会社員で「スポットワーク」の単発バイトをしたい! でも働き過ぎると「確定申告」や「社会保険料」で苦労することに!? 労働時間も含めた“注意点”を解説
配信日: 2025.02.16 更新日: 2025.02.17

ただし、スポットワークによる副業収入などが一定限度を超えると、確定申告や社会保険料の負担が生じることがあります。また労働時間管理の問題も生じます。
本記事では、税金や社会保険の負担が生じない働き方の要件、労働時間管理の問題など、無理なくスポットワークに取り組むための注意点を紹介します。

執筆者:玉上信明(たまがみ のぶあき)
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
スポットワークとは
スポットワークについて、一般社団法人スポットワーク協会(以下、スポットワーク協会)では「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」と定義しています。
スポットワークでは、スマートフォンで利用できるアプリを使ってワーカーと雇用主をマッチングすることが多く、企業や店舗は人手がほしい時間帯にピンポイントで求人を出し、ワーカーは自分の空き時間にできる仕事をアプリ上で選び、雇用契約を結びます。数時間単位で働く1回限りのアルバイトのようなイメージです。
なお、副業として、業務委託契約で働いている人もいるかと思います。業務委託契約は、注文者に成果物や役務を提供して報酬を得る点や、業務の進め方が受託者に任されている点などが、スポットワークとは異なります。
スポットワークの利用者と主な職種
スポットワーク協会の調査では、24年5月末時点の国内のスポットワーク登録者数は約2200万人になります。
スポットワーク利用者は、業界大手タイミーの調査では「正社員」54.0% 、「パート・アルバイト」11.8%であり、「スポットワークのみで生計を立てている」という人は0.6%にとどまります。
本業を持ち、さらに副収入を得たい人がスポットワークを活用しているようです。本業の休日に稼ぎたい、本業が終わった後の平日の空き時間を活用したい、といったニーズにふさわしい働き方と言えるでしょう。
スポットワークの主な職種は以下のようなものです。特定の時期・時間に業務が繁忙になり、スポットでの労働力投入が必要な職種が多い傾向にあります。
●イベントスタッフ
●飲食店、アミューズメント施設、コンビニなどでの接客業
●フードデリバリー
●倉庫などでの軽作業
●コールセンターなどのオフィスワーク
●レンタル充電器の移送(余っているスポットから不足しているスポットへ移動させる)
労働条件はきちんと確認すること
手軽であっても、スポットワークは雇用契約(労働契約)です。労働基準法や最低賃金法等など労働法制が全て適用されます。
労働契約の締結の際に、企業は労働条件の明示が義務付けられています。多くのスポットワークサービス事業者では、利用企業を代行して労働条件通知書を交付し、ワーカーが確認できる機能が提供されています。
ワーカーとしては少なくとも契約期間、就業の時間、場所、業務内容、賃金の決定方法、支払い時期などの項目は確認しておきましょう。
スポットワークで働く際の注意点
前述した通り、スポットワーカーは雇用契約にもとづく労働者です。税金や社会保険等は一般の雇用労働者と変わりません。ただし、働く時間も短く賃金が比較的少額ということから、注意点があります。
正社員など本業を持ち副業としてスポットワークで働く人を前提に、注意点を整理しました。
税金の取り扱い(確定申告の要否)
スポットワークは、雇用契約であり賃金は給与所得です。納税はスポットワーク先の会社の源泉徴収で完結するでしょう。ただし、副業のスポットワークの年間所得が20万円超であれば確定申告が必要になります。
社会保険(健康保険・年金保険)の取り扱い
本業の勤務先で、健康保険・厚生年金保険に加入していることが前提ですが、副業のスポットワークが週20時間以上、かつ月給8万8000円以上でなければ、副業先での健康保険・厚生年金保険の加入は不要です。
労働保険(労災保険・雇用保険)の取り扱い
スポットワーカーは雇用されている労働者であり、労災保険は短時間勤務であっても必ず適用されます。
業務中にけが、病気等を負った際、通勤時にけが等を負った際には労災保険が適用されます。健康保険と異なり医療費は全額補償され、働けないときの休業補償なども充実しています。事故があれば、すぐ雇用主に報告して労災の請求をしてもらいましょう。
なお、雇用主が労災保険の手続きをしないなら、ワーカー自身で請求可能です。労働基準監督署に相談しましょう。
一方、雇用保険の適用要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる(短期契約を繰り返す場合を含む)場合です。スポットワークではまず該当しないでしょう。
本業・副業を含めた労働時間の管理が必要
本業のかたわらスポットワークを行うなら、長時間労働にならないように注意してください。
企業は、過重労働防止のため、本業・副業含め法定外労働時間と休日労働あわせて単月100時間未満、複数月平均80時間以下などの制限が定められています。割増賃金等の取り扱いも、本業・副業の事業者で調整が必要です。
スポットワークが短時間であっても、本業と含めて過重労働にならないようワーカーも注意すべきと言えます。
まとめ
スポットワークは便利な働き方ですが、便利さゆえに闇バイトに悪用されたり、ワーカーの中には、当日のドタキャンなどで雇用先の企業に迷惑をかけたりする人もいます。スポットワークに取り組むのであれば、労働条件をしっかり確認し、引き受けた以上は、責任を持って業務に取り組みましょう。
出典
財務省 スポットワーク市場の動向と展望について
国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー