の意思にかかわらず、要件に該当すれば加入義務が発生します。要件に該当しない働き方をすれば社会保険には加入しません。しかし、そのために所定労働時間を減らせば、収入が減少するだけでなく、責任ある仕事を任せてもらいにくくなるかもしれません。
収入を維持するには社外での仕事を増やす方法がありますが、時給や仕事量によっては扶養の範囲を逸脱することがあります。そうなると国民健康保険料や国民年金保険料を自分で支払うことになるため、最終的な手取りが減少するケースが少なくないでしょう。
社会保険料は決して安いものではありませんが、将来、老齢厚生年金を受給できるだけでなく、出産手当金や傷病手当金といった在職中の保障もあるため、安心して働くことができます。
現在の手取り額だけで考えず、こうした保障もあることを含め、トータルで考えてみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について
国税庁 給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士