学生時代に「猶予されていた年金保険料」と「奨学金の返済」の両方の請求が来ました。どちらを優先して支払うべきなのでしょうか?

配信日: 2025.02.08

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学生時代に「猶予されていた年金保険料」と「奨学金の返済」の両方の請求が来ました。どちらを優先して支払うべきなのでしょうか?
学生時代に、「国民年金保険料の学生納付特例制度」と「奨学金(貸与型)」を利用された方もいらっしゃることでしょう。これらの制度は、本人が社会人になると「追納」や「返済」を求められるようになります。
 
これらの請求が同時に来た場合、どちらも支払うことができれば問題はありません。しかし、どちらかしか支払えない場合、どちらを優先して支払うべきかを悩むかもしれません。
 
そこで本記事では「そもそも『猶予されていた年金保険料』『奨学金の返済』とは何か?」「『猶予されていた年金保険料』と『奨学金の返済』ではどちらを優先して支払うべきなのか?」について解説します。
 
学生納付特例制度や奨学金を利用しようとお考えの方の参考にもなると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

そもそも「猶予されていた年金保険料」「奨学金の返済」とは何か?

「猶予されていた年金保険料」とは、「学生納付特例制度」を利用して猶予されていた国民年金の保険料のことと考えられます。日本国内に住む全ての方は、20歳になると国民年金の被保険者となるため、保険料を納付しなければなりません。
 
しかし、学生の場合、保険料の納付が困難であることもあるため、申請により在学中は保険料の納付を猶予してもらうことが可能です。この制度のことを学生納付特例制度といいます。
 
注意しなければいけないこととしては、学生納付特例制度は保険料の納付が「猶予」される制度であるということです。保険料の納付が「免除」される制度ではないため、将来的に保険料を納付(追納)しないと、受け取れる年金額に影響することになります。
 
一方の「奨学金の返済」とは、学生時代に借りた奨学金の返済のことと考えられます。日本学生支援機構の奨学金の場合、給付型の奨学金と貸与型の奨学金があります。給付型の奨学金は返還する必要がありませんが、貸与型の奨学金は学校を卒業したら返還する必要があります。
 

「猶予されていた年金保険料」と「奨学金の返済」ではどちらを優先して支払うべきなのか?

学生納付特例によって猶予されていた国民年金の保険料は、10年以内であればさかのぼって保険料を納付(追納)することができます。将来受け取れる年金額を増やすためにも、追納することが望ましいでしょう。
 
ただし、追納するのであれば、学生納付特例を受けたときから3年以内に行ったほうがよいでしょう。3年度目以降に保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額(追納加算額)が上乗せされ、納付する保険料が多くなってしまうからです。
 
日本学生支援機構の奨学金の場合、奨学金の返還が始まる時期は貸与終了の翌月から数えて7ヶ月目の月からです。2025年3月に貸与が終了する方の場合、最初の返還は2025年10月となります。
 
「猶予されていた年金保険料の追納」と「奨学金の返済」はどちらも大事ですので、「どちらを優先すべきか?」という問いに対して、一概に回答できるものではないでしょう。
 
しかし、あえてどちらかを選ぶのであれば、基本的には奨学金の返済を優先すべきかと思われます。「借りたお金は返さないといけない」、というのがその理由です。
 
追納をしなかった場合の不利益は自分が被り、返済をしなかった場合の不利益は他人が被ると考えると、両者をてんびんにかけた場合、優先すべきは「返済」のほうではないかと思われます。
 
また、奨学金の返済を怠ると、信用情報機関に記録され、住宅ローンや自動車ローンの審査が通らなくなることがあります。延滞が続くと、財産の差し押さえにまで発展するリスクもあるため、返済が困難な場合は、奨学金の返還期限猶予制度や減額返還制度を利用できないか検討してみましょう。
 

まとめ

本記事では「そもそも『猶予されていた年金保険料』『奨学金の返済』とは何か?」「『猶予されていた年金保険料』と『奨学金の返済』ではどちらを優先して支払うべきなのか?」について解説しました。結論としては、以下の通りです。


・「猶予されていた年金保険料」とは学生納付特例制度により猶予されていた国民年金の保険料のこと
・「奨学金の返済」とは借りていた奨学金の返済のこと
・優先して支払うべきは、基本的には「奨学金の返済」

奨学金の返済は、口座振替により毎月行われます。一方、国民年金の保険料の追納は、10年以内であればさかのぼって行うことができます。時間的猶予や他人への影響も考慮し、奨学金の返済を優先して行ったほうがよいかと思われます。
 
もちろん、できれば保険料の追納も行っていただきたいものです。追納をするかしないかで、将来受け取れる年金額が変わります。
 
本記事では、「どちらを優先すべきか?」という話をしたため「追納をしなくてもよいのではないか?」と誤解された方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
 
追納をすることで将来受け取れる年金額は増えるため、追納はしたほうがよいといえます。この点を誤解されないよう、ご留意ください。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本学生支援機構 奨学金の返還について
日本学生支援機構 2024年度返還のてびき【ダイジェスト版】
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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