年収が130万円を超えそう…… でも、年末は繁忙期で休めない。130万円を超えたらすぐ社会保険に加入しなくてはいけませんか?
配信日: 2024.12.14
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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従来は、年収130万円を超える状態が「一定期間」継続する場合は加入が必要
これまでは「一定期間」年収130万円を超える状態が継続すれば、社会保険に加入する必要がある、とされてきました。
ただ、この「一定期間」について具体的に明確な定義がありませんでした。したがって、地域や企業、団体が所属している保険制度などによって異なるので、
1. 勤務先の人事部門に相談して、会社の規定について確認する
2. 社会保険事務所に相談して正確な情報を確認する
といったステップを踏むことになっていました。
2024年10月から「短時間労働者(1週間の労働時間がフルタイム労働者の4分の3未満)に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」が実施され、厚生年金保険の被保険者の数が51人以上の企業等で働く場合、以下の条件にすべて該当すれば、健康保険と厚生年金保険の加入対象となります。
●週の所定労働時間が20時間以上
●所定内賃金が月額8万8000円以上
●2ヶ月を超える雇用の見込みがある
●学生ではない
また、1週間の労働時間がその勤務先のフルタイム労働者の4分の3以上である場合は、被保険者扱いとなります。
「それでは、ますます負担増になっていいことない!?」社会保険加入のメリットを確認
それでは、2024年10月からの適用拡大にともなってフルタイム社員(フルタイム社員の4分の3以上働いている)はもちろんのこと、短時間労働者(フルタイム社員の4分の3未満)でも先に述べた要件に当てはまれば、「被保険者になる」ということは、保険料を納付しなければならなくなります。
「被保険者になっていいことはあるの!?」と、思ってしまう人もいるでしょう。被保険者になるということは、賃金から保険料が引かれることになり、手取り額は少なくなってしまいます。
ここで、今回の適用拡大によって、被保険者になる(社会保険に入る)ことによるメリットを確認しましょう。
1.これまでの基礎年金だけ将来の年金給付が、基礎年金プラス厚生年金になります。
2.健康保険に加入することになると、休業している間の保障が手厚くなります。
3.業務外の病気やけがで会社を休んだ場合、休んだ期間のうち最初の3日を除き4日目から最大1年6ヶ月、給与の3分の2の金額を受け取ることが可能です。
4.出産のため会社を休んだ場合、産前42日から産後56日までの期間において、給与の3分の2の金額を受け取ることが可能です。
5.このような給付につながる保険料は、従業員だけが負担するのではなく、会社との折半なので、私たちは半分の負担ということです。
手続き
手続きについては事業所単位(本社、支社、支店または工場など)で行い、被保険者となるための手続きも会社が行います。
まとめ
これまでは、年収130万円を超えたら社会保険に加入する必要があるといわれていました。その基準は企業や保険制度ごとに違っていたため、個別に確認が必要でしたが、2024年10月以降は社会保険加入の基準が明確になりました。
そして、適用対象となる人の範囲が拡大されることになり、「社会保険に加入することを避ける」ために、意図的に勤務時間を調整する余地がなくなりました。
社会保険に入るということは、保険料を引かれるというデメリットが目立ちがちですが、保険料負担は労使折半であること(費用負担は私たち従業員と会社が半分ずつ負担する)、病気になって働けなくなったときに受け取れる給付金や、将来の年金のプラスアルファになることなどメリットにも注目しましょう。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま
日本年金機構 パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ
日本年金機構 Q 会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者